65・畢竟ーヒッキョウ
ジールの意識を囲む様々な情景
自分自身の生きてきた一コマを描いているような追憶のアルバム
既に形を保っていない己自身を示す様に緩やかにジールを囲んでいる
それをジールは一つ一つ曖昧な意識の中眺めていった
アレは俺が生まれた時か・・・
覚えている
異常過ぎる魔力量で生まれて直ぐに捨てられたんだ
はは・・・
悪魔の子って言われてたっけ
よく生きてたな俺・・・
・・・
あ、アレは・・・シャルか
若いな・・・もうどのぐらい前だ
相変わらず何て格好してんだ
よく二人で魔物を蹴散らしに行ってた頃だ
・・・
アレは四聖獣か・・・
何とか使役したっけ
結局アイツ等が居ないと神龍は倒せなかったよな
一つ一つを懐かしむように大事に見ていく
幼少期に何でもやらないと生きていけなかった頃
少年になり生きていく術を身に付けだした頃
青年になり様々な出会いがあった頃
・・・
あ・・・
あれは・・・
その中で他の情景より一際赤く明るい情景があった
それに気付いたジールは静かに漂いながらその情景に近づいて行った
・・・
あれは
ぐっ!
頭が!アレは・・・
ジールが目にした一つの情景
その中は真っ赤に燃えあがる炎の中に倒れる一人の少年
それを抱いているのは・・・自分
その周りには数多くの小さい子供達であった黒い塊
・・・
カイト・・・
止めてくれ
見せないでくれ
お願いだ
・・・
ジールの思いを他所にそれに似た情景がジールの周りを次々に囲み始めた
黒く燃え上がり崩れ落ちた教会のような建物
必死に逃げる子供達
それを笑いながら貪る獣のような魔物達
そして
・・・
エリー・・・
お願いだ
子供達を
・・・
全身が傷だらけになりながらも必死に守ろうとする一人の女性
・・・
やめてくれ
やめてくれ!
もう沢山だ!!
これ以上人が死ぬのを見たくない!!
お願いだ!
・・・
ズキズキと痛む溶けてしまったはずの頭を押さえ蹲るジール
必死に目を背けその情景を見ないように固く目を瞑るがそれは直接頭に入り込んで行った
・・・
やめてくれぇえええ!!
・・・
脳内に迫りくる情景に悲鳴を上げ嗚咽を漏らす
見たくない 観たくない 視たくない
過去の思い出したくない凄惨な情景
だが一つ一つその全てが焼き付いて離れない
何度も何度も繰り返す様にジールの中を流れて行った
・・・
繰り返される情景にジールの心は自我が保てなくなり壊れていった
・・・
・・・
蹲り動かなくなってしばらく
ジールはもう考えることを止めた
ただ虚ろな視線で小さく蹲りそこに漂っていた
いつの間にかジールを囲んでいた真っ赤な情景も消え去り辺り一面真っ白な霧の空間が戻っていた
しばらくはそこに何もない静かな時間が流れていた
数時間か それとも数秒か 感覚のない時間がしばらく経った頃 そこにフワリと白く輝く一つの情景がジールの元に近寄って行った
それは虚ろな視線をしたままのジールの側をクルクルと回った後 ジールの頭の中に飛び込んだ
・・・
何だ あぁエリーか
もう嫌だ ほっといてくれ
俺の所為で オレの所為なんだ
もうほっといてくれ
ーーージール ジール・ストライダル
うるさい やめてくれ もう嫌なんだ
ーーージール いい加減にしてください そんな貴方なんか見たくありません
ほっといてくれ
ーーージール 貴方と一緒に背負いますから
・・・エリー はは 前にも言われた気がするな
ーーーですから貴方が私を一生守って下さい
・・・そうだ そうだった エリーが俺の呪いを一緒に・・・
ーーーふふ ほら見てジール 呪いなんて関係ないわ 私達にもこんなに可愛い天使が来てくれたわ
リン そうだ 俺にも 俺なんかにも・・・
エリー リン
そうだ 俺は二人に 二人の為に戻らなきゃ
・・・
ジールがそう思った時白い光の塊が一カ所に集まり始め、一つの形を形成していく
それは人の姿を創り出し、サナギから出てくる蝶の様に一気に孵化した
光が弾け飛んだその後、何も無かった霧の空間に色を持った形が現れていた
その形はその中で自らの音を出した
「・・・俺は、オレはジールだ。
ジール・ストライダルだ!
オッパイが大好きなジール・ストライダルだ!!」
もう台無し




