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私には性別がありませんでした  作者: 六条菜々子
第3章 きっかけ
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第36話 校長先生と俺

「あれは確か私が高校三年生、つまり沙希と一緒の歳の話だ。私は三年生になったから部活を引退していた。だから自由な時間が増えた。しかし私は大学受験のための勉強をしないといけなかったんだ」

 大学受験かぁ。俺も勉強しないとな。あと1年もないし。

「でも私は学力は低かった。とても大学なんて目指すようなもんじゃなかった。ちなみにその時の学年トップが君のお母さんだ」

 学年トップ!?あの人が!?全然知らなかった。というより母の高校時代の話なんて聞いたことはもちろんない。

 前よりは母とは話すようにはなったが、昔の話をしたことがない。今度機会があれば話したいな。

「私は大学受験対策の勉強をするために、放課後に残ることにしたんだ。それから何日か続けてると君のお母さんが残ってたんだ。びっくりしたよ。同じクラスではあったけど、ちゃんと意識して見たことはなかったんだ」

 母から勉強のことは一切口を挟まないけど、努力家だったんだなあ。全然知らなかったよ。

「目が合ったんだ。二人とも話したことはないし、多分私の名前すら知らなかったんじゃないかな? 私はチャンスだ! って思ったんだ。あ、勉強を教えてもらえるチャンスってことだぞ。だから私は言ったんだ『勉強教えてもらえないかな?』ってな。断られるかドキドキしたが、どこ教えてほしいの? って返してくれたよ。嬉しかったよ」

 校長先生によると、その日から母と放課後に勉強会をするのが習慣になっていったとのこと。

 ん?二人でしてたのか?結構仲良かったのかな?

「そのおかげで私の成績はどんどん良くなっていったよ。目に見えて分かるくらいに。その次の定期テストでは1位を争うことにして二人で猛勉強したよ。それまでの私は本当の勉強はしたことがなかった。要するにとにかく時間をかければいい、としか思ってなかったんだよ。でも予習・復習の大切さ、詰まったらとりあえず、あたしに聞きなさいといつも俺に言っていた。聞きなさいって言われたのは嬉しかった。何よりも心強かった」

 その後、校長先生は半ば冗談半分で『次のテストで俺の方が成績よかったら、俺の彼女になれよ』と冗談で言ったら、母は何のためらいもなく『うん。いいよ、あたしに勝ったらだけどね』と二言目で認めてしまった。そして、テストで校長先生が勝ってしまった。二人はその日のうちに付き合うことになった。

「まさか、私みたいなバカが学年一位だった女子と付き合うことになるなんて想像してもなかったよ」


 その後、お母さんが目指していた大学に校長先生も目指す事になり、二人は無事に大学に合格。四年間が経ち、二人はそのまま結婚。


「まさか結婚まで行くとは思わなかったよ」

 校長先生はそう言ったが、ずっと話を聞いていると俺にはどう考えても、二人が離れる要素は全くと言っていいほど無かった。しかし、あれ? 結婚したのか。校長先生と母。という事はまさか…。

「ずっと隠していてすまなかった。実は私は君の父親だ。いや、父親だったと言った方が良いのだろうか」

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