61・露呈
「と言う訳なのよ。人魚がどれだけ美しい存在か分かったかしら?加齢臭まみれのジール・ストライダル?」
「あ、はい。何となく分かりました。加齢臭臭くてスイマセン」
セドリアーナに長々と人魚について語られていたジール。いつの間にか正座させられていた足が痺れてきたところでようやく講座は終了の鐘が鳴ったようだ
「本当に分かったのかしら?ふふ、どうせその中身が何も入ってなさそうな汚い頭じゃ何も理解できてないでしょうね。いいわ、もう一度最初から説明してあげる」「いえ大丈夫です!ホントに!理解できました!大丈夫ですありがとうございます!」
長時間我慢して聞いていた人魚の素晴らしさ講座が再び開始の鐘を告げる前にジールは慌てて立ち上がりセドリアーナの言葉を遮った
ジール達が居るこの特別な空間は時間の概念が無いとは言え体感として経過する時間はあり、これ以上セドリアーナの講座を長時間聞くには精神が持たなそうだった
「・・・まぁいいわ。今アナタに言ったように人魚には性別とか年齢と言うものが存在しないのよ。ふふ、だからそういう意味では私とジュリアちゃんは同じって訳なのよ。どうせアナタの事だから変な想像でもしたんでしょうけど。ふふ、本当に気持ち悪いわ」
「・・・はい、分かりました。変な勘違いしてスイマセン」
まさに図星で、と言うより勘違いするような言い方をしたのはセドリアーナの方なのだが、それを指摘出来るほどジールのメンタルは強くなかった。何故なら永遠と続く毒舌に少しづつ精神が蝕まれてきたからである
ジールの頬っぺたを突いていたニンフ達は飽きたのかいつの間にかどこかへ行ってしまったようであり、その空間にはのんびりとした空気が流れていた
だがそれもセドリアーナから紡がれた次の言葉により一気に張り詰めた
「まぁだからと言って人魚達も不老不死な訳じゃ無いのだけど。勿論、病気もすれば怪我もするわ。ふふ、アナタがジュリアちゃんを助けた時もいっぱい怪我をしてたでしょ?不老なのは間違いないけど、不死じゃないって事ね。
ジール・ストライダル
アナタと違ってね」
「・・・」
沈黙
そして睥睨
今までと違って突き刺すような視線をセドリアーナに浴びせるジール
それは目の前に居る存在が三大神の一角である事を忘れたかのような程の鋭い視線
「・・・誰から聞いた?タルタロスか?俺はアイツにも言ってねぇけどな」
深く沈むような声
それと同時に本人も自覚無く全身に魔力を行き渡らせ始め、その濃密さに全身が軽く放電している
怒り、激昂、否それとは違う
今までのジールが虚偽であったかのような別人のようなオーラ
それ程セドリアーナが呟いた言葉が彼には響いたのだ
だがそんな全身から滲み出る魔力の奔流も彼女は意に介さず今まで通り、ふふっと微笑んで見せた
「あら?忘れたの?私はこれでもこの大海を治める三大神の一柱のセドリアーナ・マリス・アムピトリヌスよ。アナタが普通の人間じゃないぐらい分かるわよ?色々と気持ち悪いのはしょうがないと諦めてあげるけど、ふふ、その素晴らしいまでの魔力の質と量は私たち神をも凌駕しているかもしれないわね。そこだけは認めてあげるわ。それにその特異体質もね」
なるほど、確かに神ならそのぐらい分かるのか
そう思ったジールはフッと肩の力を抜きそれと同時に巡らせていた魔力を解いた
「そうか・・・まぁ、何だ、その・・・出来ればタルタロス達には言わないでくれると助かる」
先程とは打って変わった様なジールの態度
余程知られては都合が悪いのか、視線を地面に投げ子供の我儘をお願いするようにチラチラとセドリアーナの機嫌を伺う
それを見たセドリアーナは、あらあらと楽しそうに少しジールの方へ虹色の尾ひれを動かしながらキラキラと粒子の轍を残しながら近寄って行った




