「天使の声を、きいたことがあるの」
「天使の声を、きいたことがあるの」
クリステンは言った。
「私は確かにきいたの 間違いなくね」
僕は目の前にいる14歳の少女クリステンの話をじっときいている。
「きいたのは5歳か6歳の時よ」
「最初は天使だとはわからなかったわ」
なるほどね。それはそうかもしれない。
「えっと、確か『もうすぐ男の子の兄弟が生まれますよ』って言ったの」
「そして本当に数日後にルイスが生まれたのよ」
クリステンが身振り手振りをつけて話すので金色の髪がゆれている。
「そうだぁ!ルイスはどこ?」
「実はルイスへプレゼントを用意しているのよ」
「このことはルイスには内緒ね?」
ああわかった。内緒にしておくよ・・・。
「悪魔の声を、きいたことがあるんだ」
ルイスが僕に言った。
「きいたのは最近のことなんだけど」
「もしかして信じてもらえないかもしれないし…」
信じるよ。話してごらん。
「えっとね、『もうすぐ女の子の兄弟に殺されるでしょう』って言ったんだ」
「女の子の兄弟ってクリステンのことだよね?」
深い緑色の目はとても怯えている。可哀想に。
「ねえ?クリステンはどこ?」
「僕ほんとに殺されちゃうのかな」
「ここに僕が居ることは内緒にしてね?」
ああわかった。内緒にしておくよ・・・。