エピローグ
数年後、桃華たちが住んでいた村に白い髪に紅い目をした双子の鬼が侵略に来た。
双子の鬼の片方は、桃華と名乗り、凄まじい剣術と身軽さで村中を殲滅し、海の向こうの島、通称「鬼ヶ島」に、おじいさんとおばあさんの首を持ち替えった。
しかし、桃華の眼差しは冷徹でありながらも、どこか悲しみを帯びていた。
かつて自分を育て、守ってくれた者たちに最後の敬意を払うかのように、村の家々や田畑は手を付けず、ただ人々の存在を消していくだけだった。
桜華もその傍らで静かに見守り、指示を出す。
桃華はその指示に従いながら、鬼人団の統率者としての桜華の実力を改めて感じていた。
「これで、私たちは完全に自由になれる――」
桃華はそっと呟いた。
虐げられた過去、孤独、恐怖――すべてを背負った上で、今、彼女は鬼としてこの世界に立っている。
島に戻った二人は、鬼人団の仲間たちとともに新たな日常を築く。
かつての村の記憶は、二人にとって警鐘でもあり、誇りでもあった。
復讐は完了し、征服は始まった――だが、真の戦いはまだこれからである。
夕陽に染まる鬼ヶ島の海を見下ろし、桃華は姉と視線を交わした。
小さく笑う桜華。その笑みは、かつての泣いてるだけの赤子ではなく、鬼として、頭領としての覚悟に満ちていた。
そして桃華も、もう迷うことなく、鬼としての生を選んだのだった。