9話:謎の男の忠告
「俺、、もう普通の暮らし出来ねぇかも。」
そう思ったのは昨日の出来事が原因である。適当に模擬戦をするつもりだったのだが、力加減が分からず、相手の高級そうな剣を折ってしまったのだ。
そして今、逃げた俺は昨日ゴブリンの森、通称ゴブモリに作ったかまくら付近に更に適当な穴をまた掘り、簡易的な家を作って一晩を過ごした。
「腹減ったなぁ、、」
昨日の夜から何も食べていない。神体だからお腹がすかないと思っていたのだがそんなことは無いようだ。簡単に説明すると、神体でも皮膚細胞は入れ替わるっぽい。それに必要な栄養は取らなきゃならないのだ。
「あーどうしよ」
山だからキノコとか薬草とか山菜は見つかるけど火の起こし方なんて分かりやしないしなぁ。
「あの、ここに住んで居らっしゃるのですか?」
「うんそうだけど、、、、、、?、、、」
、、ってえ?今話しかけられた?人に?
横を見居てみると全身黒ずくめの明らかにおかしい格好の奴が隣にいた。
「うぇっ!?だ、誰!?に、に逃げろぉぉ!!」
「待ってください!逃げないでください!魔物じゃ無いです!人間です!」
「お前、俺が剣を折ったのを知ってて言ってるのかそれは!!」
「いやそんなこと知りませんよ!」
「あそうなのか。ならいいわ」
「えぇ?」
なーんだ、俺が剣を折ったこと広まってないのか。
丸太に腰を掛け直すと黒ずくめの男が俺に問いかけた
「あの、ここで暮らしてるんですか?」
「いいや、暮らし始めたんだよ」
「どうして?」
「いやぁ、さっき言った通りだよ。剣を折っちまってね」
俺は昨日の出来事を軽くこの男に話す。
「そんなに強力なんですか?あなたは」
「そんなことは無いさ、相手の剣が脆かったのさ」
もう話してしまった以上これ以外言い訳が思いつかん。
「それは不運ですね。あの、良ければ私の話、聞いてくれますか?」
「幸せの壺ならもう持ってるぞ」
「あいや、それもそれで気になるんですけど違います。」
「私、気づいたらこの森居たんです。だから、出口が分からなくて、ここが何処なのかも、、」
「転生者!?」
「なんですかそれ、幸せの壺といい転生といい、何かここの街では信仰するものがあるんですか?」
「あ、いやそんなことはないさ。冗談ってやつだよ」
期待したがやはり転生者はこの世界には居ないのかな。
「そうですか。ところで貴方様は転移というものはご存知ですか?転生を知っているのならもしかしたらと思ったんですが。」
「転移か?まあ、見たことは無いけど聞いたことはあるかもな」
前世でやっていたゲームとかでなら見たことあるけれど、迂闊に知ってるって言うとまたやばくなりそうなので濁しておく。
「そうですか。実は私転移して来たらしくてですね。原因が、このゴブリンの森の奥にある王都なんですよね。」
「なんだそれ。王都は転移が使えるのか」
「いいえ違います。そんなものは1度たりとも見たことがありませんでした。」
んーどういうことだってばよ
「恐らくですが、私自身が被験者として使われ実験としてこの地に来たのではないのかと推測します。私は王都の奴隷だったのですが、ある日突然目隠しで運ばれ、気づいた時にはこの森に居ました。」
「奴隷なの?!」
やっべ俺過去に奴隷だったとか適当なウソばら撒いて言ってたけどガチモンの奴隷に出会ってしまったよ。
「いえ、そこはお気になさらず。そして本題なのですが、」
「うん」
「この森でスタンピードが起きます。そして、そのスタンピードは王都の何者かが意図的に起こそうとしているのです。」
「それって結構ヤバくない?」
「はい。ですから私はこの街のギルドに報告に行かなければならないのですよ。」
「えっと、、普通のスタンピードとは具体的に何が違うんだ?」
「スタンピードは基本的に周期的に起こる魔物達の暴走なんですが今回のような人為的な場合、契約魔法で魔物を操る。というのが一般的です。魔物を大量に操るにはもちろん膨大な魔力が必要なんです。しかし転移を利用すれば契約魔法をせずとも魔物を集められます。よって準備に必要な魔力量も少なくなります。つまり、、」
「やべえって訳だな?」
「はい」
「でも、スタンピードならもう起こるの知ってるぞ。現にここの森、魔物いないだろ?」
「いえ、それはスタンピードではなく、貴方から出る魔力が原因です。」
「ん?何だそれ」
「あなた、魔力が垂れ流れていますよ。普通の人なら注意しないと気づきませんが、魔力を感じて獲物を探す魔物達には上位の存在だとバレバレです。そんなに魔力を垂れ流していたら周囲の魔物が逃げるのも当然ですよ。」
「ん、じゃあ普通のスタンピードが起こるっていうのは、、」
「勘違いです。」
マジかよ、
「魔力っていっても抑えられるもんなのか?」
「あなたなら余裕でしょうに。」
「いやいや、そんなことなーー」
《魔力を制御します...成功しました》
そうだったわこんなヤツ居たわ
「これで大丈夫か?」
「はい。完璧です。」
「ところで、、えっと君、名前は何かね」
「名乗る名などありません。」
「いやそうは言ってもね?」
「奴隷だったので」
なんか、引っ掛かるな。
「お前、、、本当に奴隷か?」
言動が何となく俺の初日の言い逃れ方に近いというかなんというか。というかその前にこいつ、黒いローブを羽織ってるせいで顔もわかんねぇんだよ。俺の直感が正しければこいつは奴隷ではない。
「、、、お答えすることは出来ません。しかし、あなたなら、、止めることが出来るはずです。では」
次の瞬間、目の前に霧が舞う。
霧が晴れる頃に彼の姿は無かった。
何者なんだ?あいつは。これも迷惑龍が起こしたんじゃねえよな?
スタンピードを俺が止めるってこと?バカ言うなよ
俺が動物を殺生するのは無理だって。
《生物に対して抱く感情を無効化しますか?》
なんだよそのクソ怖いの!いいえだよ!いいえ!却下に決まってる!
それで人殺しになった場合凄いことになりそうだよホント。
カサっ、、、ゴソゴソ、、ムシャムシャ、
いやー、ホントにどうしよう。スタンピード、、ねぇ、俺魔物に会ったの最初のウルフくらいなんですけど。
ガサガサ、、、ブチッ、、ムシャッ、ムシャッ、、
なんか、、さっきから目の前の木の裏で音するんですけど。
誰かいるのか?もしかしてあの俺が剣を折った紳士剣士が根に持って暗殺に来たとか?
そろーり回って見てみよう、そっとだよ、そぉーっと、、
恐る恐る木の裏を見ると、【ドラゴンの巣】で見た顔つきが屈んでキノコを貪っていた。
そう、オークだ。
ウルフしかあったことないから魔物に会うのに慣れてないと思った矢先これですか、、
「お前さ、なんでチュートリアルみたいな感覚で居るんだよ」
「ングァ?」
「うん、そうだよな、そのキノコ美味いんだよな。」
「ング、」
「なんか言葉通じてない?これ」
俺の言葉を理解しているかのようなタイミングで頷いて、なんならそのキノコ俺に差し出してきてるんだけど。
《解:この世界に言語を適用させている為、当然です。》
え?それって普通に魔物とか動物にも通用すんの?マジ?
「えっと、そうだな。俺は殺さないで居てくれるか?」
「モトカラ、ソノツモリハナイ」
「オソワレタラ、オソウ、コトバワカルヤツ、オソワナイ」
「喋った?!」
いや気のせいか?
《目が合えば相手の言語を習得出来ます。》
なにそのポ○モン見たいなシステム「目と目があったら言語習得!」ってか?何でもありだなマジで、、、
「スタンピード起こるらしいぜ?近頃」
「シッテイル。アカガミノ、オトコガ、オサ、ツレテイッタ」
「長?」
「ミンナ、ムラニ、スンデル」
「アキラメハ、ツイテイル、シンデモ、クヤシサ、ナイ」
なんか可哀そうだ。それと魔物もやっぱり村で暮らすとかあるんだな。
よし今決めた。スタンピード、俺が片付けてやるよ。絶対に
「スタンピードについて、何か知ってることはないか?」
「アカガミノ、オトコ、アシタ、クル」
「そいつが元凶なんだな?」
「タブン。ミンナ、ソウイッテル」
よし、今日も山に泊まり込みだな。というか街に戻ってもどうせ犯罪者扱いで居場所は無いんですけどね。




