25・便利魔法
ーーー一方、その頃のジールは
「へぇっくし!っだぁ!あ~またどこかの美女がイケメン過ぎる俺の噂でもしてんのかな」
盛大な勘違いをしていた
「よし、こんなもんでいいだろ。これだけありゃあのジジイも少しはもつだろ」
さらに本当にスポン草の採取をしていた
女の勘とは侮りがたし、それがただの皮肉な世間話でも真っすぐに的を得ていることがある
しかし先日のダノンとの些細な口約束をしっかり守るところは流石と言ったところ
「ふぃ~・・・しかし勇者か」
どっこらせっと自分が積み上げたスポン草の山を背にその場に座り込み、その中から一つを手に取りボソッと呟く
先日別れ際に言われたダノンの言葉が頭から離れない
軽く唇を噛み締めしばらく手にしたスポン草を見つめた後、そのまま山の中へそれを投げ戻した
「勇者ってのは何をもって勇者って言うんだろうな・・・」
いつものジールには似合わないような真剣なセリフを呟きフッと息を吐く
物憂い顔を見せており、黙って入れば端正な顔立ちとよく言われるジールの面影が見え隠れしている
そして再びスポン草の山に目をやった後、気を取り戻したかのようにいつもの調子に戻った
「まぁ考えても仕方ないか!さっさとあのクソジジイにスポン草でも持って行ってやるか!」
考えるのを放棄したジール。深く考えるのがめんどくさい、間違いなくリンは彼の血を引いているのだろう
そしてそう言いながらスッと立ち上がり何もない空間に手をかざす
するとそこに何やら怪しく黒い渦を描く空間が現れた
そしてその事にジールは特に何か思うわけでもなく、後ろに山になっているスポン草を次々と手当り次第入れていく
「ん~リンもシャルのお陰で大分魔法を覚えてきたみたいだし、そろそろ便利だからコレも教えといてやるか」
どうやら今ジールが発動させた魔法はかなり特殊なようで俗に空間属性と呼ばれるものらしい
過去にほとんど例がなく特に今発動中の魔法は空間収納と言われるものでジールが自ら編み出した魔法である
その効果としてそこに収納された物は時間や温度など関係なく、収納された時から時間が止まる、つまりそのもの自体の劣化等しなくなるという優れもの。ただ生きている動物など生物として分類される物は収納出来ないみたいだ
少しの欠点はあるがジールが編み出した当初はそれこそ勲章を貰えるほどの功績であり、特に大きな荷物や量を運搬しなければならない商家などには特に重宝された。・・・ただ発動するための魔力がかなり膨大な為、中々扱えるものが居ないのも事実なのだが
そもそもジールがこの空間収納を編み出した理由が
荷物持ちたくない、めんどくさい
というしょーもない理由での事・・・
そんな理由で新しい魔法を編み出す事が出来るのも稀代の天才と呼ばれた変態ジールのなせる技なのであろう
「さぁ~て、そろそろ帰るとしますかね」
そして一通り今日採ったスポン草を『めんどくさいから創ってみたよ空間収納』という名の穴にしまい込んだジールは帰り支度を整える
・・・が、その時ふと何かの気配を感じ後ろを振り返った
するとそこには以前出会った銀狼が佇んでいた




