87・名産品再び
「ちっ・・・無駄な時間と出費だったな」
老人の所からさっさと退散したジール。欲しい情報は得たが、それはジールにとって思ったより不必要な情報だった。だがハンターを長くやってると良くあることであり、まだ偽の情報を掴まされるよりかはマシだろう
そう思うがあの銘酒を手放したのは少し勿体なかったか・・・まぁまた手に入れればいいだけの事だ
「しかし本当に一か月近く経ってるんだな・・・こりゃ大分エリーに絞られるな」
だが老人から得た情報は全てが無意味という訳では無く、タルタロスから聞いた通り本当に自分が原始の涙の中に約一か月ほど漂っていた事が信憑性を増した。約束の一週間はとうに過ぎており、帰ったらアノ般若のごときエリーが待ち構えているのは火を見るよりも明らかだ
「参ったな・・・このまま帰ってもいいが・・・いや、待てよ」
帰った時に想像できる自分の悲惨な光景を想像しブルッと身震いするジールだが、その時脳内にキラリと名案が閃いた
「そうか、今祭りをやってるってさっきのジジイは言ってたな・・・よしこの手で行くか」
何か閃いたジールはニヤリとほくそ笑むと帰り道ではなく、町の方へと歩き出したのだ
・・・
「へぇ、結構賑やかにやってんだな」
港から町の方へ歩いて数分、ジールは町の中心部辺りに立っていた。勇者御一行とはいかないが、そのパーティーの一員でさらにこの町の出身ときたもんだ。そりゃあ町をあげて祭りでもするか
町の至る所に出店が出店しており、人々も所狭しと集まって盛大に騒いでいる。右を見れば音楽隊に合わせて踊りだす者も居れば手拍子でそれを囃し立てる者もいる。左を見ればおそらく噂の魔法使いであろう、その似顔絵などのオリジナル商品が飛ぶように売れている
「・・・なるほど、人気になるのも分かるな」
ジールも気になりヒョッコっと後ろから覗いて見た。なるほど、確かに、件の魔法使いは女か。それもかなり美人だ。これがむさ苦しい爺だったらここまでの人気は出ないだろう・・・しかし当の本人は恥ずかしくないのか?自分の似顔絵が自分の町で売られてるんだぞ?でもそうか、本人は知らないのかもしれないな・・・シャルの時も同じような事があったっけ
「まぁ俺には関係ないか」
過去の事を少しだけ思い出したが、今はそれよりも、だ
「さぁて、何を買って帰るかな・・・あの二人が納得するもんじゃないといけないし・・・」
そう、ジールが思いついたのは『貢物大作戦』だ
「う~ん、リンは兎も角、エリーは俺が今まで色んな秘宝を見せてきたからなぁ・・・少々の物じゃ納得してくれそうも無いし」
女性はとりあえず贈り物だ。そう安易な結論に至ったジール、しかし思いついたものの何を買っていいか分からない。宝石のような光物がいいのか、それとも舌がとろける様な名産品がいいのか・・・
「う~~~~~~ん・・・とりあえず露店を少し見て回ってみるか」
あの二人を納得させる様な貢物・・・いやお土産
何がいいか、何がいいのか。露店を見ながらうんうんと頭を捻り、アレでもないコレでもないと頭を抱えるジール
「ん~~~~、考えても分からねぇな・・・よしっ、とりあえず」
しばらく祭りの中を歩いたが特にこれと言った物も見つからず、一息入れる為にジールは一つの出店に歩いて行った
「おい親父!生ナマコの生足一つ!」
「へい!ってまたアンタか!」
ジールが頼んだのは依然と同じ生ナマコの生足、そしてその時大人買いしたこともあり店の店主もジールの事を良く覚えていた
「ん~コリコリやっぱりこの食感コリコリこの味付けコリコリここに来たらコリコリこれを喰わないと損だな」
コリコリ煩いのも以前と同様。しかしジールはただ単にこれを食べに来ただけではなく考えがあっての事だった
「コリコリコリコリ・・・んっぱぁ~。あ~相変わらずいい腕してるな親父!今日もしっかり味が染み込んで美味かったぜ」
「へへ、毎度!そう言われちまうと料理人冥利に尽きるってもんだ」
とりあえず店主を持ち上げておく。いや味は良いのは確かなのだが如何せん見た目が・・・この町の名物でもあるがこの祭りでもあまり売れていないみたいだ
「ところでよ親父、この前来た時も今日も祭をりやってるけどこの町の住人は祭りが好きなのか?」
祭りが開催されている理由は知っているが、とりあえず聞きたい事の為に惚けておく
「何だい知らないのかい?今はな、何と勇者と一緒にあの魔王を討伐したコーネリアちゃんが帰ってきてるんだぜ!」
知ってる。いや、名前までは知らなかったが凱旋して来てるのは知ってる。だが聞きたい事は今からが本題だ




