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私には性別がありませんでした  作者: 六条菜々子
第1章 変わっていく俺
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第14話 ある冬の寒い日

 第45回卒業式。この高校では卒業式が45回目。この高校は1969年4月に建てられたため、あと1ヶ月で創立46年だ。俺は今、高校二年生だ。つまり三年生は今日で卒業。そして一か月後には三年生になる。なんだか、感慨深いなあ。


「……この高校を今の二年生の人たちは引っ張って行っていけるような存在になっていってほしいです! 2015年3月5日 3年代表 松田明美」

 三年生の一部の人が泣いている。卒業式かー。この高校も入学した時は特に思い入れはなかったが、実質2年間も通っていると、さすがに愛着がわくものだ。卒業式も終盤になり、3年生が卒業ソングを歌っている。もう終わるのか。何も関係がなかった3年生もいなくなると思うと、若干悲しくなるものだ。拍手とともに三年生が体育館を去っていく。ああ、もう三年生はここの制服を着て体育館に入ることはないんだろうな。そう考えると、三年生の人たちが泣いてしまう理由もわかるような気がする。


「三年生結構泣いてる人いたねー」

「そうだね。あたしもつられて泣きそうになったよ」

「私も何回か泣きそうになったよ」

 やはりこの季節と言えば別れの季節でもある。と同時に、新しい出会いがある季節でもある。まあ、とりあえず俺は進級できるらしい。転校扱いなので単位とか大丈夫なのか?と思ったが、結構優遇されたみたいだ。さすが校長先生である。ありがとうございます。とまあ、話が逸れたが今日からこの学校には1年と2年しか来なくなる。つまり、実質的に今は最上級生だ。うれしいような、うれしくないような。まあ、いいや。それがわかったところで、何かが変わるわけでもない。


「あー。やっぱり寒いね今日」

 寒いのも当たり前だ。今日の最高気温は5度以下だ。本当に3月なのだろうか、と今日の朝に何度疑ったことか。

 紗那ちゃんと由果ちゃんが隣に歩いている。この二人とかかわる様になって約2か月。まさか、ここまで仲良くなるとは思わなかった。何気ない時間。ただ、この3人でいるだけで楽しい。

「ねえ、生徒会室って私たちは中に入れたりする?」

「うん。一応、鍵もらってくれば入れるけど」

「じゃあ、鍵持ってきて! お願い!」

 

 今日は卒業式だったので午前中で終わり。かといって、3人とも特に帰る理由もないため、少し残っていくことにした。なので、生徒会室でゆっくりすることになった。

「たまにはこういうのもいいよね」

「だねー」

 3人で高校生はいない学校でお茶飲みながら、ゆっくりまったりしている。でも、なんだろう。今までこの二人と話すときは俺は男子だ!っていう意識がずっと基本にあった。でも、ここ何日間かで俺の意識は結構変わってしまった。もともと女子だったんじゃないか? という勘違いをするくらいに自然に話せるようになった。でも、いいのだろうか。最近はもはや俺が男子だったってことも忘れかけている。更にあと1ヶ月で3年生にもなる。まさか、女子高生の姿になったまま進級することになるとは。でも、いいや。紗那がお菓子持って来てくれたし、お茶飲みながらもうちょっとゆっくりしよっかな。

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