84・お茶ぐらい飲んでけよ
「・・・おい、今何て言った?」
タルタロスの言葉を聞いてピタリと動きを止めるジール。聞き間違いか?いやそうであって欲しい
「え?だからぁ、少し瘦せちゃったって。どう?前より体が引き締まったでしょぉん」
「いや違う意味で引き締まったよ。ってそうじゃねぇよ!その前だよ、その前!何日経ったって!?」
タルタロスのスタイルなんて正直どうでもいい。それよりも、だ
「えぇっとぉん、一か月食事が喉を通らなかったって・・・」
「一か月ぅ!!?」
聞き間違えじゃなかった。何とジールは原始の涙の中に一か月も漂っていたのだ。体感ではせめて数時間程度だと思ったが・・・まさか一か月とは。これはヤバい、エリーに殺される
「おいおいマズいじゃねぇか!早く帰らねぇと!ククルちゃん、帰りはどうやって帰るんだったっけ!?確か来た時はピンクの珊瑚が目印だったが、今度はどうすればいいんだ!?なぁ教えてくれ!」
「落ち着けカス」
「おぅふっ!!?」
グサリとククルのトライデントがジールのケツに刺さった
「早く帰りてぇのは分かりやがりますが、まずはタルタロス様にお礼を言ったらどうなんでやがりますか?そのお陰でオメェは目的を達成できたんでしょうが。それにタルタロス様が食事も喉を通らなかったってのは本当でやがります。だがら人魚姫の涙の管理もまともに出来て無かったんですよ、ジール様、ここに帰って来た時に呼吸が出来なかったでやがりましょう?それだけオメェの事を心配してたんでやがるんですよ」
ジールのケツに刺さったトライデントをグリグリしながら正論をかますククル。確かに、それはその通りだ。セドリアーナにも言われたがこの二人の助けなくして原始の涙の欠片を手に入れることは出来なかった。それに渋っていたククルを説得してくれたのはタルタロスだ、ククルが言いたい事は身をもって、そしてお尻の痛みをもって良く分かった
しかもそれだけ俺の事を心配してたのか・・・通りで息が出来なかった訳だ。筋肉まみれじゃなかったら惚れてるな
「わ、分かった!確かにククルの言う通りだ!分かったからまずそのトライデントを抜いてくれ!」
「ちっ、分かったならいいでやがりますよ」
「おうっ!?」
そう言いながらジールのおケツからスポンッとトライデントを抜く
危うくお尻の穴が二つに増えるところだったぜ・・・そう思うが、すぐに治るにしろ実際穴が二つに増えたのは事実なのだが
「あ~タルタロスにククル、すまねぇ!助かった!お前たちのお陰で目的の物を手に入れることが出来た!本っ当にありがとう!」
ズキズキとお尻の痛みが気になるが今は全力で二人に頭を下げておこう
「あらん?ジールちゃんが素直に俺を言うなんて珍しいわん。うふふ、いいのよん。でもそうねぇ、そんなに感謝を伝えたっかったら今から直ぐにアタシのベッドにでも一緒に」「いや本当に助かりました!ククルさんも本当にありがとうございます!」
「ふん、別にオメェにお礼を言われたくて連れて行った訳じゃねぇです。タルタロス様に頼まれたから仕方なくです」
デレた。タルタロスのいつもの問題発言は置いといて、またククルちゃんがデレた
ここだけ見ると容姿も相まって可愛らしい人魚なのだが・・・その言動と攻撃性を見るとそんな事とてもじゃないが口に出来ない。やはり師匠が師匠なら弟子も弟子か。だが根はいいやつなのは変わりない
そんなことを思いながらジールは二人を見て確かに心からの感謝を伝える
「ふん、さぁ帰りたいんなら案内するでやがりますよ。と言っても来た時と同じ様にピンクの珊瑚に魔力を込めたらいいだけなんですがね。ほら、ここに持って来てやがってますよ」
「え~もう帰っちゃうのん!?せめて一日ぐらいゆっくりしていったらいいじゃないのぉん」
ジールの感謝がちゃんと伝わったのかククルにしては珍しく素直に帰る方法をジールに伝える。そしてジールの前に来た時に見た物と同じようなピンクの珊瑚をスッと差し出した。まさかのピンク珊瑚の出現、そしてそれを驚きの顔で受け取ったジール
「マジか!?ククルちゃん気が利くな!ありがとう!さぁさっそく帰らねぇとな、二人ともありがとな!ちゃんとしたお礼はまた今度ゆっくり来た時にするよ!」
「ふん・・・さっさと帰りやがれです」
気が利くと言われプイッとそっぽ背いたククル。ジールからちゃん付で呼ばれたことをいつもみたいに窘めない。それより心無しか耳の辺りが赤くなっている気がする・・・これは完全にデレている
「えぇ~!本当に帰っちゃうのぉん?・・・まぁ急いでるならしょうがないかぁん。ジールちゃん、今度はゆっくりアタシのベッドで添い寝してねぇん」
タルタロスにしろククルちゃんにしろ色々と突っ込みたい所はあるが今は急いで帰る事にしよう
ジールはククルから受け取ったピンク珊瑚を両手で包み魔力を込めていった。すると珊瑚からここへ来た時と同じ魔法陣が浮かびあがり淡く光り出しジールの全身を包んで行った
「お、あぁ~またこの感覚かぁ・・・二人ともまたな!色々助かったぁぁぁぁ~・・・」
セドリアーナの所からここに戻って来たと思ったらすぐに地上へと帰って行く。余程エリーとの約束を反故にするのが怖いのだろう
ジールの声が少しずつ小さくなっていき光と共にそれが消えた時にはジールの姿も無くなっていた。それを見送ったタルタロスは寂しそうにポツリと呟いた
「あ~あ・・・行っちゃった。寂しいけど、またすぐに会えるかしらん?お礼に来るって行ってたし・・・それまでしっかり体でも磨いておくかしらん」
「それ以上どこを鍛えるんでやがりますか・・・その内、筋肉に埋もれて死んじまいますよ」




