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呪いの聖女じゃありません~呪われた迷宮と聖なる少女~  作者: 初雪しろ/Yuyu*


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聖女の日常

「呪いの聖女だと、まるで私が呪いをかけてるみたいになるじゃない!」

「あれ、なんか愛称的なものと聞いてたんですけど。違いましたか?」


 その愛称を受け入れる人がいると思えるのかしら。


「まあいいわ。とりあえず、見せてみなさい。見ないとわからないわ」


 私がそう言うとやってきた冒険者は1本のナイフを目の前の机の上に置いた。


「ちなみに、これはダンジョンの中で見つけたもの?」

「はい。ただ、パーティーに鑑定が多少できるやつが呪いがかかってるって言ってたので」

「まあ、そうね」


 私はそのナイフを手にとる。

呪いは基本的には鑑定の経験や魔法使いが魔力の違和感から気がつくことができる。

 もしくは使用してみて、おかしな効果を受けた時に一足遅く理解できる。

 ただし例外として聖女の魔力には敏感に反応を示すらしく、私の場合は触れれば呪いが付与されているかどうかがわかる。

 このナイフも私が手にした瞬間に、呪いが付与されていると私には理解できた。

 魔力に反応しているこのことを、他の人に説明しようとすると難しいけれど感覚的にわかった。

 ただ今回のこのナイフにかかった呪いはかなり弱いもので、少し魔力を流しただけで呪いは浄化されて消え去った。


「はい、これでもう大丈夫よ」

「ありがとうございます!」

「ちなみに、教会によってからここにきた?」

「あ、はい。神父様に言われてこちらに」

「ならいいわ。それじゃあまあ、ダンジョンにまた潜るなら気をつけてね。あと、呪いの聖女じゃないから!」


 私は念を押してから冒険者を見送った。そして改めて受付中の札を裏返して『受付終了 急ぎの場合は教会へ』という面が外に見えるようにした。

 ちなみに浄化は無料で行っている慈善事業というわけではない。儀式には時間も手間もかかるし魔石を必要とする場合もある。呪いの強さによって若干変わるけれど。

 それにすべてを無条件に受け入れてしまうとキリがなくなってしまうということらしい。

 これに関しては長い歴史によってそうなったらしいから、明確な理由がない限りは変わることはないと思う。


「さてと、教会よって帰らないと」


 私は普段から持ち歩く貴重品を確認する。それから外にでて、扉の鍵を閉める。

 ほぼ、私専用の仕事場みたいになっているけれど教会の管理する建物なので、鍵も基本的には教会が管理することになっている。

 今日も変わらず私は教会に鍵を戻し挨拶をすませてから帰宅した。

 国として認められたばかりのラビリアの中にある数少ない屋敷の1つであるオーディア家の屋敷は静かだ。

 この国に来るときの契約で私の衣食住を支えてくれることにはなっていたけれど、まさか屋敷に部屋を用意してくれるとはね。


「おかえりなさいませ、アリアお嬢様」


 中に入ると屋敷の使用人たちを取りまとめているメイドのオリヴィアが出迎えてくれた。

 私よりも少し年上の女性だ。少しツリ目できれいな黒髪がなんというか真面目な人だ。

 かっこいい女性といった感じ。


「ただいま。リットは今日も泊まりで仕事?」

「本日はお帰りになるそうです。それから、帰宅後に少し話がしたいので夕食後は屋敷にいてほしいとの伝言を預かっております」

「わかったわ」


 リット・オーディア――オーディア家の次男でありこの屋敷の主だ。

 明るい茶髪で子供の頃は活発といった雰囲気だったけれど、いつからか苦労人みたいなポジションになりながら兄と父に振り回されているのをよく見た。

 オーディア家が関わる商売にも関わる交易路の安定まで国に常駐するという話だったけれど――気がつけばラビリアの国家運営にもアドバイスを求められる立場に持ち上げられて仕事の毎日を過ごしている。

 最近ではダンジョンから発掘されたものの取引をしたいという商人たちも現れ始めたことで、数日帰ってこないこともよくある。心配と無事の確認もあって私も帰宅時に確認するくせがついてしまった。


 ちなみに私とは年齢も近くて気の知れた仲だ。

 しかし、改めて私に話とはなにかしら。

 ここにきてから教会の仕事しかしてないけれど、契約の際には家業の手伝いの文言も入っていたからそろそろ私にも仕事がやってきたのかも知れないわね。

 まあ、最近は呪いの浄化ばかりで少し別の仕事もしておきたいから教会が認めてくれるなら気分転換にもなるしいいかもしれない。


 私は楽観的にそんな考えを持ちつつ屋敷内で過ごす部屋着に着替えてリットの帰りを待つのだった。

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