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私には性別がありませんでした  作者: 六条菜々子
第1章 変わっていく俺
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第11話 バレンタインデー

 今日は何の日かご存じだろうか。そう、皆さんおなじみのバレンタインデーだ。まあ、今のバレンタインデーは昔みたいな、好きな人にしかあげないみたいな風潮はなくて、友達やお世話になった人への感謝を込めて渡すこともあるらしい。といっても俺はこの日に女子が何をしているのかよくわからない。

「沙希ちゃんは作らなかったの?」

 俺は普通の料理を作ることはできるのだが、チョコは作ったことがない。というよりお菓子系を必要とした時がなかったのだ。でも、今は女子高生なのだ。せめて、お店で何か買ってくるべきだっただろうか。

「はいこれ。チョコ、あんたにもあげる」

 店で何かを買ってくればいいとった数秒前の俺の発言を今、撤回する。由果ちゃんは手作りを持ってきてくれていた。お菓子を作れる女子はあこがれるなあ。なんかかっこよくないか?そりゃあ、雑誌とかを見れば作れるのかもしれない。でも、作ろうとは思わないよな。

「本当に!? ありがとう由果ちゃん! すごくうれしい!」

 実は俺が女子から手作りチョコ、いわゆる友チョコをもらうのは初めてのことだ。まさか、初めてもらうチョコが俺が女子になってからとは思わなかった。

「そう? ありがとう。そういえば、紗那はまだ来てないの?」

 本当だ。そういえば、まだ紗那を見ていないなあ。遅刻だろうか。紗那にしては珍しいな。


 その後、紗那は朝礼開始のギリギリの時間で教室に入ってきた。あとで理由聞いてみようかな。


 よし、ようやく休み時間だ。紗那に何で朝遅かったのか聞こうかな、と思ったけれど、もういなかった。紗那は一体こそこそ何してるんだろう? 探していると、職員室の前に彼女はいた。

「なーにしてんの?」

 紗那の背後から俺は声をかけた。すると紗那がわあっ! と声を出したまま、腰を抜かして座り込んでしまった。予想以上に驚いてしまったみたいだ。

「ごめん、だいじょうぶ?」

 紗那は何もしゃべらない。体感的には10秒くらいだろうか。長い沈黙ののち、紗那は立ち上がって俺に静かな声でこういった。

「もうちょっと小さい声で呼んでね」


 詳しい事情を紗那から聞いてみると、どうも長谷川先生のことが好きらしい。なので、バレンタインデーという口実を使い、一生懸命作ったチョコをあげたいそうだ。なんて健気なんだろう。長谷川先生は一応半分男の俺から見てもイケメンで、とってもかっこいい。なんというか、顔がすっきりしているというか。性格はわからないけど。だから、ほかの女子生徒からもいっぱいチョコを受け取っているらしいとのこと。

「じゃあ、その流れで紗那ちゃんも渡せばいいじゃん」

「えーでもさー」

 渡せばいいとはいったものの、そんな単純な問題ではない。しかし、これではいつまでたっても紗那は長谷川先生にあげられない。これでは紗那ちゃんの努力が水の泡になってしまう。なんとかしないと……

「大丈夫だって。ちゃんと食べてくれるよ。長谷川先生なら」

「そうかな? そうだよね。ありがとう、沙希。渡してくるね」

 紗那は不安がりながらも、頑張って職員室へ入って行った。よかった。このまま渡せなかったらどうしようと考えていたからな。俺の説得がうまく効いたみたいだ。


 紗那ちゃんは2分くらいで戻ってきた。話を聞いていると、どうも高校1年の時から長谷川先生が好きだったらしい。俺は特に先生を好きになったことはないけど。ただ、なんか自分が女子になったと思うと、何故だかはわからないが、若干長谷川先生を見ていて、かっこいいと思ってしまった。気持ちが緩んでいるんだろうか。俺はほんの少し前まで男子として過ごしてたのにな。


 何だったんだろう、あの感情は。

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