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呪いの聖女じゃありません~呪われた迷宮と聖なる少女~  作者: 初雪しろ/Yuyu*


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謎の魔力生物

 あれから数日が過ぎた。

 ダンジョンから戻ってからは、再び呪いの浄化を中心とした教会の仕事をしている。

 その合間にダンジョンについての復習と情報集めのために本や資料を読む日々が続いている。

 そして、その間のリナについてだけれど。


「ここのダンジョンだと……」


 セイラート家で使えるルートを辿って集めてもらった他のダンジョンで発掘された物品のリストをまとめ直してもらっている。

 資料自体はすぐにもらうことが出来たけれど、本当にただただまとめてあるというだけだった。そもそも国を上げてダンジョンの調査をするほうが珍しいからおかしいことじゃないけれど。

 冒険者稼業をしていて体を動かしたりするほうが主だったリナには慣れない作業みたいで頭から湯気が出そうな雰囲気ね。

 でも、家の掃除とかはメイドがいるしで冒険に出ている時以外の使用人としての仕事があんまり思いつかないからひとまずやらせてるけど。

 ちょっといじわるだったかしらね。


「リナ。無理はしないでいいわよ」

「いえ、アタシにやれることがあるならやらないと……仕事せずに世話されてるだけになってしまうので」

「まあ、あなた自身がそう言うならいいけど。私もこっちの資料とか見直せるから」

「お邪魔します~。すいません、まだ呪いの浄化って受け付けてますか?」


 手元の本に目を向けていると扉が開く音といっしょに声が聞こえる。


「いらっしゃい……も微妙におかしいかもしれないけど。受け付けてるわよ」


 私は本を閉じて机の上に置いて客の対応をする。

 初めてみる人だ。

 若い少年といった感じで、下手すれば成人もしてなさそうな雰囲気がある。


「えっと、聖女のアリア・セイラート様ですか?」

「そうよ。まあそんなにかしこまらなくてもいいわ」

「ボクはライトいいます。この道具なんですけど」

「待って、その前に聞いておかないといけないんだけれど教会にこの場所を聞いてきたのかしら? それとも、最初からこっちに?」

「教会で浄化の依頼をしにいったら神父様にこちらのことを教えてもらいました。料金は一応そちらのほうで」

「わかったわ。それじゃあ、ひとまず浄化してほしい道具を見せてもらえる?」

「はい」


 そうして彼が渡してきたのは一振りのソードだった。

 受け取って少し意識を集中するとたしかに呪いが付与されている。

 大きさ的にはロングソードに見えるけれど、鞘に何かのマークが刻み込まれている。


「これってダンジョンで手に入れたの?」

「そうなんですけど……実はダンジョンの中のミニダンジョンではなくて、ダンジョンの草原にぽつんと落ちていたんです」

「そうなのね。結構上等なものだけど……あれ?」


 私は一度ソードの本体を見ようと鞘から抜こうとしたけれど、全く抜けそうにない。

 もしかして呪いで抜けないってことかしら。


「なるほどね。でも、これは……すぐに使いたいってことでいいかしら?」

「あ、いえ、ボクはメイスを使っているので。ただ、良いものなのはわかるので中を見てみたくて」

「そういうこと。少し時間がかかるから……そうね。日が落ちる頃にまたきてもらえる?」

「わかりました。おまかせします」


 私は彼からソードを受け取って、出ていくのを見送った。


「さて……ちょっと本気でやるわよ」

「いつもみたいに魔力で浄化するんじゃないんですか?」

「今回の呪いはそれだけだと浄化しきれないくらいの強さなのよ。月に1つくらいこういうものも持ってこられるわ」

「それじゃあ……どうやって?」

「それを今からやるのよ。ちょっと準備が必要だから待ってなさい?」

「えっと、はい……何かできることありますか?」

「終わった後の片付け手伝ってちょうだい」


 私はそう言って奥に一度引っ込み道具を準備する。

 呪いの浄化の方法の1つである魔法陣を使った浄化の儀式だ。

 私は塗料を使って魔法陣を床に書く。


「これって、たしか神聖魔法陣でしたっけ」

「そうよ。神官になると最初に叩き込まれるわ。使い方によって、周りの円の二重線の間に書き込む文字を変えるの」

「そういう方法だったんですね……全く読めませんけど」

「古代文字の一種だから教会で習わない場合は個人的に古代文明とかを研究でもしない限りは、読めなくて当然よ」


 私はソードをその魔法陣の中心に置いた。


「魔法陣の中に入らないようにしてなさい。それじゃあ始めるわよ」


 私は魔法陣の北の頂点に移動して、手を起き一気に魔力を流し込む。

 魔法陣の線が黄色く輝きだす。そして最後に中心のソードを強い光が包み込んだ。

 本来であればここから魔法陣に書いてある文字の詠唱が必要なのだけれど、聖女の場合は魔力を文字そのものに流し込むことで効果を得られる。


「……何か変ね」


 本来であれば光で包みこまれた後に呪いとなってる魔力の浄化が感じ取れたら終わりになるんだけれど。

 それを感じ取れない。いや、むしろ何かがそこにいるような感覚が――。


「アリアさん、危ない!」


 その瞬間に光の中から、何かはわからないけれど小型の物が飛び出して私に向かってきた。

 ただ、リナが声を上げてくれたお陰で咄嗟に両手で防御できた。


「ぐっ」


 とはいえ、不意打ちでしかも座り込んで魔力を流していた状態だ。足で踏ん張ることもできずに、壁まで吹き飛ばされた。


「アリアさん!」

「大丈夫よ。それより、今のどこにいった?」

「どうにか捕まえました」


 私が吹き飛ばされている間にリナがその何かを捕まえてくれていたみたいだ。


「でも、これなんですか? なんか……アタシでも魔力の塊ってことはわかるんですけど」

「そうね……本当だったら色々観察したいけど、さすがに危険だから」


 リナが捕まえたそれは紫色の魔力の塊だった。スライムという魔物に近い見た目ともいえるけれど、ただただ魔力の塊だ。

 でも、何故か動けるししっかりとした実体を持っている。

 私はリナが掴んだままのそれに手を当てて、魔力を流し込んだ。


「呪いの魔力であれば……」


 想像した通り浄化して霧散していった。


「こ、これが浄化ですか?」

「そんなわけないじゃない。初めてよこんなこと……」


 それに教会でも教えられたことがない事例だ。

 何かおかしなことの前触れだったりしないわよね。

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