表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/16

5

その音に驚いてドアに思わず目をやる。

いかにも、というような品の良い制服に身を包み、肩下の黒髪は涼やかに風になびく。


彼女を見た全ての人が一瞬で目を奪われる、きっとそうだ。

しかし僕のそんな思いは次の一言で、もろくも打ち破られた。

「あら、ずいぶんと久しぶりね。あなたがのろのろしているから、わざわざ私のほうから出向いてあげたわ」

薄い目をし、得意満面で僕に話しかける。


そして、僕の顔を至近距離でのぞきこむ。まるでキスしてしまいそうな距離だ。

「うわっ、なんなんだよ一体」

僕は飛ぶように後ろに下がった。

「もう少し格好よく成長していると思ったけど、まぁいいわ」

そんな彼女に老紳士が、なかば呆れたように言う。

「お嬢様、またそんなことを……。昨日は森口さまに久しぶりに会うのだからと張り切って、いつもより念入りに髪を乾かし、爪を磨いていたのはどこのどなたでしょう?それに……」

「吉川!」彼女の顔はみるみる赤くなる。

「それに?」僕が聞き返すと、あわてふためく彼女を尻目に老紳士は続けた。

「はい、それに森口さまのことはあの日以来、ずっと写真でお顔を拝見なさっていたのに『格好よくない』などと……」


(そこまで言ってないんじゃ)とまぁ、少し引っかかる部分はあったが、僕はこの初対面でずいぶんと失礼な二人組のやりとりを、頭を整理しながら、そしてただ呆然と眺めているしかなかった。

「それは内緒だっていったでしょう」

そう彼女が言ったその時(ワン!)扉の奥から一匹の犬が僕に飛び付いてきた。


「メイ!」彼女が言う。

丁寧に手入れされた毛並みが光る。メイと呼ばれたその犬は僕の顔をなめ、彼女のもとへと行く。

犬の頭を彼女が撫でたとき、点が線でつながる感覚がはしった。

「もしかして、あの時の!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気に入った方は『評価』『感想』『お気に入り』を頂けると励みになります。




小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ