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呪いの聖女じゃありません~呪われた迷宮と聖なる少女~  作者: 初雪しろ/Yuyu*


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6/8

噂と事件

 夜も更けて月明かりがラビリアを照らし始めた。

 あまりこの時間に出歩くことってないんだけど想像以上に暗いわね。足元を気をつけないと簡単に転びそう。

 まあ、それでも夜じゃないと原因を特定できそうにないから仕方がない。

 私は旧冒険者ギルドを再び訪れていた。

 周りは酒場の音は確かに聞こえるけれど、残念ながら他の建物の光はここを照らしてはくれていない。。

 頼りになるのは月明かり程度なんだけど、たまに雲がかかってるのよね。


「でも、ここでランタンつけてたら目立つわよね。仕方ないわね……」


 神聖魔法とか聖女の力で夜目が効くようになればいいのに。

 まあ無い物ねだりしても仕方ないわ。できることをしましょう。

 私は近くの建物の影に入り誰かがくるのを待つことにした。

 少し暗闇に目が慣れてきたけれど。人影程度なら認識できそうだけど、まだまだ暗くて顔とかは確認できなさそうね。

 そのまましばらく待っていて、若干の眠気が襲いかけてきた頃だった。

 かなり小さかったけれど建物の扉が開く音がした。方向的に旧冒険者ギルドの扉のはず。

 裏口へと目を向けると人と思わしき何かが中へと入っていき、扉が静かに閉じられた。

 私は足音を建てないようにゆっくりと裏口まで移動する。

 そして、ひとまず扉に耳をつけて中の音を聞いて見た。

 はっきりとはしないけれど、木の軋む音が聞こえる。昼に歩いた時は床は歩いただけじゃそんなに音はしなかったから階段かしら。

 少なくとも実体のないものじゃなくて物理的な何かではありそうね。

 私はその音が扉からは離れていると判断してから、できる限り音がたたなように扉をあけて中へと入る。

 侵入者は中に入ってからどこにいったのかと思ったけど、上の階から音が聞こえた。

 2階までいったみたいね。ただ、入ってからそんなに時間はたっていないことを考えると、泥棒とかではなくて目的が2階にある動きよね。この感じって。

 そう考えながら1階の階段部分にたどり着いた時だった――強烈な匂いが2階から流れてくる。

 少なくとも良い匂いではない。


「というか、これ焦げ臭いとかそういう匂いじゃない!?」


 嫌な予感がする。というよりも、室内でしていい匂いではない。

 すぐにこの場を離れるべきとも考えたけれど、この旧冒険者ギルドが燃えたら周りへの被害はどうなる。

 かなり燃える建物は多かったし、そもそも宿とかの大きい建物が多い。

 すぐに対処することができれば、この旧ギルドの部屋の1つが燃えるだけで済ませることもできるはず。

 私はそう判断してすぐに足音など気にせずに2階まで駆け上がった。

 窓から入る月明かりのおかげで、扉が半開きの部屋から少量だけど黒煙がでてるのが確認できた。


「何してるのよ!?」


 迷わずその扉を開けて中に入ると、元々はこの部屋のベッド用だったであろう木枠に火がついていた。

 そしてその火を前に右往左往してる明るい青髪の少女がいる。


「えっ!? あっ、これは違うんです!」

「なにが……って言ってる時間も惜しい! なにかないの!?」

「すいません、なにもないです!」


 泣きそうになりながら少女はそう言った。

 確かに火を消すのに使えそうな道具は見当たらない。


「なら逃げっ――」


 そう言おうとした瞬間に火が床を伝うように広がって部屋の扉が勢いよく燃え始めた。


「ひぃっ!?」

「あなた、何したのよこれ」


 色々起きすぎて頭が冷静になってきた。


「ラ、ランタンが壊れて中の油を伝って火がついてしまって」

「こんなとこでランタン使うって正気!? いや、それは今じゃないわ……火を消せる方法とかなにか使えない?」


 もしも魔法使いとかであれば――そんな希望を打ち砕くかの如くものすごい勢いで首を横に振られた。


「魔法は使えますけど、この規模の火を消す魔法を使うには時間がかかって」

「わかった。ないのね」


 聖女の力でも火は消せないし。この火が魔物とかだったら倒せたかも知れないけれど。

 考えている時間も今はない。火を消すのは諦めて、とにかく脱出しないといけないわ。

 扉は使えない。それなら方法はひとつしか今は浮かばないわね。

 我ながら最初に浮かんだのがこれって、聖女としてどうなのとも思うけれど背に腹は代えられないわ。


「……仕方ない。とぶわよ」

「へ? と、とぶ?」

「死にたくないでしょ」

「死にたくはないですけど、とぶってどういうことですか!?」


 私は彼女の声を聞きながら窓の鍵に手をかける――が、金具が錆びてすぐに開きそうになかった。


「そんなの決まってるでしょ。ここから――開かない!」

「まさかとぶって」

「2階くらいなら頭から落ちた上で受け身に失敗とかでもしなければ、骨折れるくらいですむのよ。燃えるよりはマシでしょ」

「そ、そんなぁ――というか、あれ、もしかして聖女様ですか!?」

「今は私が誰か気にしてる場合じゃないわよ!?」


 なんで今更気がつくの――もしかして火で顔が見えるようになった?

 そんなことはいいとして、彼女はビビって自分からは動いてくれそうにないわね。

 でも、流石に担いで飛び降りて無事な自信はない――仕方ないわ。

 火も強くなってきて、もうすぐこの部屋が一面火の海になるのは簡単に想像がつく。。


 ――手段を選ばずにふたりとも生き残る方法はこれよ!

 私は少女の腕を掴んで引き寄せる。


「せ、聖女様?」

「受け身とれなそうなら、せめて頭は抱え込んでかばいなさい。あとガラスでの傷は不法侵入したあなたへの罰ってことで!」

「えっ、なに――うそうそおおおお!?」


 私はそのまま少女を窓に向かって投げ飛ばした。

 流石に人間の体がぶつかるほどの力がぶつかっては、鍵なんて関係なく窓は見事に割れて彼女はそのまま外に落下していった。

 私もそれを見届けて地面にあった彼女の荷物も放り投げてから助走をつけて壊れた窓から外に飛び降りた。


「いったいけど、着地成功」


 幸いにも怪我をせずに地面に降り立つことが出来た。

 すぐに投げ落とした女の子を探すと床で伸びてはいたけど、出血とかはなく無事そうだ。

 そして、すでに野次馬が集まっている――そうだ!


「誰か水魔法か土魔法使える魔法使いはいない!?」


 窓から飛び降りたこともあって私に注目が集まっている。

 そのまま私は野次馬に声を掛ける。

 するとすぐに近くにいたローブをきた男性が手を上げてくれた。


「僕が使えますが……あれ、聖女のアリア様ですか?」

「そうよ。ちなみにどっち?」

「つ、土魔法です」

「なら、最悪あの建物は空き家だから壊してもいい。私が責任を取るから、周りに火が広がる前に土を上からかぶせて火を消せない?」

「や、やってみます」

「私も手伝います!」

「水魔法で土の隙間から漏れそうな火は俺が」


 緊急事態なこともあるからなのか、私がそう頼んだからなのか、すぐに周りの人達も火事の消火に協力してくれた。

 幸いにも2階から上が半焼といったくらいですんだけど、もう建物としては終わりって感じね。

 おそらく修繕するよりも全部壊して作り直したほうがいい。

 私は協力してくれた人たちにお礼を伝えてから、周りに火花とかでの怪我人がいないのを確認してから……ずっと伸びてる少女を背中におぶってひとまず家よりも近い教会に連れて行った。

 教会についた頃には、あと数刻で日が昇るくらいの時間になっている。私は深夜の緊急治療のために教会に泊まっている担当神官に一旦少女のことを任せてから仮眠室のベッドに倒れ込んだ。

 そして思ったより緊張と疲れがあったのか、すぐに眠りについた。


 しかし――後処理がめんどくさそうなことになってしまったわね。


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