81・石が出ました
「ふふ、少し刺激が強かったかしら。ほら、汚いものが鼻から垂れているわよ。ふふ、原始の涙の欠片ね。それは、ほら、もうアナタが持っているじゃない」
ジールの痴態を見てクスクスと面白そうにほくそ笑んでいるセドリアーナ。その毒舌もここまで行くとある意味その趣味の人達から言ったらかなりのご褒美になるのだろう。だがジールにそんな趣味は無い
それよりセドリアーナが言った事が気になる
「もう持っているって?俺は何も持ってないけど・・・ってうわっ!?何だこりゃ!?」
セドリアーナの言った事の意味が分からず何言ってんだ此奴、と思っていたジールの体の中から光り輝く小さな球体のようなものが出てきた
それはジールの体の中から出てきた後フワフワと少し宙を漂い、そしてポトンとゆっくり地面に落ちた
その球体は地面に落ちた後、光がゆっくりと収まっていき、その後は存在感を知らしめるかのようにキラキラと星屑の様に輝いていた
「・・・」
ジールはそれを黙って見届けた後、腰を屈めて地面に落ちているそれをゆっくりと手に取り拾い上げた
大きさはジールの親指より少し小さい程度、球体と言うよりは涙のようなティアドロップ型と言った方がいいだろう。どちらかと言えば歪で小さな形だが、その存在感が凄い。キラキラと星屑のように光って見えていたそれはよく覗き込むとその宝石の中に一つの大海が流れて存在しているかのように見える
手にしているだけで分かる
これが『原始の涙の欠片』だと
「ふふ、どう?綺麗でしょう。アナタみたいな汚い人間が持つには勿体無い宝石だけど、原始の涙に認められたみたいだから持つ事を許してあげるわ」
その宝石に見入っていたジールに飛んでくる辛辣な言葉。だがそのお陰でジールはハッと我に返る事が出来た
「これが・・・スゲェ。確かに人魚姫の涙とは比べ物にならねぇな・・・俺が見てきた秘宝の中でもダントツかもしれねぇ。これならほかの二つの秘宝の依り代に出来るだろうな」
改めてマジマジと原始の涙の欠片を見つめるジール。今まで数々のお宝を手にしてきたジールだ、目が肥えている為少々の秘宝では驚かないだろう。そのジールが素直に驚嘆し感嘆している
それが意味するところは、つまり手にしている秘宝が余程の物だという事が伺える
「当たり前でしょう。それ一つでこの世の秘宝が全て霞むぐらいの物よ?ふふ、有難く思いなさい。ここに導いてくれたジュリアちゃんとククルちゃんにね?それと私にもっと感謝しなさい」
「あ、ああ。確かに、ありがとう。アンタには感謝している・・・だが気になる事があるんだが?」
確かに、今自分がこうして原始の涙の欠片を手にしていられるのも人魚達の、セドリアーナのお陰なのは間違いない。だから素直に感謝の意を伝えた、だがジールにはどうしてもセドリアーナに聞きたいことがあった
「ふふ、何?今更になって人魚の素晴らしさについて分かったのかしら?」
いやそれはもう充分です。そう言いたいが世話になった手前、その言葉を飲み込みぐっと我慢する
それより、ジールは手にしている原始の涙の欠片に視線を落とし、セドリアーナに尋ねた
「なぁ・・・
何で三つもあるんだ?」
「え?三つ?」
「そう三つ」
「・・・」
「・・・」
二人の間に流れる気まずい沈黙
セドリアーナは最初はこの臭い人間は何を言ってるのかしら、馬鹿なの死ね、と思っていたが・・・確かに三つある。ジールが手にしている一つに、そのまま地面に落ちたままになっているのが二つ
「・・・ジール、アナタそれを何に使うって言ってたかしら?」
「えっ?一応妻と娘の為のアクセサリーを作ろうと思って、神鱗とブルーメタルトパーズの依り代にする為に使わせて貰おうかと思ってる」
セドリアーナの質問にそのまま答えるジール。それを聞いたセドリアーナは悩まし気な顔で思案する
三大神であるセドリアーナでも見た記憶がない。二つならまだしも三つ?確かに、ジールが言う用途であれば二つは必要だろう。だが・・・
思考がある程度落ち着いたセドリアーナはジールに向かって言葉を投げる
「私にも分からないけど、原始の涙は認めた相手が必要だと思った数だけ欠片を渡すの。・・・それでも大体は一つで十分なんだけど、アナタが言ってた使い方なら二つは必要だと思うのは分かるわ。その神鱗とブルーメタルトパーズの二つの秘宝の依り代として使うなら、それに二人分でしょ?それならさすがの原始の涙の欠片でも一つじゃ持たないと思うし・・・と言うか何でアナタみたいな人間がその二つの秘宝を持っているのよ?秘宝の中でも最上位クラスじゃない」




