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私には性別がありませんでした  作者: 六条菜々子
第3章 きっかけ
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第30話 慣れと決心

「あたし、もう三年生になっちゃうの!?」

「今さらを言っているのよ。そうだよ、今日から紗那は三年生ですよ?」

 この雰囲気からわかる通り、今日は始業式だ。授業がないため、みんなふわふわした雰囲気となっている。そして、俺はついにこの学校での最上級生になってしまった。まさか、女子高生として進級することになるとは思わなかった。単純に嬉しいという気持ちもあるが、同時に不安でもある。二つの気持ちが入り混じって、何だか不思議な感じだ。三年生はもちろん勉強も大切だが、女子高生にはそれ以上に大事なものもあるそうです…。

「ねえ!彼氏作ってないよ!沙希!」

 すごく必死な目で紗那が俺に『私には彼氏いないよ』アピールをしてくる。いや、少し前まで男子だった俺に言われてもね…。その気持ちは分からなくはないけれど、多分はっきりとはしていない。そもそも、今まで彼氏以前に男子高校生だった時も彼女なんて作ってこなかったのだ。人生経験が浅い俺が、紗那にアドバイスできることなんて一つもない。

「何で私に言うのよ。だいたい、そんなことしている暇があるなら少し勉強でもすれば?」

「何よ、あんた。むかつくなぁ」

 この人は大の勉強嫌い。特に数学と理科。要するに計算が大の苦手ちゃんだ。ただ、苦手なだけでなく、その原因は単純な勉強不足と最近判明した。要するに演習が足りないのである。例えるなら、練習を一つもしていないサラリーマンがいきなりマラソンを走りだすようなものだ。こんな調子で大丈夫なのだろうか? 少し心配である。

 もし俺が紗那の立場だったら、同じことはできないだろう。俺には積極的に行動する能力がないからだ。自分からは行動することがないのだ。いや、出来ないのだ。

「でも、三年生になったから数学の授業ないでしょ?」

「何を言っているのよ。数学補充にあなたでないといけないって先生に言われていたでしょ」

「え。何なのそれ、初耳なのだけれど」

 初耳ねぇ。まあ、困るのは紗那だけだけどね。赤点ギリギリの成績しか取れないようにしているのは紗那だから。あれ? そういえば、由果はどこ行ったのだろう。今日はまだ姿を見ていない。


『では、ただ今より2015年度、始業式を始めます』

 高校三年生。自分がなるのは、まだまだ先だと思っていた。早かったような遅かったような。そんな感覚だ。

 よく考えてみれば、毎回そうだ。中学に上がるときは早いと思ったし、高校に入るときはやっとかって思った。まあ、そのあたりは人それぞれだと思うけど。とにかく、もう三年生。今後悔しても三年生。そして、俺が女子高生になって約3か月が経った。自分では慣れた気でいるけど、実際のところはどうなのだろう。とりあえず、見た目は女子って感じにするように頑張っているつもりだけど、細かい仕草とかがどうしても真似できないところがある。そんなことは考えず、無意識に16年間過ごしてきた俺にとってはやっぱり難しいところがあるのは確かだ。さすがに、この部分は本物の女子には勝てない…。でも、人間努力すれば何でもできるはず。俺はそう信じている。

「毎日ちょっとずつでもいいから、頑張ろうかな」

「何をがんばるの?沙希ちゃん」

え!?今の言葉を聞かれていたの!?いないと思っていたのに、今までどこ行っていたのよ。

「別に何でもいいでしょ。そんなに面白いことでもないよ」

「え、気になるよ!」

 まさか、聞かれていたとは思わなかったよ。俺の独り言って案外、声が大きいのかもしれない。でも、何事も成せば為る。その言葉を信じて、俺はこれからも生活していこうと思う。だから、これからも普通(?)の女子高生として頑張っていこうかな。もちろん、俺の場合は普通とは言い難いけれど。

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