ラビリアの街
翌日、いつも通りにに教会へと足を運ぶと最近の呪いの浄化依頼は聖女でなくても間に合う数らしい。だから、リットの依頼を優先してもらって構わないと言われてしまった。
勝手な想像も混ざるけれど、教会としては呪いの浄化の儀式を若い神官にもやる機会を与えたいということもあるのかも知れない。
だけど、わざわざこの国に呼び寄せた聖女がその仕事をやってくれているのに今更やるなとも言えず、国の偉い人への聖女の協力という建前はタイミングも都合も良かったのかもしれない。
まあ、私もずっとセイクリッドハウスにこもっている状態なのも良くないからお言葉に甘えることにした。いや、仕事だから甘えるというのも変だけど。
教会から出た私は地図を確認して目的の旧冒険者ギルドへと向かうことにした。
「しっかし、物音ね。相談……というか苦情が入るってことは、うるさいと困る時間にガタガタいっているってことよね。それを考えるとこんな昼間に行っても意味ない可能性もある気がしてきたわ」
そう思いつつ周りを見渡すと知って入るけれど、慣れない街並みが広がっている。
そういえば、私ってきっかけもなくて仕事に関係する道ばっかり歩いているのよね。
この国にきてから、長くはないけど短くもないはずなのに新鮮に思ってしまうのは良くないわよね。
寄り道は……一応仕事だからやめておくけれど、雰囲気ぐらいは感じていっても良いわよね。
改めて、このラビリアはダンジョンを中心としてできた街から始まった。
そうなれば当然だけれど、街の中心部にはダンジョンへの入口がある。私は重傷者が出た時に数度入ったくらいで詳しいことはわからないけれど、地下に降りていくような階段を下った先には広いフィールドが広がっているダンジョンだ。
初めて入った時は驚きと困惑でいっぱいだった。明らかに地上の状況を比較しても広すぎて物理法則を無視していると言わざるをえないほどの広さだったから。
ただ、ダンジョンはそういうものらしいと知識では知っていたこともあって受け入れた。
それらのことから地上のラビリアと地下のダンジョンなんて言う人もいる。
だけど、国の中心となっているダンジョンだけれど、未だ謎も多く秘めている。
自分たちの国の中心となるダンジョンと付き合っていくためにも近年では調査が必要だという意見が強くなっていた。
そこでラビリアをまとめている貴族たちはダンジョンの調査に報酬をつけて冒険者と募っている。ダンジョンの中では価値のある物が見つかることもあって冒険者たちは、辺境にも関わらず足を運んできている。
それらの結果、ダンジョン入口周辺は冒険に必要な武具を揃える店や工房に道具屋などが立ち並んで一番栄えている区画へと発展を遂げた。
ちなみに教会はそんな国の南区画に存在している。
「中央区画はすごいわねー」
今回私が向かっているのは国の北区画の中でも北に位置している場所にあるため、私は中央区画を通ることになるわけ。
ちなみに私が日々暮らしている屋敷は南東の区画に位置しているから教会に行くときには中央区画は通らない。
だからこそ、今までの生活の中では呼ばれた時にくるぐらいだった。しかも緊急性の高い案件でダンジョンや怪我人のいる家に飛び込むから周りを見るどころじゃない。
神官として冒険に一緒に行く人であればともかく、街の中で仕事が成り立つ人は使わない店も多いのよね。
それはさておいて気がつけば街の中央区画の真ん中にたどり着いた。
さすがに一番栄えている場所だけあって冒険者と商人に見える人たちで賑わっている。
「聖女様。こんなところでどうかしたんですか?」
「うわっ!?」
街なかを眺めていると不意に隣から声をかけられて思わず少し距離を取ってしまう。
そこには腰に短剣を装備した金髪でポニーテールの少女が立っていた
「ルルティ。驚かせないでよ」
「すみません。ですけど、聖女様がダンジョンの入口近くにいることは、ほとんどなかったので」
「まあ、そうね。私も通りがかりだけど普段こないから見ていたのよ」
彼女はルルティという冒険者だ。
短剣をメイン武器としつつ戦闘を避けながらダンジョンを探索している。
冒険者の中で通じる役割的な呼び名だとレンジャーだったかしら。
私はそんな彼女が、ダンジョン内で呪われて動けなくなったのを他の冒険者によって教会に運び込まれたことで知り合った仲なのよね。
「あなたはこれからダンジョンに潜るの?」
「いえ、昨日の夜にダンジョンから戻ったもので帰還報告だけして宿に帰ったんです。これからギルドにいって詳細報告のほうを」
「なるほどね。それはお疲れさま……そうだ、ルルティってこの街の噂とかってどれくらい知ってる?」
「まあ冒険者の間での噂とかであれば人並ですけど」
冒険者の間だと、物音なんて気にする人いるのかしら。
「旧冒険者ギルドがあるあたりでの噂なんだけど」
「あー……夜に物音がするやつですか。結構、最近は有名ですね」
「そうなの? 実はちょっとそこの調査に行く予定だったんだけど……噂って夜だけ?」
「私が知っている噂だと、物音がするのは夜がほとんどですね」
「なるほど。ありがとうね」
「いえいえ、お仕事でしたらお気をつけて」
「あなたもダンジョンでまた呪われて運び込まれたりするんじゃないわよ」
「気を付けますが、もしもの時はお願いします!」
ギルドへ向かって走り出した彼女を軽く手を降って見送った後、改めて私は目的地に向かって歩き出した。
夜の噂ばかりだと時間が早い気もするけれど、逆に昼が安全であるなら中の様子を先に一度みておいてもいいだろう――と思おう。
正直、ここまできて何もせずに出直すのもなんかもったいないからね。




