第33話 お下がりの服~追憶~
あることがきっかけで女装を始めた俺だが、正直心地いい。
まあ、その反面女装している自分を気持ち悪いとも感じているのだが。
どうみても男子が無理をしているみたいにしか見えないんだよな。
何て言うか『頑張って女装してます』みたいな。
羽衣はどう思ってるんだろう。
こんな俺を…。
「ねえ、私のお下がりで良ければ服あげようか?」
それは願ってもないことだった。
いつも俺は女装をするときの服装は特に着替えることがなかった。
つまり、いわゆる女子っぽい服がなかったのだ。
じゃあ女子っぽい服ってなんなんだって言われたら困るんだが。
羽衣のお下がりなら七海にあげなくてもいいのか?と思ったが、七海は特に必要ではないらしい。
それならば遠慮することはないだろう。
すごくうれしかった。
俺は急いで家に戻り、前に羽衣にもらったウィッグを持ってまた戻ってきた。
いつもなら鞄とかに入れて隠しながら持って行くのだが、服のことしか頭になかったのでそんなことは忘れていた。
「ちゃんと手入れしてたんでしょうね?もちろんのことだけど」
手入れというのはウィッグを洗うことである。
人の髪と同じようにウィッグも洗わないと、ぼさぼさになり、最終的には固まってしまうらしい。
毎日は洗わなくてもいいが、1週間に一度が目安とのこと。
その決まりを俺はきちんと守った。
せっかく羽衣に譲ってもらったものなんだから、大切にしたい。
「ちゃんと洗ったぞ?」
「秋路えらいね。さすが私が見込んだだけのことはあるね!」
何故か羽衣が自信満々に言い放った。
俺がきちんとしていたことがそんなにうれしかったのだろうか。
「秋路に似合うのはこれかな」
羽衣が部屋の奥からワンピースを引っ張り出してきた。
上が青、下が白で作られていた。
とてもかわいかったが、俺には到底似合いそうもなかった。
「え?これはさすがに着るのに抵抗ある?別に無理はしなくてもいいよ」
「いや、無理なんかしてない。ただ、俺に似合うのかなって」
「秋路なら大丈夫だよ。じゃあ立って!私も着替えるの手伝ってあげる」
手伝うだって!?
俺は必死に断ったが、『秋路はワンピースなんて着たことないだろうし、ついでに着方も教えてあげようかなって』
との理由を付けて、結局最後まで着替えを手伝ってくれた。
「ありがとう、羽衣」
「どういたしまして~。どう?着た感じ。どっか気持ち悪いとこない?」
「うん。別にないな。どうかな?似合ってる?」
ワンピースも結構下の方に風通るんだな。
なんか恥ずかしいな。
「秋路さー、何でそんなにスタイルいいの?ほんとうらやましいんだけど」
「そんなこと言われても、特に何もしてないんだけどな」
羽衣によると、足が長いのがとてもポイントが高いらしい。
今まで気にしたことなかったなあ。
その後、せっかくだから二人で写真を撮らない?との羽衣の提案で、急遽撮ることになった。
撮れた写真を見てみると、そこに映っているのは女装した男の子と女の子だった。