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蓮華草  作者: 山猫
第一章 世界の流れ
57/62

57・好事門を出でず

「お、俺はここに原始の涙ってのを求めて来ました。ここへはタルタロスのとこから変な穴を通ってき来ました・・・口も臭くてスイマセン」


なんだか涙が出てきた止まらない

こんな目も眩むような美女に顔が腐ってるや口が臭いやら何やら・・・男として死にたくなります


「何ですって・・・?原始の涙を?それにタルタロスってジュリアちゃんの事よね?アナタ、人間なのにどうやって来たの?あそこには永劫結界があったはずよ・・・アナタ一体何者なの?ただの気持ち悪いおじ様じゃないって訳なのね」


涙が頬を濡らしているジールは置いといて、ジールの言葉を聞いたセドリアーナは顔付きが一気に変わる

手にしている金色の竪琴をいつでも奏でられるように持ち替えた。武器には見えないが、それでも三大神の一角であるセドリアーナが持っている神器だ。勿論、普通の弦楽器ではないだろう

だがそんなセドリアーナを前にしてジールは頬を濡らしながらアホ面でポリポリと頭を掻いていた


「えいごうけっかい?それは良く分からねぇが、何か凄い渦の穴を通り過ぎて真っ暗な空間をぶち破って抜けたらここに着いたんだが・・・」


もうセドリアーナの毒舌は流すことにしよう、うん、そうしよう。じゃないと精神が持たないし男として悲しくなるから

そう決め込んだジール。無理して使っていた言葉遣いも止めいつも通りの砕けた雰囲気の変態に戻った

しかし結界を力業で抜けてきたジールへのセドリアーナの警戒は解けないまま


「永劫結界を抜けてきた?そんなはずは・・・あそこは人魚しか通れないように、アナタみたいな臭くて気持ち悪くて醜い人間を通さないように私が自ら結界を張っていたのに・・・ここへ来れるのは美しい人魚だけのはずよ。ふふ、アナタみたいなのが居ると海が濁っちゃうわ」


もうボロカス

言い過ぎとちゃうか?

しかし人魚だけって拘るのは何故だろうか・・・もうこの際セドリアーナの毒舌は無視だ。とりあえずタルタロスの事を知っているのなら話は早い


「あ~何だ、その・・・タルタロスから聞いたことないか?昔、人間に助けられたとか何とか・・・」


「ジュリアちゃんから?・・・あ!ひょっとしてアナタがあのジールなの!?ジュリアちゃんから聞いた事あるわ。『男が惚れる男、漢のジール・ストライダル』ってね。ふふ、アナタがそうだったのね」


ジールの男っぷりを聞いて一気に警戒が解けるセドリアーナ

2人の様子を遠巻きに見て離れていたニンフ達も恐る恐る側に戻ってきた


「誰が男が惚れる漢じゃ!あんの筋肉魚が!今度会ったらぶっ飛ばしてやる!」


まさかの二つ名に激昂する。自分が居ないとこで変態の名前が広がっている事に憤りを隠せない

だが変態ジールよりはよっぽどマシな気もするが・・・

プンプンと怒っているジールとは対照的に納得がいったようにウンウンと頷いているセドリアーナ


「そうなのね~、アナタがあのジールなのね。それなら永劫結界を抜けてきたのも頷けるわ。あの人魚姫になったジュリアちゃんが手放しで褒めていたもの」


「きぃー!あんのムキムキ半魚人め!今度あったら三枚おろしにしてやる!」


拳を力いっぱい握りしめタルタロスの顔を思い出し怒りに燃えるジール。そんなプリプリのジールを戻ってきたニンフ達は不思議そうに頬っぺたをツンツンと突いている


「さっきから筋肉筋肉って、ジュリアちゃんが可哀そうじゃない。心が乙女ならちゃんと女性扱いしてあげないと可哀そうよ?ふふ、ただでさえアナタは色々と気持ち悪いのに、冗談は顔だけにしてくれないかしら?」


すっかり警戒心と解いたのか、ジールに向けていた金色の弦楽器を下におろしながらジールに少し近寄っていくセドリアーナ。動く度にキラキラとオーラのような粒子が周りに揺らめいている

その美貌は相変わらずで少し近づいただけでも思わず口元が緩んでしまうジールであった。だがそれを隠す様にフンっとそっぽを向いて腕を組みなるべくセドリアーナの方を見ないようにした


「タルタロスが乙女だって?はん!アイツが昔死にかけてたとこをたまたま助けただけじゃねぇか。それだけで俺に惚れることも無いだろうしな。アイツが男と分かってたらそのままにしてたかもしれねぇし、まぁアンタみたいな目も眩むような綺麗な人魚だったら喜んで助けただろうけどな!」


ガッハッハ、と腰に手を当てて馬鹿笑いをし始めたジール

それを聞きセドリアーナは「ふ~ん」と意味ありげに微笑み虹色の尾ひれをゆっくり靡かせジールに近寄って行った

そしてジールの眼前まで近寄り耳に口を近づけてそっと囁いた


「ふふ、私だったら喜んで助けてくれたの?」


セドリアーナの吐息が耳にかかり思わず前かがみになってしまう。鼻息も荒くなり鼻血が飛び出てくるのも時間の問題だ

こんな美女がこんな近くに・・・ジールは今まで散々言われた毒舌も忘れセドリアーナの次の言葉を高鳴る胸を押さえ今か今かと期待してしまっていた

が、そのセドリアーナのコーラルレッドの唇が次に紡いだ言葉は予想を遥かに超えていた



「私もジュリアちゃんと『同じ』なのに?」



「なっ!!?ん何ぃぃぃぃいいいい!!??」

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