38・青巻紙赤巻紙黄巻紙
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人魚姫の涙を求めて数日
予定より少し早く目的地の町に辿り着いたジール
かなり無理をしたのか額に汗を掻き肩で息をしていた
余程エリーとの約束を守りたいのか、はたまた遅くなった時のお仕置きが怖いのか・・・
いずれにせよ自分の持てる最大限の努力をしたのは間違いないであろう
そしてジールの目に映っているのは閑静な港町
ここが未開の海域へ行く為の最寄りの、そして最後の町である
「よしっと、何とか着いたな」
そう呟きながら町へと足を踏み入れる
よくある田舎の港町ならではの落ち着いた雰囲気。風が運んでくる潮の香りが心地良い
ジールも何度か訪れた事があるが、のんびりとして人々が笑顔で暮らしており、何より海の新鮮な食材が食べられるので気に入っている
・・・だが今回は何故かいつもの町の雰囲気と違って慌ただしく感じる
「何だよ・・・何かあったのか?まぁいいか、とりあえずっと」
町の雰囲気に疑問を感じるがそれよりも、と思い近くにある屋台の列に足を伸ばす
町へ入った時から海鮮の旨そうな匂いが鼻をくすぐって我慢できずにいた
何店か並ぶ屋台の中、その中でも一際珍しそうな一つの屋台の前に着いたジール
「おい、オヤジ!生ナマコの生足一つ!」
「へい!生ナマコの生足一丁!お待たせしやした!」
何だか噛んでしまいそうな名前の物を選んだジール
そして出された生ナマコの生足をコリコリと噛み始めた
見た目こそグロテスクだがしっかりと下味が効いており、その上からかかっているその店独自のオリジナルスパイスが何とも美味い
「あ~コリコリやっぱりここに来たらこれだよなコリコリ。久しぶりにコリコリ喰ったけどコリコリ相変わらず美味いわコリコリ」
コリコリと煩いが味は確か、ただその見た目により人気があまりないのも事実であった
その見た目を気にせず、他にも美味な海産物は数多くある中でその食材を選ぶのは流石、変態ジールの名は健在である
「ところでよオヤジコリコリ。何だか町が騒がしい気がするがコリコリ、何か祭りでもやってんのかいコリコリ?」
生ナマコの生足をコリコリしながらジールは町に入った時から気になっていた事を店の店主に尋ねた
ジールが生ナマコの生足を頼んでいる間も町の人々は浮足立っているように見えたからだ
「何だい兄ちゃん、今何が起こってるのか知らないのかい?」
そのジールの問いかけに対して、そんなことも知らないのか、とでも言いたげな店主の態度
そんな店主の態度に少しムッとするが開き直りながらジールは答える
「あぁ知らないね。世の中の事にはあまり興味が無いものでね。しかしここまで賑やかなんだ、よっぽどの事があるんだろ?」
興味なさそうに振る舞い、しかしそれでも情報を聞き出してやろうと上手い具合に店主にさりげなく問いかける
情報収集はハンターであるジールの基本的な事だからだ。どんな些細な事でも聞き逃さない、それが何に繋がるか分からない、ハンターの鉄則である
そう思ったジールだが・・・
「おっと、ちょうど新しい生ナマコの生足が捌けちまったい!どっかに新鮮なコイツを買ってくれるヤツぁいねぇかなぁ」
「くっ!・・・よぉし分かった!オヤジ、そいつを全部くれ!」
「あいよ!毎度あり!へへ、兄ちゃん太っ腹だね!」
・・・どうやら店主の方が一枚上手だったようだ




