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呪いの聖女じゃありません~呪われた迷宮と聖なる少女~  作者: 初雪しろ/Yuyu*


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防具工房と準備

 隣へと移動したけれど、作りは武器工房と似たりよったりだ。

 ただ、武器と違うところとしては鎧などの防具がマネキンに装備する形で置いてあるけれど数が少ない。


「聖女様。親方から話は聞いています」


 中に入ると若い茶髪の青年がそう話しかけてきた。


「あなたは……はじめまして?」

「はい! ですが、聖女様の話は親方や街の人から聞いてたりします。防具工房を任されているディーといいます。親方の一番弟子です。なにか質問や購入するものが決まったらオレに言ってください」


 こちらの工房は弟子に任せてるのね。


「早速なんだけど、鎧とかの数が少ない気がするのだけれど売り切れているということ?」

「いえ、鎧などの防具に関しては体のサイズに合わせた調整を必ずするのが親方のこだわりなんです。なので、あそこに飾ってあるのは見本みたいなもんです」

「なるほどね。たしかに、体の動きに直結することを考えたら当たり前の考えではあるわよね」

「そのおかげで防具工房の方は、中々新しいお客さんは増えないんですがね。この場で買ってすぐに渡せるのは盾くらいのもんです」


 まあ、鍛冶師や一種の職人だからこだわりもそれぞれよね。

 だけど、防具のその考えは冒険者からすると助かるこだわりだとは思う。


「ひとまず少し見せてもらうわ」

「ごゆっくり」


 私はひとまず展示されている防具を一通り見てみることにした。

 金属の鎧だけれど胴だけでみても急所を重点的に守る作りのものから、全体を守るものまである。


「リナは防具はどんな防具をつけていたの?」

「ア、アタシですか。えっと、基本的には革素材の鎧が多かったですね」

「……リナ。ちょっといいかしら?」

「は、はい!」

「それ、もう少しどうにかならない?」

「そ、それとは」

「口調っていうか態度っていうか。そこまで恐縮というか緊張されると私も気になる」


 最初は火事のことだったり周りにリットがいる場面だから仕方ないと思っていたけれど、二人行動になってもこの感じだと堅苦しい。

 もちろん私だって自分の立ち位置を理解してないわけじゃないけど、それにしたってこの態度だと連携も不安だし――なにより私が疲れる。


「年齢も私を多分近いと思うのよ。もちろん、式典とか場所によっては仕方ないけど。もう少し自然体でいてほしいのよ。これから、しばらくは一緒に行動することになるのだから」

「えっと、そのアタシはその……わかりました。頑張ります」

「まあ、無理して辛いなら強いるつもりはないけれど……私ってもしかして怖い?」

「そんなことは! ただ、アタシは聖女様に迷惑しか現状はかけてないので」

「じゃあ、まずはそこから。私のことはアリアと呼んで」

「アリア……様」

「せめてさんにしなさい」

「アリアさん……わかりました」


 これでもまだ固い気はする。目標としてはタメ口までいければいいけれど、ひとまず名前呼びからゆっくり崩していきましょう。


「それじゃあ、リナ。あなたの防具を整える……けれど、革装備だとここじゃないほうがいいのかしら」

「盾は金属の小さい盾があると助かります」

「じゃあ、選びなさい」


 リナが盾を見ている間に私も目的のものを見ましょう。

 私はそう思いつつ防具を見ていく。そして、目的の物を見つけることが出来た。

 グローブやガントレット――腕を守る防具だ。

 ただ、私が求めていたのは武器として使えるそれらなんだけど。ぱっと見る限りは拳で戦うのと補助するには動かしにくさがありそうね。


「ちょっといいかしら」

「はい。ただいま」


 工房の奥にいるディーに声を掛けるとすぐに来てくれた。


「このガントレットがあるじゃない」

「どれか気になるものがありますか?」

「これって基本的に魔力は通るのかしら」

「特殊な素材を使わなければ問題はないと思いますが」

「じゃあ、武器として拳を保護しつつ威力を上げるためのガントレットはあるかしら」

「なるほど。武器としてのガントレットってことであっていますか?」

「そう。武器工房のほうだとそれらしいものがなかったのよ。だから、こっちで作ってるのかと思ってね」

「格闘を主軸とした冒険者用のものがいくつかありますが」

「見せてもらうことはできるかしら?」

「ちょっと待ってくださいね」


 ディーはそう言うと一度奥にある扉の中に入って、すぐに戻ってきた。


「基本的にはこの形が一番よく注文されますね。指の動きを可能な限り阻害せずに拳と手の甲での攻撃を補助する形です」

「少しつけてみてもいいかしら?」

「どうぞ」


 私はディーガもってきたガントレットのひとつを右手にハメてみる。流石に多少大きさが違うけど、確かに指をハメている部分は柔らかめの素材になっていて動かせる。


「これ両手分を注文したらどのくらいでできるかしら?」

「これと同じ型であれば数日でできます」

「じゃあ、これと……リナはいいのあったかしら?」

「はい。このバックラーがいい感じです」


 リナはそう言って小型の丸い盾を持ってくる。

 武器もだけれど、どちらかというと軽い装備がリナのスタイルなのね。


「じゃあ、このバックラーとお願いできるかしら?」

「お買い上げありがとうございます。えっと、ガントレットはサイズを合わせたいので採寸させてもらってもいいですか?」

「わかったわ。リナはちょっと近くの薬屋に行って必要そうなものを先に見ておいてくれるかしら? そのへんは私よりもリナのほうは経験もあるでしょ」

「わかりました。えっと、アタシがよく行く店でもいいですか?」

「そこでいいわ」

「武器工房から中央広場方向に行く途中にある薬屋です」

「わかったわ」


 リナは私の返事を聞くと工房から先に出ていった。


「しかし、聖女様……なんか意外です」

「何がかしら? 神官以外の誰かと一緒に行動してること?」


 基本的に仕事場にこもってるから、否定はできないけれど。


「いえ、ガントレットを選ぶところといいますか。豪快ですね」

「あ、そっちね。いえ、まあ……」


 一応、武器の扱いも学びはしたけれど――聖女の魔力を込めた拳で攻撃するのが一番威力がでるのと、動きやすかったのよね。

 まあ、実践の経験は少ないから実際にダンジョンに潜って戦闘に入ったら変わるかも知れないけれど。

 そんな軽い雑談もしつつ採寸を終えて先に料金を払い防具工房を後にする。

 その後は薬屋で解毒や傷の治療のためのポーションを買い揃えた。

 革や布を扱っている工房では革鎧などの動きやすさを阻害しない防具とすぐにアイテムを取り出せるようにするための腰につけるポーチを揃えることが出来た。

 後は私の武器が完成すれば最低限の準備は整うわね。

 そう思いつつ外に出た時、空を見るともうすぐ日が落ちる時間になっていた。


「まあ、今できる準備はこれくらいね。後は頼んでる武器とかが完成したら一度潜ってみましょう」

「はい」

「それじゃあ帰るわよ」

「あ、じゃあアタシはこの辺で」


 そう言ってリナは去ろうとするけれど――どこに行くつもりなのかしら。

 実はリットが私のところに連れて来る前にお金を最低限渡しているとかかしら。

 いや、流石にそんなことはしないはず。


「待ちなさい」


 私はリナの肩を掴んで引き止める。


「えっ!? あの、なんでしょう」

「どうせ泊まる場所決まってないし、そのためのお金もないんでしょ。うちにきなさい。リットに文句は言わせないから」

「そんな、悪いというか恐れ多いです」

「それならますますきなさい。ダンジョンに潜ることが決まってるし、ちゃんと休める場所を用意するのは私の責任だから」


 理由さえつけてあげれば、ひとまず家には来てくれるでしょう。

 そっちの申し訳なさを消すのはゆっくりやればいいわ。


「じゃあ、いくわよ」

「はい。あ、せめて荷物は持たせてください」

「……まあそれで気が済むなら任せるわ」


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