31・股間は大丈夫ですか?
「そう、ならいいわ。なら次の質問よ。パパ・・・勇者って知ってる?」
「・・・」
腕組み仁王立ちの姿勢はそのまま、魔力を解除したリンは土下座スタイルのままのジールを見下ろす
が、ジールはそれに対し再度沈黙で答える
先程の沈黙と違うのはその言葉を聞いた途端ジールが纏う空気が変わった事か
少しの沈黙の後、リンが喋る前にジールはゆっくりと立ち上がった。そしてスッと真っすぐな視線をリンに送った
「な、何よ?そんな顔したって怖くないんだから」
先程とは対照的なジールの態度にあからさまに動揺する。こんな怖い顔のパパはあまり見た事がないから
「リン・・・お前シャルから何か聞いたのか?」
その怖い顔のまま口を開いたジールにリンはビクッと肩を震わせる
その顔はいつものように冗談を言っている面影は全く無く真剣そのもの。あまりに真剣なその表情に涙目になりながら一歩後ずさりしてしまう
「べ、別に何も聞いてないよう・・・ただシャルばあちゃんがパパが何か勇者の事を言ってなかったかって聞いてきたから気になっただけだよう」
怖い顔のパパに少しちびりそうになってしまった
いつも間にやら立場があっという間に逆転してしまった
ただジールはそれ以上リンの事を責めるつもりがないのか、リンの言葉を聞いた後ふぅっと一息つき表情を緩めた。そして懐から先程貰った神鱗を取り出し改めてそれをじっくりと見始めた
「そうか、ならいいんだけどよ。ところでリン、こいつは本当に俺が貰っていいのか?」
もう股間は痛くないのか、それともその回復力を称賛するべきか
ともあれ色々滲んではいるがすっかり回復したようだ
「う、うん。元々パパに渡すつもりだったし、それにパパなら意味のある使い方をしてくれるってシャルばあちゃんも言ってたから」
「シャルが?ふ~ん・・・まぁくれるって言うんならありがたく貰うけど。ただアイツがこれをねぇ・・・」
神鱗を見ながら深く考え込む。それは過去の事か、それともそれをどう使うか考えているのか
いずれにせよ神鱗の価値を確実に理解しているのは確かなようだ
そのジールを見てリンも少し落ち着いてきたのか上目遣いになりそっと尋ねる
「・・・ねぇパパ?シャルばあちゃんとはずっと前からの知り合いなの?」
「ん?あぁ、アイツが戦場で暴れていた頃からよく知っているぞ。ああ見えても昔は物凄い美人でな、貴族のバカどもがよく必死に口説こうとしていたよ」
ジールは当時を思い出してか、口元を緩めニヤニヤする
しかしそれを聞いてリンは不思議そうに尋ねた
「昔は美人だったって・・・その頃のパパはまだ子供だったんじゃないの?そんな頃から二人は知り合いだったの?」
確かに、シャルを考えれば妙齢の結構なお歳。そして自分の父であるジールを見ればどう見ても20代から30代前半であろう
その疑問に答えるべきか、ジールはバツが悪そうな顔をし頭をポリポリと掻きながら濁す様に答えた
「あぁ~・・・ま、そんなとこだ」
秘密主義は相変わらず。過去の事を今まで同様あまり語りたがらない
勇者に対する態度も含め、リンはプクーっと頬っぺたを膨らませ不満そうにしていた
「おっと、じゃあこいつは確かに意味のある事に使わせて貰うからな」
そんなリンを見てか、会話を避けるように、そしてその場から逃げるように神鱗を空間収納に仕舞いながら立ち去っていく
「あ!もう待ってよパパ!・・・何だよぅ、少しぐらい教えてくれたっていいじゃない」
残されたリンはプリプリと不貞腐れていた




