32・蛇
「お~い、ガルスよい!居るかい?」
リンと別れたジールはその足でブルーメタルトパーズの加工を依頼したガルスの元に向かった
さすがに加工はまだ終わってないにしろ進捗状況も知りたかった。それに何より自分が今持っている素材をガルスに見せたかったのだ
きっとガルスなら併せて素晴らしい逸品を創ってくれるだろうから
そう思いガルスの家の扉を開け大きな声を掛けるが
「・・・」
返事がない
おかしい、人の気配はする
さすがにこの時間に昼寝をするような奴ではないはずだ。それに希少な素材を目の前にして呑気に寝るような奴でもない
むしろ寝る間を惜しんでその素材を素晴らしい逸品に仕上げるはずだ
「お~い、ガルス!いないのか?」
・・・
再び声を掛けるがそれでも家の中からは物音一つしない
やはりおかしい
不思議に思いそして警戒しながらゆっくりとガルスの家の中へと足を踏み入れていく
万が一に備えていつでも対処できるように腰に差している愛用の短剣を取り出し眼前に構える
「・・・」
やはり居ない
グルっとガルスの家の中を見渡すが人の影は見えない、だが気配は感じる
長年ハンターとして過ごすジールの直感が告げる
これは何かある、と
そしてそのままガルスが仕事場として使っている部屋の奥の鍛冶場に足を進める
あくまでも物音を立てず、そして出来る限り気配を殺して
ジールは思う、ひょっとしたらガルスに預けたブルーメタルトパーズが狙われたか。あれだけ希少な素材だ。誰かに知られそして狙われてもおかしくない
ただ、そんな事をする奴はこの村にはいないはずだ・・・なら外から来た盗賊どもかそれとも
そう思ったジールは鍛冶場の扉にそっと近づく
そして扉に耳を当て中の気配を伺う・・・が
「・・・居ないのか?」
中から何の気配も感じない。そう思いそのまま扉を開けた
「やっぱ居ないか・・・それにブルーメタルトパーズもある」
ジールが開けた扉の奥の鍛冶場には加工を頼んだ素材がそのままある
しかし妙だな、ジールは思う
オカシイのだ。前述したように希少な素材を前にしたら寝る間を惜しんで仕事するような奴だ・・・なのにこの素材は、ブルーメタルトパーズは『そのまま』なのだ
ジールが渡した時のまま、少しも加工に使われた形跡がない。つまり少しもガルスによって手を入れられてないという事だ
やはりオカシイ
ブルーメタルトパーズを手に取り思慮に思慮を重ねる
とその時
「・・・」
聞こえた、確かに聞こえた。ヒトの僅かな声が
ジールはその場から一気に部屋の隅へと移動し辺りを警戒する
やはり何かあったな
声が聞こえた方へ視線を送る。そこは鍛冶場のさらに奥、ガルスがいつも寛いでいるプライベートルームが目に入った
「あそこか」
方向を確認したジールは一瞬でその距離を詰め先程同様、再び扉に耳を当て中の気配を伺う
「・・・」
居る、気配を感じる
誰か居るな、しかしガルスではない
そうジールが思う理由はある。何故ならこのガルスの私室に本人が居る時は決まって酒を飲みながら馬鹿笑いしているガルスの声か、アレ的なモノを見て興奮している変なガルスの声が聞こえるか、どちらかしか無いからだ
それに何よりジールの直感が反応している
さらに扉に耳を押し当てて僅かながら聞こえるのだ、異常なまでの獣のような低い唸り声が
ゴクリ
不死身のジールと言えど汗が一筋垂れる
だが、いつまでもこのまま居るわけにもいかない
フウっと小さく息を吐き覚悟を決めた
短剣を握っている汗ばんだ手をギュッと握り返し・・・
扉を蹴破りジールは一気に突入した!




