42・ギャップ萌え
魔法陣による強い光に目を瞑ったジール。それと若干の浮遊感と体全身を渦に投げ込まれたかのような倦怠感
そしてそれが収まる頃、ジールの体を包み込んでいた魔法陣の光も収まってきた
「ん・・・あ~気持ち悪」
自分の状態の安全が問題ないと判断したのか、薄っすらと目を開け自分の体の状況と周りの景色を確認してみる
「ふぅ・・・何とか無事に着いたな。しかし・・・相変わらずここは変わらねぇな」
視界の中に入るのは目を見張るほどの美しい海底の景色
遥か深海とは思えない明るさで、その色は薄く輝くスカイブルー
そしてその色をさらに鮮やかく彩るように赤やピンクのサンゴ礁、色とりどりの鮮やかな魚達・・・
そして・・・
「ジールちゅわぁあああ~~~ん!!会いたかったわぁ!」
「ぐへぁっ!」
いきなりジールに飛び付いてくる下半身が魚の形をした一人の人魚
「やっぱりジールちゃんじゃない!あはぁん、会いたかったわぁん」
「や、やめろ!くっつくな離れろ」
身体を強張らせながら目の前にいる人魚に対して全身で拒絶感を表す
ジールに飛び付いてきたのはこの未開の地の深海を収める女王、そして人魚たちを治める長
人魚姫と呼ばれる者であった
そしてその人魚の後ろには空気のように静かに佇む別の人魚が一人・・・ジールが道標にしていた珊瑚と同じピンク色のウェーブがかかった髪が肩にかかっており、片手には三俣の槍を携えていた
その容姿は物語に出てくる人魚のまさにそのまま、美しいというよりは可愛らしいと言った表現が当てはまるだろう
その人魚に気付いたジールは助けを求めるように声を掛ける
「お、おい!ククル、久しぶりだな。それより黙って見てないで此奴を何とか引き剥がしてくれ」
ククルと呼ばれたその人魚
久しぶりと言葉を返す様にジールに向かって静かに槍を持っていない手をあげる
そして
「タルタロス様、気持ち悪ぃんで止めてやがって下さい」
辛辣
可愛らしい顔に似合わずとても辛辣な言葉だ
ピタッ
しかしそのククルの言葉を聞いてタルタロスと呼ばれた人魚は動きを止める
そしてジールに抱き着いたままクルリと後ろを振り返った
「もぅ~ククルちゃん?何度言ったら分かるの?ワタシの名前はジュ・リ・ア。そんな逞しい男みたいな名前で呼ばないでくれる?」
そう言い放つ自称ジュリア
その言葉にピクピクと顔を歪ませ青筋を立てるククル
そしてククルがさらに言葉を吐く前にもう我慢できないと言わんばかりにジールが無理やり体を引き剥がした
「あ~クソ!相変わらず何て力してやがる。この筋肉人魚が」
「やだっ!ジールちゃん、レディに向かってそんな事言わないの!いい?紳士はレディには優しくするものよ?」
うふっ、と口に指を当てクネクネと腰を動かしながら艶やかしいポーズを取りながらジールに向かってウィンクをする
ククルの様に可愛らしい人魚がやれば大抵の男は一発で鼻血噴射でコロリだろう
しかしジールは言う
「いやだって
お前男だろう」
『人魚姫』と呼ばれる深海の女王はまさかの男であった




