表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
十種神宝  作者: 星乃夢
8/12

第七話 道返玉


道返玉ちがえしのたま

 

 物理的な重機が沈黙した後、本部はさらに陰湿な情報の呪いを放ってきた。

 

 凪たちが『違法に土地を占拠』し、『環境を破壊』しているという……悪意あるフェイクニュースがネット上を駆け巡る。


 かつて、

 凪が利用していた見せ方の技術が、

 今度は、

 彼女を社会的に抹殺するための

 武器として牙を剥いたのだ。


  

「お嬢様……。ネット上の批判が止まりません。本部は、私たちが古い水路を勝手に開いたことを『不法な環境改変』として告訴する構えです。このままでは、私たちの道が完全に塞がれてしまう……」


  

 天野が焦燥に駆られ、タブレットを叩く。

 

「あいつら、自分らが電気止めたことは棚に上げて、なんて言い草や!」

 

 登美も怒りを露わにした。

 

 凪もまた、かつてない悪意の奔流に足がすくみそうになっていた。


 だが、横に立つ寧々は、吹き付ける嵐のような非難の中、どこか楽しげに目を細めていた。



 

「凪さん。向かってくる風が強いなら、逆らわんと翼を傾けるんや。そしたら、その風があんたを高く飛ばしてくれる力に変わるんやで」

 

「翼を……傾ける?」

 

 戸惑う凪に、寧々は凪の泥だらけになった白いスーツを指し示した。

 

「そうや!本部は、この泥を『汚れ』や『罪』やと言って宣伝してる。……ほんだら、うちらはそれを『勲章』に変えてしまえばええ。災いそのものを、うちらの道にするんや」


  

 凪はハッとした。

 

 彼女は天野に向き直り、震える声ではなく、確かな意志を宿した声で指示を出した。

 

「天野、反論のプレスリリースはやめて。代わりに……私たちがこの数日間、この泥の中で何を見て、何に触れたか……その本当の『温度』をそのまま配信して。加工も、編集も、フィルターも一切なしよ!」

 

 凪は、自らのスマートフォンを手に取った。


 そこには、寧々に指摘された空虚な自撮り映像ではない……。


 今、この土地で共に泥を掻き出し、泥水が飲み込んだ住民たちの泥まみれの笑顔と、力強く流れる古い水路の映像が映し出された。

 

 本部が放った……泥にまみれた凪の写真は、冷徹な巨大資本への反旗を翻す……地上の聖女の象徴として、人々の心に火をつけた。

 

 攻撃わざわいという名の強力なエネルギーを、凪たちは真っ向から受け止めるのではなく、角度を変えることで自分たちの推進力へと変換したのだ。


 これこそが『道返玉ちがえしのたま』の真髄だった。


 

 本部の呪いは、逆に『巨大資本が地域文化を壊そうとしている』という決定的な証拠としてブーメランのように跳ね返り、賑羽屋の株価を直撃した。

 

「……道が、見える。塞がれたはずの場所が、一番明るい道になっているわ」

 

 凪の言葉に、寧々は満足げに頷いた。

 

 災厄は去ったのではない。


 凪たちが、自らの手で災厄を希望の道へと書き換えたのだ。



――――――――――――――――――――――――――

 【神宝メモ 07:道返玉ちがえしのたま

「災い」は、視点を変えれば「加速」に変わる。

●本来の伝承:

十種神宝の一つ。這い寄る悪霊や災いを追い返し、進むべき道を守る霊力を持つ玉。

●現代的解釈:因果の逆転とレピュテーション・マネジメント

外部からの攻撃や予期せぬトラブルに対し、真正面から抵抗してエネルギーを浪費するのではなく、その勢い(エネルギー)を逆利用して、自分たちの優位性や物語ストーリーへと昇華させる力。

凪は本部からのネガティブキャンペーンを、隠すべき「汚れ」ではなく、誇るべき「リアルな手触り」として発信することで、逆転の支持を勝ち取りました。

●寧々(ねね)からのアドバイス:

「災いを福に変えるんやないで。災いそのものを、うちらの道にするんや。……あんたを倒そうと飛んできた矢、全部拾って、自分らの城の柱にしてしまえばええやろ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ