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私には性別がありませんでした  作者: 六条菜々子
第1章 変わっていく俺
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第15話 夜の学校

 もう3月だというのにまだ雪が降っている。朝の天気予報によると、明日の夜には積もるらしい。なんてこった。そう思っていた。嫌な予感は的中してしまった。なぜなら、俺は学校から出られないからだ。たまに降る大雪は、みんなの足を止める。ここでは特に珍しいことではないのだが、いざ降りだすと止まらないので、やっかいなのは変わりないのだ。

 10分前、俺が生徒玄関から出ようとしたら、後ろから先生が来て、『今日は危ないからでない方がいいぞ。今出ると危ない』と言われたのだ。まあ、先生の言っていた通りで外は猛吹雪。無事に帰ることができる保証はどこにもない。だからと言って学校に泊まるというのもなんというか、最悪だ。もともと、生活できるようには作られていないからな。ちなみに、今は教室にいる。ただ、この最悪の気象条件に巻き込まれたのは俺だけではないようだ。

「あれ? お姉ちゃんがいる!」

「何で七海がここにいるの?」

 今日は特に学校に残る用事もないと思うのだが。もう、学期末だし。

「なんかね、今日は帰らない方がいいぞーって言われたの」

 話がよく見えないので、詳しい話を聞いてみると、七海は今日までの課題の提出をしていなくて、遅くまで残っていたらしい。しっかりしてくれ、妹よ。そういうところはきっちりしろといつも言っているのだが。やはり勉強面では心配な点がいっぱいだ。こうしていても仕方がないので職員室に行くと、早坂先生がいた。

「あらー、二人とも帰れなかったの」

 どうも、この様子だと早坂先生も帰れなかったようだ。

「はい。とんだ災難ですよ。たまにしかないことですからね」

 職員室を見渡すと6、7人ぐらいの先生がすでに椅子の上で寝ていた。とってもあったかい。どうもストーブを付けているようだ。早坂先生が『特別ね? ほかの先生には内緒にしてね?』と言いながら電気ストーブを貸してもらえることになった。おいおい、この学校はストーブを貸してあげようっていう心優しい先生は、この中には早坂先生しかいないのかよ。と思ったが、そうではなく皆疲れていて気が回らないだけだと今気づいた。妹が『そういえばお母さんに連絡してないよ!ちょっとしてくるね!』という言葉を残し、1階へ向かった。なんで下に行くんだ?という疑問が募る中、先生が帰ってきた。

「お待たせー。小さいのしかなかったけどいいよね?」

「はい。ありがとうございます」

「ごめんね。この学校に電気ストーブは二台しかないから」

 ああ、なるほど。決して疲れたりしているわけではなく、そもそも電気ストーブが二台しかなかったのだ。そのうちの一台を職員室で使っていたのだ。まあ、先生方も風邪をひいてはいけないからな。確かに大切ではある。

「七海ちゃんは?」

「母に電話しに行きました」

「そうなの。携帯の電波つながるのかな?こんな天気で……」

 そうか。外の天気が悪くて、電波が届かなかったのか。


 その後、七海は帰ってきたが結局連絡は取れなかったらしい。気にしていても埒があかないので、早坂先生の提案もあって、教室から生徒会室に移動することにした。移動することになった最大の理由は、生徒会室の方が教室より狭いため、ストーブが効きやすいということ。確かに生徒会室のほうがいい。さらに生徒会室にはちょっとぼろくなっている布団があった。何故ここに?とは思ったが、今はありがたく使わしてもらうことにした。早坂先生がさすがに制服で寝るのはダメねといって、保健室から体操服を貸してもらえた。そういえば、『女体化』してから体操服を着るのは、これが初めてかもしれない。なんだか普通の服とは違う、独特な肌触りだなぁ。男子用とはまた違うのだろうか。それとも、俺の体が変わったのだろうか。

「ほんと、何から何まで迷惑かけてすみません。早坂先生」

「いいのよ、気にしなくても。それより、二人とも体冷やさないように気を付けてね。もし、何かあれば保健室に来てくれればいいから」

「はい。ありがとうございます。おやすみなさい」

「ええ、おやすみなさい。じゃあ、また明日ね」

 まさか、学校で寝ることになるとはなぁ。まさかこんなことになるとは思わなかった。まあ、別にいいけど。これはこれで楽しいかもしれない。外が大雪でなければ、だけど。

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