56・綺麗な薔薇には棘がある
ジールが顔を上げて視界の中に飛び込んできた光景は辺り一面ライトブルーに包まれた海底の色
ジュリアたちが居た海底神殿の場所も美しかったが、ここはそれよりさらに上、ライトブルーの色に含めキラキラと幻想的に海が輝いている
そしてその色の中美しく輝く色とりどりの魚たちが泳いでおり、さらに辺りを見回せばパールであろう宝石を携えた精霊のようなニンフが踊りながら泳いでいる。それに含めコーラルレッドを始めとする数々のサンゴ礁も映えるように佇んでおりそれが幻想的な景色に拍車を掛けていた
美しいというよりは神秘的
その桃源郷のような景色にジールも目を奪われポカーンとアホ面で突っ立っていた
「あら?久しぶりのお客様ね」
そこにハープのような美しい音色と聞き間違えるかのような透き通った清らかな声が響いた
アホ面をかましていたジールはふと我に返り慌てて口から垂れていた涎を拭き取り声のする方へ振り向いた
「こんにちは、それともこんばんはかしら?ごめんなさいね、ここには時間の概念と言うものが無いものだから・・・ところであなたはどなた?」
ジールが振り向いた先には、この幻想的な景色と同じ光るライトブルーの髪を腰辺りまでゆらゆらとなびかせる美しい女性がいた。パールのような大きくてつぶらな瞳、均整の取れた真っすぐな鼻、コーラルレッドの淡い唇。さらに彫刻とも思える完ぺきなプロポーションに片手には竪琴であろう金色の弦楽器・・・そして下半身は虹色のような尾ひれを優雅に揺らしている人魚が佇んでいた
「・・・」
周りの幻想的な景色もそうだが、目の前にいる人魚の美しさはまた別物。美しいや綺麗、可憐などの誉め言葉が霞んでしまう程、その言葉自体が負けてしまっている。そんな人魚を前にしてジールは拭き取ったはずの涎がアホみたいに伸び切って滴り落ちている
「あら?ふふ、どうしたのかしら?ボーっとしちゃって。あ、私の方から先に自己紹介した方がいいかしら?そうね、私の名前はセドリアーナよ。セドリアーナ・マリス・アムピトリヌス、この美しい海を治めている神であり人魚たちの始祖って呼ばれてるわ。よろしくね、不細工なおじ様」
「・・・え、何て?」
伸びきっていた涎が引っ込んだ
幻想的な容姿の美しい人魚から発せられた透き通った声。そこから聞こえたのは自己紹介とまさかの罵倒
「ほら、私も自己紹介したのだからアナタもしてくださる?腐った顔のおじ様?」
聞き間違いじゃないみたいだ
こんなに綺麗な声なのに聞こえてくる内容は自分を乏しめる言葉
勘違いじゃなくてよかった。自分の耳が腐っているのかと思った。あ、腐っているのは私の顔面ですね。どうもスイマセン
「あー・・・俺はジールだ。いや、ジールです。ジール・ストライダルです。ハンターをやっています。腐った顔面でスイマセン」
何か凄く傷ついた・・・傷ついたけど、そうかコイツは、いや、この方はあのククルちゃんが崇拝している神様か。何か凄く納得できます、はい
特にその毒舌が・・・
「へぇ~、ジールって言うのね。ふふ、口も臭いのね。最悪だわ。それで、あなたはここへ何をしに来たの?いえ、そうやってここまで来たの?人間がここに来る方法何て今は失われているはずだけど・・・」
オレ、口も臭いんだ・・・
もう死んだ方がいいのかな




