5・エリー・ストライダル
「しくしくしくしく・・・」
「もぉ~いつまでもメソメソしないでよパパ。いい歳したオジサンが気持ち悪いよ?」
レイカーに薬草を届けた(タルトを食べた)帰り道、自業自得だというのにレイカー特製のアップルタルトを食べ損なったせいで涙が止まらないジール
「だって・・・俺だってレイカーさんのタルト食べたかったんだもん」
「だもんって・・・はぁ~、分かったから!ママへのお土産のタルトを分けてあげるから!それで機嫌直して?」
いつまでも拗ねているジールに対してリンが折れた、と言うよりいつまでもメソメソしているいい歳のオジサン、その気持ち悪さに折れたと言ったほうが正しいだろう
だがそのオジサンはそのリンの言葉を聞いて耳がピクっと動く
「何?・・・よーし!そうと決まれば我が家へ一直線だぁ!」
「あ!もう!待ってよパパ!ちゃんとママに了解貰ってからだからね!?」
「ぬぉおおおおおお~~!タルトちゅわぁぁぁ~~~ん!」
脱兎の如く、砂煙を巻き上げながらあっという間にリンの視界から離れていく。拗ねていたオジサンも一気に機嫌が直ったみたいだ。そんなジールを見てやれやれと肩を竦めて見せるリン
「はぁ、結局パパだってタルトが食べたかったんじゃん。まぁレイカーさんのタルト、美味しいもんね・・・ママのタルトと違って」
リンはそう言いながらブルっと何かを思い出したように身震いし、ジールの後を小走りで追いかけ帰路につくことにした
ーーー
「あの・・・エリーさん?・・・それで、ワタクシのご飯は一体どちらでしょう?」
二人が我が家に着いてから数刻、ジールは何故か再び正座をしていた
その眼前にはエリー様こと、ジールの愛妻であるエリー・ストライダルがジールの前に仁王立ちをしていた
レイカー同様、腰まで伸びた艶のある美しい金色の長髪はリンの母親であることを物語っている
そしてその顔立ちは人形のように美しく整っている・・・が今はその顔が何故か般若のように恐ろしく歪んでいた
「ご飯?そこのテーブルのお皿の上にあるじゃないの?」
「いや・・・あの・・・」
顎でくいっとテーブルの方を見ろと言わんばかりに示すが、そのお皿の上にあるのは何故かお豆1個
「エリーさん・・・あの、お豆ちゃんが1個しか」「あなた・・・聞いたわよ」
「ひっ!?」
地獄の底から響き渡るような声でジールの言葉を遮り語り掛けてくるエリー
背中からは赤いオーラが立ち上っているかのようにその背景が歪んでいる
「なななな何をでしょうか?」
そんな世にも恐ろしい愛妻の姿を見たジールはジワリと軽く股間を湿らしながら震える声を何とか絞り出す
そんな震えるジールを効果音が付きそうなほどの怒りに満ちた視線を投げかけながらエリーは口を開く
「あなた・・・
レイカーさんを襲おうとしたらしいじゃないの?」
「っ!?」
リンんんんーー!?約束が違うじゃねぇかぁあああ!




