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幸せな死に方  作者: 天宇
1/5

序+その世界沸き立つ中に

♪初めまして&こんにちは。そしていらっしゃいです。

♪この物語はそのシナリオ上キャラクターが死亡する場合があります(厳密には未定・・・;)苦手な方はブラウザバックでお願いします。

♪それでは拙い&序章の癖にやたら長い文章ですが、お楽しみいただければ幸いです。

意地を信念に

祈りを決意に

想いを言葉に

綺麗事を現実に


そんな風に今まで生きてきて

きっとこれからもそうして生きてゆくのだろう。




--------幸せな死に方--------


色とりどりの布が結わえられた紐が、建物と建物の間、つまり通路の頭上で揺れている。

本来なら馬車が二台は並べるだろう広いこのメインストリートに、今は両脇に所狭しと並べられた屋台と人々の所為で馬車はおろか真っ直ぐに歩くことだって出来はしない。


この世界に唯一つだけ残った王のいる街・・・王都フィクス。

世界各地で催されている聖誕祭の、今日はその第一日目。

今日から二週間は世界の何処に行ってもお祭り騒ぎになっているはずだ。それは勿論王都から農村まで、村にすらなっていないような山奥の一軒家だったとしても、変わらない。

世界中の皆がこの良き日を謳い踊り願いまたこれからの一年を健やかに平和に過ごせるよう大神サークに祈る。

当然フィクスは王都と言うくらいだから祭りの規模の大きさといったら半端ではない。ギヴンはこの時期にフィクスに来たことを、心の底から後悔した。

いや、心の底からという表現は実は正しくは無い。

この割れたような喧騒と町中に溢れた人の圧迫感ととにかく凄い熱気。煩くてきつくて辟易とはするけれど、それは人がいるという証だから。

人が今此処にいて、生きて、笑っている証拠だから。

「・・・でも歩きづらいのとそれとは関係ないんだよなっ・・・と、ふう・・・」

ようやくメインストリートから一歩外れ、裏路地へ入るには至らない場所に小さな空白を見つけ、ギヴンは息をついた。壁に背中を預け座り込む。立っているのも辛かった。

裏路地の隣に店を構えた青年がそんなギヴンの姿を見て、からからと笑う。

「え、なに?」

「いやいや、とんでもない目にあってるみたいだな、坊主」

「坊主言うな」

青年は太陽みたいなきらきらした髪を雑に切って、後ろで一つにまとめていた。金茶の目が人懐っこく微笑み、ギヴンの傍にしゃがみ込む。

「今年は陽気にも恵まれたしな、年に一度のお祭りだし。お前王都は初めてかい?」

「え?」

店の方はいいのかな。

そんなことを考えて青年ではなく青年が今さっきまで立っていた箇所を見るともう一人女性がいるのが見えて、何だ一人ってワケじゃないのかと得心していたものだから青年の問いかけを聞き漏らしてしまった。けれど青年はギヴンの聞き直しを違う意味と取ったらしい。

「ああ、俺らも一応商いやってるからな。人を見る眼ってのは嫌でも肥えるものさ――坊主、ツバメだろう?」

今度の問いは分かった。

「ん、まあ」

「・・・一人か?」

「うん」

「そっか」

青年は頷き、ギヴンの頭をその帽子ごといきなりガシガシと撫でた。

それをみてギヴンはそっと微笑む。青年はツバメとの話し方をちゃんと知っている。

優しい人だと思った。

ギヴンは青年を見てその背後にふと目をやって、

「あ」

声を上げた。

「ん?どうした・・・」

「ソルぅ、ちょっとサボらないでよ」

「ぅおっと!」

青年は(ソルと呼ばれた、今)ギヴンが声を上げた原因、さっき話を聞いていなかった原因、その女性の声に文字通り飛び起きた。

真っ赤な髪を高く結った、綺麗な人。けれどその顔には「今怒ってます」とでかでかと書かれていた。

「悪い悪い」

「なに、可愛い子にちょっかい出してるの」

「いやいや」

誤魔化すように頭を掻くソルから目を外して、女性はギヴンを見た。

「あら、小さなツバメ。こんにちは」

一転鮮やかな印象を残す笑顔を向けられて、ギヴンは赤くなりながらお辞儀をして返す。女性はその仕草に微笑み、店の卓から林檎を一つとってギヴンに投げた。

「わ」

「その様子じゃまだ着いたばかりね?吃驚したでしょう、この盛況。取り合えず・・・『果てを生き抜き今に出会えたことに感謝を』。それは餞別よ、持って行きなさいな」

「え、あの、有難う。ええと、『昨日に出逢い未来にいるであろうその深き魂に安息を』」

「あらちゃんと知ってるのね、ツバメ君」

女性は口に手を当て、微笑む。

「ツバメじゃない」

「私からすればツバメはツバメよ。ごめんなさいね、ツバメには名前を聞かないことにしているの」

「や、それは普通」

苦笑して見せたギヴンに、女性はまた笑みを向ける。いつの間にか店で客と応対しているのはソルと呼ばれた青年になっていた。

「店いいの?」

「あいつにちょっとやらせようと思って。あいつもね、ツバメだったのよ。ほんの一ヶ月前にやめちゃったけどね」

「変な情報ばらすなよ」

しっかり耳はこっちを向いていたらしいソルは女性に非難の声をあげ、また客の応対に戻る。

そんな青年の姿が何故だか可笑しくて、ギヴンと女性は顔を合わせて吹き出した。

「じゃああいつも五月蝿くなってきたし、客商売に戻るわね」

「うん。それじゃあ」

ギヴンもそろそろ行こうかと思っていたところだ。立ち上がり軽く手を振って、裏路地の奥の方へ進む。今はちょっと大通りは勘弁だった。

この王都にはほんの小一時間前に着いたばかりだったけれど、いい人たちに出会えてよかった。揉みくちゃにされた甲斐があったというものだ。

「それにしても、小さなツバメだって」

思い出してギヴンは小さく笑った。


晴れ渡った空。砂混じりの風。

裏路地から抜け出て、メインストリートほどではないが活気に満ちている通りを歩きながらギヴンはつい先刻までいた世界を思い出す。

昔の戦争の影響で何処まで行っても緑なんて無い。

木々は枯れ草花は綻び水は濁り大地は掠れる、そこは死の世界。

荒野。

生物兵器の影響といわれる変異体、魔獣が闊歩し人に死を運ぶその荒野を生きる者たちをツバメという。ただしその名は本来蔑称だった。定住し人との間で生きることの出来ない、環境の変化に耐えられない者たち、と。

今でこそそれは過酷な世界で生きることの出来るものとして使われているけれど。

定住する者たちは翼を休めに来たツバメたちに言葉を送る。先ほどの女性が使ったものが、それだ。ギヴンの言葉はそれに対するもの。儀礼的なものだが、ギヴンは好きだった。

ふわりとまた、砂交じりの風がギヴンの後方へ抜けていく。後ろ髪を一房だけ伸ばしてうなじの辺りに赤いリボンで結んだそれが、風に遊ばれて踊る。



ギヴンが王都に着いて、一日目のことだった。


こんなところまで読んでくださって有難うございます♪本当触りだけですがここまで序章です。

こんな感じにのんびり進む話ですが、今後ともよろしくお願いします〜

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