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私には性別がありませんでした  作者: 六条菜々子
第1章 変わっていく俺
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第9話 妹との関係

 俺には高校2年の妹がいる。つまり同い年なのだ。しかも、俺とクラスも同じ。そして、帰り道も家に帰っても同じ。俺と七海は結局、いつも一緒にいる。たまに、無理矢理一緒にいるのかな?とも疑ったこともあったが、七海いわく、無理をしてまでは一緒にはいないらしい。しかし、本当に偶然なのだろうか。最近、そう思うようにもなってきた。でも、だとしたら何で一緒に居たがるのだろう。


 今日は月曜日。誰でも週の初めというのは、苦痛である。たとえ、学校に行くのが楽しかったとしてもだ。そういうものなのだと俺は思う。

「じゃあ行ってくるねー」

 七海が母の方を向いて元気に手を振る。母もそれにつられて笑っている。母と七海は近所でも有名なくらい仲が良い。なんて理想的な親子関係なんだ、と何回思ったことか。そもそも、仲が良すぎて怖いくらいなのだ。

「お兄ちゃん遅いよ」

「いつものことだろ?」

 そう。俺が遅いことなんて日常茶飯事なのだ。なおした方がいいとは思うのだが。

「そうだね」

 一般的な兄妹の会話というのはどういうものなのだろう。俺たちは毎日こんな感じだ。普通だと、あまり話さないらしい。確かに、少し前まではあまりしゃべらなかったのかもしれない。でも、今ではこれも普通のことだ。当たり前のことが当たり前に出来ることに俺は少しうれしくなった。

「そういえば、今は”お姉ちゃん”だったね。ごめんごめん。忘れてたよ」

「そうだった。俺もすっかり忘れてた。なんだか、お互い様だな」

 俺も七海もさすがに呼び方までは変えることが難しいのか、二人ともすっかり忘れてしまっていた。しかし、人間慣れるまでが肝心。昔の人はいい言葉を作ったものだ。学校でばれないようにしっかりと意識しないとな。もしばれてしまったら大変だからな。


「おはよう中津さん」

「おはよう清水君」

 親友の武弥に対して上の名前を使うのも、君付けするのも、とても気持ちが悪いが、いきなり下の名前で呼ぶのも、男子と女子という関係では普通ありえない。ましてや、俺は転校してきたばかりの設定なのだ。だから仕方がない。少し窮屈な感じもするが。

「沙希ちゃんおはよう」

「おっは、紗那」

 女子同士の朝というのは響きだけでいいものだが、まさか、それを自分自身が体験することになるとは。しかし、このやり取りにも、やがては慣れてしまうのだろうと思うと怖いような気もする。

「体治ったの?」

「うん。一応ね」

 そうか。一応、今日は『女子』になってから初めて学校に来たな。学校に来るのは1か月ぶりなのか。

「あんたの胸、なんか大きくなってない?」

 俺は思わず吹き出しそうになった。やっぱりそうだよな、気づいてしまうよなあ。女性ホルモン投与を続けていての一番の変化はやはり胸囲だった。予想通りと言えば、予想通りなのだが、胸のあたりが以前より一回りほど大きくなった。男子にとってはなんだそんだけか。と思うかもしれないが、女子にとっては一大事もいいところだ。俺がその中に入るのかはよくわからないけど。

「私と会わない間に大きくなっちゃってさー。いいなー」

「そんなことないよー」

 紗那の目線が怖い。うう。こうなることはわかっていたのだけれど。

「そういえば七海ちゃんってさ、沙希の妹なの?」

 疑問がわくのは仕方ない。同じ苗字。同じ方向に帰っていく。これはもう兄妹だと普通は気付くだろう。

「そうだよ。姉妹だよ」

 そう。今では兄妹ではなく、姉妹なのだ。実感がないというのはこういうことを言うのだろう。

「やっぱりねー。七海ちゃん可愛いよね。でも、妹なんだ。お姉さんかなって思ってた」

「そうかな?」

 そんなこと、今まで考えたことがなかった…と言いたいところだが、実際はある。だって、そう見える理由は背の高さも関係しているのかも。俺は『女体化』現象によって、身長が七海より低くなってしまった。別に低くなるのはいいのだが、七海の方が姉に見えるというのは少々困る。

「仲良いの?七海ちゃんとは」

「いいんじゃないかな?ほかの姉妹をあんまり見たことないから、わかんないかな」

 紗那ちゃんはうーんと考えてるようなふりをして、こっちを見てこう言ったのである。

「ねえ?今日の放課後、沙希の家行ってもいいかな?」

 その一言により、俺は女子になってから初めて友達を家にあげることになった。どうなるのか、楽しみだなあ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 別人として転校したのに妹だって言っちゃったら同一人物だとバレると思うんだけど。 学校で本人同士が会話してなくても苗字一緒だし、男だった時に兄妹だってことをクラスメイトが認識してなかった…
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