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私には性別がありませんでした  作者: 六条菜々子
第1章 変わっていく俺
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第21話 秘密基地の約束~追憶~

 やっと放課後だ。といっても今日は入学式だったから、午前で終わったのだけれど。まあ、今まで会ったことのない、新しい人とかかわろうとするのは疲れるものだ。だから、今日は学校が早く終わったし、せっかくだから三人でどこか遊びに出掛けようという話になった。だから、行きたいところがないか考えてみたけど、特に行きたいと思うところがない。

「どうする?」

 一分ほど考えてみたけど、特に思いつかなかった。だから、とりあえず二人にも意見を聞いておこうと思った。久しぶりにゆっくり公園に行くって言うのでもいいんだけど。どこか静かなところでゆっくりしたいと言うのが俺の第一希望である。しばらく意見が出るまで待っておこうと思っていたのだが、二人とも思いつかないようだ。

「二人とも行きたいところないのか?」

「特にない」

「私も」

 二人とも特に意見が出ないので、俺の提案により三人で夕方の公園へと足を運ぶことにした。



 ここの公園に来るのは、一体何年ぶりだろうか。あれからもう結構な時間が経ったように感じる。何が目当てでここに来たのだろう。特に何の遊具も置いてないただの雑草だらけの公園なのだが。

「ねえ、覚えてる?三人で秘密基地作ったの」

 秘密基地…?そうだった。すっかり忘れてしまっていたが、俺は昔ここで秘密基地を作っているところを見られてしまったことがあったな。

「虹の丘に作ったやつか?」

「うん。覚えてくれてたんだ」

「当たり前だろ。あんなの忘れろっていう方が難しいだろ」

 そもそも、あれは俺が二人に内緒で作ってたものだからな。


 あれは俺がまだ小学生の時だった。俺はその当時、おまじないとか占いとかを調べたりすることが好きだった。その時に、武弥から『好きな人に気付かれずに秘密基地を作ったら、ずっと一緒にいられる』という、小学生なら誰でもできそうなおまじないを教えてもらった。そして、早速作っていたのだ。


「何してるの?」

 え!?なんでここにいるの!今日は用事があるからっていうから、作ってるのに。見つかるの早すぎだよ。

「えっと。あれ?羽衣ちゃん、今日は用事があるんじゃなかったの?」

 羽衣がおまじないの事を知っているかどうかわからないけど、今は話を逸らしたい!

「もしかして秘密基地作ってるの?」

 それはわかるよな。段ボールがたくさんあるし。あぁ、願い事がかなうって武弥からせっかく教えてもらったのになぁ。まさか作り始めの日に見つかるとは思わなかったよ。

「…うん。そうだ。せっかくだから、羽衣ちゃんも一緒に作る?」

 もう作ってることはばれちゃったし、羽衣ちゃんも混ぜよう。

「じゃあ七海も呼んできてもいい?」

「もちろんいいよ」

「すぐ帰って来るからね!」

「気を付けてねー」

 教えてもらった願い事は叶わなくなったかも知れないけど、こうやってみんなで作った方が楽しいよな。


「お待たせ」

「秘密基地ってこれのこと?」

 七海は大量の段ボールで作られた壁を見て言った。

「そうだよ」

「出来上がりそうだから今日中に完成させる?」

「そうしよっか」

 やっぱり、三人で分担すると早く終わりそうだな。でも、こういうのって秘密基地っていうのかな?言うよね。うん。今のところは三人だけしか知らないし。あとで武弥にも場所教えないと。


「これでいいのしゅう?」

「うん!やった、完成だよ!」

 完成した!俺たち四人の秘密基地!!

「っていってもただの段ボールと錆びたトタン屋根で作ったものだし。なんだか、今すぐに壊れそうなものだね」

「でも、秘密基地だしいいんじゃない?」

「そうだね」

 その後、この秘密基地にいろいろ物を持ち寄ろうということになった。

「じゃあ一時間後にまたここに集合!」

「わかった」

「オッケー」


 二人とも時計とかラジカセとかを持ってきていた。俺は漫画の単行本だ。とりあえず、昨日読み終わったものを持ってきた。持ってきたものは段ボールで作った、この秘密基地唯一の家具『段ボール棚』に置いておく。さっきまで何もなかったからか、本とラジカセを置いただけで秘密基地感が出てきた。これは成功かもしれないな。

「実はこの裏に景色がきれいなところがあるんだけど、二人とも行きたい?」

「行きたい!」

 俺は二人に手招きをして通称『虹の丘』を上った。この場所は地元の人でも知っている人があまりいない、いわゆるレアスポットだ。この近くまで来たときは寄ることが多い。

「うわーきれいだね!」

 ここからはこの森本市を見渡すことができる。もう太陽は沈んでいて、少しずつ暗くなっていった。きれいだな。

「ねえ、秘密基地を作った記念に一つ約束しようよ。七年後ここに四人で集まるってことにしない?」

 提案してきたの羽衣ちゃんだった。なんで七年後なのか。そういうのは普通、十年後とかじゃないのか?そう言ったけれど、羽衣は予想外の返事を返してきた。

「だって、七海と秋路が高校を卒業するのは七年後じゃん?」

 なぜそこに基準を置くのかという新しい問題が発生したけど、あえて聞かなかった。約束するなら、ゆびきりもしようとなり、俺たちは桜の木の下にある、この秘密基地でゆびきりをした。絶対にこの約束が叶う様に、そう願ってしっかりと。

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