76・窮地に立ち向かえる理由は人それぞれ
「リン、それよりここから離れるぞ。ここに居たらあの戦いに巻き込まれちまう」
なんとか踏ん張り二人を衝撃波の余波から守ってはいるが、それが強すぎる為ガルスでさえ吹き飛ばされそうになってしまっていた。腹部のダメージも見た目こそ回復しているように見えるが、先程レイカーが言ったようにエリー程上手く回復魔法を行使出来ておらず、一応、命の危機を脱した程度であり深く突き刺さった体に残る倦怠感は拭えていなかった
「ガルスさん・・・離れたいのは私もそうなんだけど・・・ママが、ママが全然動いてくれないの」
エリーの側からずっと離れず背中を抱えるようにして支えていたリン
ガルスが来たことで少し緊張の糸が切れたのかポロポロと目から涙が滴り落ちてしまった。そんなリンを見てガルスは
(うほっ!少女の涙!ご馳走様です!)
と思っていた
そんな変態ロリコン親父だが、いつもなら心のアルバムに大事に保存するのだろうが今はそんな余裕は無いみたいで、リンの涙で興奮した事による非科学的な馬鹿力をもってしても踏ん張っている足がそろそろ限界を迎えそうだ
「エリーが!?ぐっ・・・マジでそろそろ限界だぜ・・・おい!エリー!何とか離れてくれねぇか!?このままじゃ巻き込まれちまうぞ!」
ガルスがそう叫んでいる間にもダノンと魔王の二人の次元を超えた殴り合いが続いている為、周辺の家屋はそれに耐えられず倒壊していき大地は抉れ木々はなぎ倒されている
何とかプルプルと震える足腰に鞭を打ちエリーに向かって呼びかけるが、やはりエリーは全く反応しない。しかしそれも当然と言ったら当然、愛娘のリンが何度呼び掛けても反応が無かったのだ。変態ロリコン親父が声を掛けて反応する訳が無い
「ダメなの・・・ママはあの魔王って人を見た時から震えて動いてくれないの」
「魔王!?ダノン爺とやり合っているのが魔王ってのか!?勇者が倒したんじゃなかったのか・・・?」
しかし本当にそれなら、とガルスは考える
「・・・もしアイツが本当に魔王ってのならエリーがそうなっちまうのも仕方ないかもしれねぇな・・・クソ、ジールの奴は何やってんだよ。こんな時に・・・さっさと帰って来やがれ」
エリーがそうなってしまっている事にガルスは心当たりがあるみたいで、だがそれに気付いた故、どうしようもない事が分かってしまった。現状を打開するために頭に過るのはダノン同様一人の男
だが前述した様に当のジールは未だ深い意識の霧の中、しばらく戻ってくることは叶わないだろう
「クソ・・・ダノン爺も、もう少し周りを考えやがれってんだ。ホントにこのままじゃ・・・」
苦虫を潰したような表情を浮かべ打開できない現状に冷や汗が止まらない
一度レイカーに治して貰った体も衝撃波によって飛んでくる瓦礫でボロボロに傷つき満身創痍。エリーを抱えて移動しようにも絶え間なく飛んでくるそれ等にそれも叶わない。自分一人なら、そう思うがリンの様な少女を見捨てる訳にはいかない、絶対、それは絶対ありえない。少女守る、これ絶対
変態ロリコン紳士ここに有り
だが最早足腰も限界、現状打開不可。こうなれば自分の身を犠牲にして何とかリンを抱えて離れるしかない、あとついでにエリーも
両腕を前に出し防御の体制を取り続けているガルス。それを解いたと同時に一気に後ろの二人に衝撃波や瓦礫が飛んでくるだろう。そうなる前に何とかして二人を抱えてこの場から離れなければならない、自分の身がどうなろうとも
「・・・よし、行くか・・・リン、目ぇ瞑ってろ。すぐ終わるからな」
何だろう、やろうとしている行動は凄く紳士的で男らしいのだが、セリフだけ聞いていると本人の性格もさることながら犯罪案件にしか聞こえない
だがリンはその言葉を素直に聞きエリーの背中を支えつつもガルスに言われた通りギュッと目を瞑った
「ぐふふ・・・おっとイカンイカン。今はそれどころじゃねぇんだった・・・よし!行くぞ!せぇの!!」
チラッと己の欲望が出て来そうになった変態だが、それを何とか抑え、掛け声とともに防御に回していた両腕を解き一気に後ろの二人に駆け寄り両脇に二人を抱えその場から立ち去ろうとした
「よしっ!・・・なっ!?足が!?ぐぉお!?」
だがずっとその場に踏みとどまり続けた足が震えて思うように動かない。二人を両脇に抱えたまではいいがその勢いのまま地面に倒れてしまった




