9・ハンターと変態は紙一重
何故不死身と呼ばれてたのかと言うと
ジールは金属をも溶かすほどの高温である火山の噴火口や深海の常人ではとても耐えれない程の深い海溝の水圧など、またS級のドラゴンそれも最上位である神龍に一つだけある『神鱗』と呼ばれる七色に輝く鱗の採取の際でもほぼ無傷で生還していたことからの所以である
・・・しかし少し変わった所もあり『ヴァンパイアキングの揉み上げ』や『ミスリルゴーレムのつけまつ毛』など、変わったモノの採取もしており巷では『変態ジール』とも呼ばれていた
その変態としてのプライドもあり「俺ぁハンターだ!」と言い切るのもやはり必然と言えるのかもしれない・・・
その当人『変態ジール』はと言うと
「よし、とりあえずこれで頼まれたものは全部終了か」
仕事が早いのは流石である
「おっ!?アレは確か『えのき茸のうなじ』じゃねぇか!アレは蒸して食べると美味いんだよなぁウヒヒヒ」
・・・変態なところも流石である
ともあれ依頼品の採取が終わり、一息ついていた所に目に付いた珍味。ふと気が付けば丁度日が昇り、少々腹が空いてきている
昼には少し早いが、と思いながらエリーが作ってくれた弁当を準備しながらえのき茸のうなじも採取していく
「おっ!こいつは結構良品質のうなじじゃねぇか。こりゃ少しリンにも持って帰ってやらねぇとな」
そう言いご機嫌に鼻歌を歌いながら着々と採取を進める・・・と
「グルルルル・・・」
「ん?何か聞こえたか?」
採取に集中していたジールに何か獣の唸り声のようなものが聞こえた気がした
そしてふとその声がしたであろう方向に目を向ける
「グルルルル・・・」
そこには全身銀色の美しい体毛に包まれた大きな狼が居た
鼻息も荒く己の縄張りを侵された、とジールの事を今にも飛び掛かりそうなギラついた眼で睨んでいる
「・・・何だ気のせいか」
しかしそこは変態ジール。めんどくせ、と言いながら見なかった事にし再び採取を進め始めた・・・が
「グルワァアアアアア!」
どうやら世の中そうは甘くはないみたいだ
大きな咆哮をあげ目にも止まらぬ速さで一気にジールへと距離を詰める銀狼
そしてその勢いのまま鋭い牙を突き立ててくる
それに対し、少しの防御も間に合わないジールは己の首筋にその牙が突き刺さっていくのを受け入れるしかない
そしてその牙は深く深く食い込み、大きな花弁のような真っ赤な血を咲かせる
はずだった
「よーし、こんなもんかな。後はこれをしっかり蒸してっと。おっとリンの分もちゃんと残しておかねぇとな」




