59・お化けカボチャのその後Ⅱ
冷や汗ダラダラ脇汗ダラダラのガルスを不思議そうに見つめるリン
少し加齢臭が漂ってくることに少し顔をしかめるが、ふと別の何かを思い出したようにポンっと手を打ちガルスに尋ねた
「あ、そう言えば話は変わるんだけど、ガルスさんは勇者って人について何か知ってる?」
「勇者?今そこら中で噂になってる勇者の事か?」
「噂になってるかどうかは良く分かんないけどたぶんそれ」
世の中の事に全く興味が無いリンは今まさに勇者が魔王を倒さんとしている事なんて知る由もなく、ただシャルに聞いた事がずっと頭に引っかかっていた。自分の父であるジールに聞いても怖い顔をするだけで答えてくれず、エリーに聞いても話を逸らされる為、何も関係なさそうなそして何も考えてなさそうなガルスに尋ねてみる事にしたのである
ガルスにとっては全く失礼なリンの思惑である
だがガルスと言えど少しは世の中の事を知っている様であり、リンの言葉を聞いて少し呆れ顔になっていた
「おいおい、リンも少しは世間ってのを知ってた方がいいと思うぞ。確かあと数日かそこらで勇者ってのが魔王を倒すって話らしいぞ。お陰で今街の方じゃあその話題で持ちきりだぜ。誰に声を掛けても『勇者様万歳!』ってな。全く・・・まぁ俺には何の関係もない話だがな」
ガッハッハと腰に手を当てて笑いながら言うガルスはやっぱりどうにも世間の事はどうでもいいみたいだ
「なんなのよぅ、パパみたいな笑い方して・・・でもその勇者さんって人が魔王さんを倒して何か良い事があるの?私、別に魔王さんが居ても何かされた事とかないよ?」
ガルスの言葉を聞いて首をコテンと傾げながら不思議そうに問いかけるリン
普通に成人男性ならその仕草も可愛い少女として認識されるだけだが、なんせ目の前にいる男は生粋のロリコン親父ガルスだ、危ない事この上ない。だがさすがに親友の娘に食指が動く訳にもいかず、そして鬼の視線でガルスを牽制しているエリーが睨んでいた為、危なくもその一歩を踏み出さずに済んでいた
「ん、ん~・・・まぁ確かにな。でもリンは何もされていないかもしれないが、中には家族や親友を魔族に殺されたヤツだって居るんじゃねぇのか?そんな奴等からすれば魔族の統治者である魔王はやっぱり敵討になるんじゃねぇのかな。リンだってジールやエリーに何かあったらその相手が憎いだろ?」
一呼吸おいてガルスは続ける
「で、しかもだ。その相手が自分じゃどうしようもない歯が立たない相手だったら、それを違うやつが代わりに倒してくれるんだ。そりゃ『勇者様』って呼びたく気持ちも分からんでもないがな」
う~ん、と悩みながら自分の考えをリンに告げるガルス
それを聞き同じくう~ん、と首を捻りながらリンは答えた
「ん~、それは私だってパパやママに何かあったらって・・・考えたくもないけど、前にパパが言ってたんだけど『仇討は負の連鎖だ、いくら相手が憎くても殺す事はするな。負の連鎖は断ち切らないといけない』って。難しくて良く分かんないけどパパにしちゃ珍しく真剣だったから、だから私はパパの言った事を守ろうと思ったんだけど・・・実際はよく分かんない」
年頃のレディには少し難しい話であり理解するにはもう少しオトナにならねばならないのだろう。しかし自分の父の言った言葉をしっかりと覚えているところは褒めてあげなければならない
そんなリンの言葉を聞いたガルスは一瞬ポカーンと呆気にとられたような顔をするがすぐに我に返り、再び大きな声で笑い出した
「ガッハッハ!ジールの奴も言いやがる!そうか、そんな事言ってやがったか!ガッハッハ!まぁ確かにリンにはまだ少し難しわな!まぁ心配すんな、ジールはそう簡単にはくたばらねぇだろうしエリーもジールが何があっても守るだろうからリンは敵討なんか心配しなくてもいいんじゃねぇのか?」
「あ~それは言えてるね。何たって変態ジールだもんね。ママに何かあったらどんなに遠くに居ても飛んできそうだもんね」
キャハッと笑いながら人差し指を顎に当ててジールの変態っぷりを思い出すリン。その仕草は幼さを残すものの何とも大人びていた
ウフフ、キャハハと笑いあうリンと気持ち悪いガルス
そんな光景を目にした村の人々はこう語っていた
「おい、誰かあのロリコンを早く殺してくれ」と
いつの間にやら空気と化していたエリーはそんな言葉を耳にして
(他人のふり他人のふり)
とレイカー作の料理本を片手に無言を貫き通していた
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