55・ボイトレ
その結果は言わずとも目視による確認が出来ている様に、ジールの思惑は図らずとも的を得ていたみたいだ
既にひび割れていた空間は修復を終えていたものの結果は上々。この空間から脱出する算段は付いた
「よし、めんどくせぇがやるしかねぇか」
やれやれと肩を竦めながらジールは痛めた喉を押さえ再び喉に魔力を集め出した
しかし先程と同じであっては意味がない。ならばどうするか、簡単な事だ。身体強化を何重にも重ねれば良いだけだ
ジールは思うが実際は簡単な事ではない
何故なら常人であれば身体強化は精々一回、卓越した猛者でも二回までだ。それ以上は筋線維や神経がそれに耐えきれず切れてしまうからだ。要は魔力は重ねられるが体がそれに着いてこれないという訳だ
しかし常識の範囲で収まる変態ジールではない。喉に集めた魔力で描かれた魔法陣は既に何重にも重なり合っている。しかもその大きさを徐々に増して、だ
「・・・よし、こんなもんだろ。ん~ゴホンゴホン、あ~・・・よし」
喉に集めた魔力の出来具合を確認し軽く咳払い
身体強化を込めすぎて喉の辺りから淡い光が漏れ出している
そして先程と同じく軽く深呼吸した後、全力で肺に空気を取り込んでいった
息を吸い続けコメカミに血管が浮き出てピクピクなっている。その顔面も真っ赤に染まり何だかとても残念な顔面になっていくジール
幸いなのは周りが黒に包まれた空間な為、誰もその顔面を見ていない事が唯一の救いである事だ(二回目)
そしてそのピクピクしている血管が切れそうになった頃、自らの中に取り込んだ空気を声と共に一気に吐き出した
「っっ!!!!!!」
もはや声と言っていいのかと疑問に思う程の音。それが人の口から発せられているのが不思議なほどの声量
先程の音より一層激しく、さらに身体強化によりそして連なる魔法陣を介してより振動を響かせていった
ピシピシピシピシ・・・
その振動にとうとう耐えきれなくなったのか修復が終わっていたはずの空間が再び大きくひび割れて行った
そして今度はその亀裂が止まることなく大きく広がり始め、そして
パリーーーン!!
大きなガラス片のような黒い破片を辺り一面に撒き散らし音を立てて砕け散った
「ゴホッ!ガハッゲハッ!」
流石に喉に大きなダメージを受けたのか大きく咳き込むジール。咳き込むたびに軽く吐血をしている事からそれが伺える
「くっ・・・ハァハァ」
喉を押さえながらも何とか喉の治療を早急に行っていく
そして治療が一段落し、しばらく下を俯いたまま膝に手を当て少しの間休息を取る事にした
「ん、ゴホン・・・よし、もう大丈夫か」
喉の治療も含め何重にも重ねた身体強化は流石のジールでも少々堪えたみたいだ。そもそも少々で済んでいる事自体異常なのだが・・・
しばらく休んだ後、ゆっくりと顔を上げて黒に包まれた空間からいつの間にか明るくなっていた辺りの状況を確認する。そしてジールの視界の中に入ってきた光景は・・・
「これは・・・すげぇ」




