75・漢達の語り合い
「ぐっ・・・貴様ただの人間ではないな」
グチャグチャと肉片になったアンデットの群れの中から這い出てくる魔王
殴り飛ばされた頬は赤く腫れ口からは血が滴り落ちている。だがそれだけだ
ダノンがあれ程のスピードと力で殴りつけたにも拘らず魔王のダメージは如何ほどにも無いように見える
ならダノンの攻撃は見せかけで大した事無かったのか?否、それは違うだろう。何故ならその衝撃で飛び散ったアンデット達を含め魔王が居た辺りは大きく地面が陥没していたからだ
ダノンの攻撃が弱かったのではない、魔王の肉体が硬過ぎるのだ。その証拠に殴りつけたダノンの拳に血が滲んでいる
脳のリミッターを外して殴りつけたダノンの方にもダメージが残っていた
「ふぁっふぁっふぁ。さすが魔王よ、その名は伊達では無いという事かの。面白い、ワシの最後を飾るに相応しい相手じゃ」
身体が軋む。視界が赤い
一撃殴っただけでこれか、歳は取りたくないもんじゃのぉ
そう思うダノン。だが己の中の異常種は歓喜に震える。この底が見えない力の差・・・ジール以来かの
嬉しいのぅ、あの時感じた遥かな絶望、その時の借りを返せそうじゃ
ジールに向けることが叶わなかった己の全て、お迎えが来る前に出し切ることが出来そうじゃ
「フン、まあ良かろう。全ての人間どもを根絶やしにする足掛かりに、まず我が自ら貴様から八つ裂きにしてくれる」
口から垂れていた血を拭い取りスッと戦闘態勢に入る魔王
言葉とは裏腹にダノンの力を認めたのか、今まで使っていた禍々しい魔力を纏った魔法ではなく、肉弾戦による殴り合いをもってダノンの力に答えるつもりみたいだ
それをダノンも理解したのかニヤリと笑い魔王を見据える
「ふぁっふぁっふぁ。嬉しいのぅ、魔王よ、貴様とは出会いが違ったら良き好敵手になりえたかもしれんの」
「ふん、ほざけ」
魔王の構えを見て改めてダノンも全てを出し切る為の構えを取った
二人の間に流れる僅かな静寂
聞こえてくるのは風ではためいているジジイのフンドシだけだ
その二人を少し離れていた所で見ていたリンは思った
ダノンじい・・・背中で語るって言ってたけどフンドシのインパクトが強過ぎるよ、と
刹那
二人の姿が消えたと思ったと同時に耳を塞ぐほどの轟音が響き渡った。二人の拳と拳がぶつかり合う
音を置き去りにしたスピードでぶつかり合ったそれは辺りに衝撃波を撒き散らした
「キャッ!?」
その余波はリンたちが居る方まで及びエリー諸共吹き飛ばされそうになってしまう。エリーを庇おうと必死に踏みとどまろうとするリンだがどんなに魔法の才能を持った天才少女と言えど、まだか弱い少女には変わりなく抵抗も空しく吹き飛ばされてしまった
「キャァアア!・・・あれ?」
と思ったが、吹き飛ばされる瞬間二人を支えた人物が居た
「ぐっ・・・大丈夫か?」
「ガルスさん!?怪我は大丈夫なの!?」
それは先程まで魔王によって腹部に大きなダメージを受けて気絶していたガルスだった
抉れていた筈の腹部は傷が塞がっており、だがそれを物語っている様に傷ついていた箇所の衣服はぽっかりと穴が開いて破れていた
「あぁ、何とかな・・・流石に死ぬかと思ったがレイカーさんに治して貰ったんだ」
「え?レイカーさん?」
予想もしなかった名前に首を傾げるリン。そしてガルスが突っ込んで行った民家の方へ視線を送ると瓦礫に身を隠しながらフライパンを片手にリンに手を振っている赤い髪の美しいマダムが居た
「リンちゃ~ん。大丈夫~?うふふ、エリーちゃんみたいに上手には出来なかったけどガルスさんの怪我は私が治しておいたから」
「って事だ。レイカーさんはああ言ってるけど充分動けるぐらいには治して貰ったよ。さすが村の男たちの憧れの大人の女ってやつだ」
まぁ俺の食指は動かねぇけどな
そう思うロリコンガルスだったがそれを口には出さなかった




