73・漢と花とフンドシと
「だって!ママが!ママ!?お願い、逃げないと!このままじゃ・・・!」
ダノンが二人の前に立ちはだかっているお陰で何とか魔王から生み出されている負のオーラを避けれている二人。だがダノンの様子の見る限りあまり長くは持たない様だ
エリーの側に寄り添い必死に呼びかけるリンだが、リンの言葉が届いていないのかエリーの様子は変わることなく頭を抱え震えながら蹲ったまま動かない
「ぐぅ・・・マズいのぅ・・・このような時にジールは何をしておるのじゃ・・・お前さんの大事なものが窮地に立たされていると言うのに」
ジリジリと体が焼かれ落ちているダノン。この状況を打開しようにも体は既に満身創痍
頼みの綱のスポン草も既に使い果たし、助けを期待しようにもこの状況では難しいだろう。吹き飛ばされたガルスも意識を失ってしまったのかピクリとも動かない
「ククク、苦しむがいい。貴様等人間が始めた事だ、身をもって我らの痛みを味わうがいいのだ」
その様子を見て嘲笑うかのように見下す魔王
既に辺り一面は澱んだ魔力に支配されている。ダノンが倒していた筈の魔物達もいつの間にか復活しており魔王の背後に所狭しと連なっていた
ネクロマンシーの行使のよるアンデットの支配。それは間違いなく目の前の男、魔王によるものだった。術者本人がそれを解除するか若しくは本人が死ぬまでアンデットは復活し続ける、それがこの術の恐ろしい所であった
さらにそれが膨大な魔力を持つ魔王なのだ
絶体絶命、もはや打つ手無し。よもやこれまでか、そう思ったダノン
「・・・最後に一花咲かせるとするかの。リン、ワシの背中をよく見ておれ。ジールも言っておってじゃろ、男は・・・漢は背中で語るものじゃ、と」
覚悟を決めた
独り、漢舞い散る満開の花
良き人生じゃった
思う
ワシのようなどうしようもないタダのジジイが晩年、この村で穏やかに過ごせた事を
思う
過去過ぎ去って往く人生で今が一番幸せじゃったと
それも認めたくはないが、ジールよ。お主のお陰じゃ
その礼としてせめてお主の大切なものを守ってみせよう
ワシの命を懸けて
「いくぞ、魔王よ。ワシの全身全霊の最後の生き様!見せてくれよう!」
漢ダノン ここに有り
生命力を燃やし全身に行き渡らせる。魔力がほとんど無いダノンが持つ正真正銘最後の手段
それは命を燃やしてそれを力に変える事。一時の力を得るためにダノンは文字通り命を懸けたのだ
全身が血の様に真っ赤に染まる。ダノンの体全体から湯気が立ち込めその膨大な熱量によって体が歪んで見える
命の鼓動をそのバカげた筋肉量で無理矢理押し出す。そんな事をしたら当然体は耐えれるはずも無く、目から鼻から口から、全身から血が噴き出す
自慢の真っ白だったフンドシも自分の血でさらに真っ赤に染まり熱気によってユラユラと靡いていた
「ぬぅううううう・・・ふぅ。・・・リンよ、ジールに宜しく言っておいてくれ。そしてワシの墓にはスポン草をたっぷり供えてくれとな!」
ダノンはそう言い放つや否や、目にも止まらぬ勢いで飛び出した
その踏み出した勢いでダノンが立っていた大地は衝撃で窪み、辺りに空気の衝撃波が巻き起こる
「キャッ!?」
後ろに居たリンはその衝撃波によって吹き飛ばされそうになるがエリーを守る為、なんとかその場に踏みとどまった
何が起こったのか理解出来ていないリン。ただ理解出来たのは目の前に居たダノンじいの全身から血が噴き出し体が大きく膨らんで湯気が出ていた。そして、自慢のフンドシがパンッパンになってはち切れそうだった、それぐらいだった
そしてダノンが過ぎ去った大地には真っ赤な血の花弁が咲き誇っていた




