3・おっぱいではありません アップルです
「あれ?どうしたのパパ?ほら、早くレイカーさんに薬草を渡すんじゃないの?」
レイカーに抱き着きながらニヤニヤと小悪魔の様な視線を送ってくるリン。年齢の割にはその手の事が良く分かっているみたいだ
その証拠にリンの頭にはちょうど果実がたゆんと乗っている
くっ!何て奴だ!確信犯かこいつは
「あ、あぁ。分かっている」
小悪魔の視線を感じながらヒョコヒョコと少し前のめりのままレイカーに近付き薬草を渡すジール
「はい、ありがとうございますジールさん。助かるわ」
ふふっと笑いながら両手でそれを受け取るレイカー・・・
だが両手で受け取ると言うことは、リンの頭によって持ち上げられた果実がさらに両手によって大きく挟まれている事になる
と言うことは
「っ!?ご馳走様です!ここが楽園か!」
そう叫びながらギラギラと目を血走らせフンフンと鼻息を立てるジール。二つの果実が宝玉のようにキラキラと輝いて見えるのは本人だけか
もはや自分の顔面がリンの涎か自分の涎か分からないほど凄いことになってる
「うわぁ・・・」
仕掛けたのは自分と言えど、目も当てられないような自分の父親の顔面にドン引きするリン
だがその元になっている顔は先ほどまでタルトに対する自分の顔面とそう変わらない事にはまるで気付いていない
その二人の姿を少し離れて見ていた他の村人は思った
あいつらやっぱり親子だな・・・と
「あらあら。ふふ、ほらリンちゃんもそろそろ離れて?あなたの好きなリンゴのタルト、ちょうど出来ているわよ?」
そんな乱れた二人を軽く受け流しながら大人の余裕を見せるレイカー。ふわりと振り返る時に甘く良い臭いがするのも大人ゆえの嗜みか
「え!?ホントに!?やったぁ!レイカーさんのアップルタルト、大好き!」
そう言いながらようやく自分の頭の上に乗っている二房の果実から離れるリン。それとは対照的に離れると同時に揺れ動く果実に中々前のめりの恰好から姿勢を正せないジール
そんなジールを放っておいてリンはそのままレイカーの家の中に入って行く
「おっじゃましまーす!」
「ふふふ、相変わらず元気ねぇ。ジールさんもどうぞ良かったらタルト、食べて行ってくださいね?」
コテンと首を傾げ、妖艶な笑みをジールに向けリンに続き家の中へと入って行くレイカー
すでに色々と危なくなっているジールにとってその仕草はまさにとどめの一撃
「あ・・・」
そうか、もういいか、もう楽になっていいよね・・・
もう充分我慢したんだ。俺、よくやったよ。そう思うジール、だがそんな父の怪しい気配を感じリンはジールの方へと視線を送った。実の娘ゆえの勘か、それとも幼いながらにも女としての勘か
「あ!パパ!ひょっとしてレイカーさんに何かしようとしてる!?」
開きっぱなしの扉の奥から今まさにタルトを食べようとしているリンから一言
とさらに追い打ちを掛けるかのような一撃が飛んでくる
「あー!絶対ママに告げ口してやるんだから!」
その言葉を聞いた途端、スッと我に返り目にも止まらぬ速さで家の中に飛び込んでくるジール
「ごごごご誤解です!リンさん!ま、まさかそんな事する訳ないじゃありまへんか!全くもって!いやホントに!全くもって!これといっての!ホントの!ホントに誤解です!」




