52・フォーカス
「はぁはぁ・・・ビビってるジールちゃん可愛いわん・・・」
「ほら、タルタロス様。とっとと帰るでやがりますよ」
「はぁはぁ・・・え?あれん?ジールちゃんはどこに行ったのん?」
「・・・」
ジールとククルがコントを繰り広げている間、ずっとクネクネ悶えていたジュリア
そんなジュリアを見て、はぁっと溜息を吐き無言で来た道を引き返していくククルであった
「あれぇん?ジールちゅわぁん?どこぉん?」
「・・・付き合いきれねぇでやがりますな」
ーーーーー
「ぬぉおおおおお!」
一方、高濃度の魔力の渦の中に投げ出されたジール
その中は予想通り、否、予想以上の魔力の奔流による旋風に包まれていた
方向感覚は既に意味を成しておらず、前後左右どころか風の刃により全身を切り刻まれさらに放電により体の細胞が焼き落ちていく
「こ、こいつは、確かに、ミンチに、なってもおかしく、ねぇな」
渦の中で弄ばれながら声を絞り出すジール、だがその呟きも轟音の中で掻き消されていった
このままでは・・・
死ぬことは無いにしろ意識が持っていかれそうになる
そうなったら気が付いた時にどのぐらい時間が経ってるか分かんねぇな・・・
そう思ったジールは体がボロボロに崩れ落ちながらも目を閉じ魔力を全身に行き渡らせる
とりあえず、そう思い回復に集中し始めた
ジールが魔力を込め始めた途端体が修復されていく・・・が渦の激流によるダメージの方がそれを上回っていた
「くっ・・・!」
何て勢いだ。神龍とやりあった時もここまでの圧力は無かったぜ・・・
確かに常人ならとっくに死んでる。しかしダメージの一つ一つは大きくない
ただその数が、受ける量が尋常ではない
「これは・・・正念場だな」
集中
ここ何年も無かった久しぶりの窮地・・・エリーにボコボコにされる以外の話だが
集中
回復の為に全ての魔力を集める
身体へのダメージや痛みなどはこの際無視だ
集中、集中、集中集中集中集中集中・・・
少しずつ、少しずつだがダメージに回復が追いついていく
よし、このまま、後は耐えるのみ
集中・・・・・・
どのぐらい時間が経っただろう
回復に魔力を集中させてからしばらく経った
体感では数十分とも数時間とも感じた・・・そしてふと体へのダメージが無くなっていることに気付いた
ゆっくり目を開けてみる
「・・・あれ?」
地面に足が付いている
それよりか魔力の渦や放電も全て消え去っていた。そして何より
「息が出来る・・・」
そこは間違いなく水中の中。ジールが飛び込む前に居た海底城では人魚姫の涙の力により『水の中で呼吸出来たら便利だよね』のオリジナル魔法を使わなくても呼吸が出来ていた
そして渦の中では呼吸を気にすることの余裕すら無かった
だが地面に足が付き、ふと思った。そして改めて辺りを見回してみる
「・・・何にもねえな」
地面に足が付いている事は分かる、が真っ暗。暗闇に包まれている、と言った表現よりかは黒い
ただただ黒い
夜の暗さみたいに僅かながらでも星の明かりや民家の明かりがぼんやり見えているとかも一切無く、視界の数センチ先でも見えない、そんな黒。漆黒の闇に染まっている、そんな感じだ




