20・高級食材?
伏線の日から夜が明け
再び日が高く昇り始めた頃、村にはいつもの平和な日々が始まっていた
決して多くはない人数の村だがそこに在中するハンターを名乗る男とおかげで裕福とまではいかないが飢える事無い日々を村人は送っていた
そしてその平和な光景の一コマが今日も始まろうとしている
そこには金色の髪をサラリと風になびかせブラブラと村の中を散歩している一人の少女がいた
「あ~暇!暇暇暇!暇だぁ!」
その少女の名はリン・ストライダル
自分の母であるエリーに言われた昨日の魔法の復習をするように、のノルマを終えたリンは刺激を求め村を歩いていた
「あ~何か面白いことないかなぁ~・・・あれ?あそこにいるのは?」
年頃の少女には少々退屈である平和な村
その中で少女は何かを発見しそちらの方へ歩み寄る
「シャルばあちゃん!なーにしてんの!?」
そこに居たのはリンに魔法の手ほどきをしている妙齢の女性、シャルばあちゃんと呼ばれる女性が居た
魔法使いであるはずのシャルだが・・・
「ん?何だい、リンじゃないか。いや昨日あんたの親父からもらった薬が効いてね、少し体でも動かそうと思ったのさ」
そう言いながら女性にしては長身である自分の二倍はあるであろう大きな斧を持ち上げる
その姿は魔法使いというよりはバリュキュリーのようである
シャルのトレードマークである漆黒の三角帽子を見ればその不釣り合いさが良く分かる
「げ、元気そうにしか見えないけど・・・どこか悪かったの?」
斧を持ち上げ肩に乗せた衝撃でシャルの足元の地面が少し陥没した
その光景に顔を引くつかせながらリンは答えた
「ん?そうさね、ちょいと昔に腰をね。でっかいトカゲとやりあった時に少し捻ったのさ。ほらこいつを手に入れた時の」
シャルはそう言うと自分の首からぶら下げているネックレスの先に付いている物を胸の間から取り出した。それは七色の美しい輝きに包まれていた
「シャ、シャルばあちゃん・・・でっかいトカゲってひょっとしてドラゴンとかだった?」
それを見たリンは驚きに目を見開き口をあんぐりと開けたまま固まった
しかしシャルは首を傾げよく分からないといった感じである
「そうだったかいね?よく分からないし覚えてないさね。まぁ、肉は美味かったのはよく覚えているけどね!あっはっは!何だね、欲しけりゃリンにあげるよ。確か神鱗とかいうやつだった気がするさね」
豪快に笑うシャルは首からそれを外しリンへと投げ渡した
「し、し、し神鱗!?そんなの受け取れないよ!シャルばあちゃん、これがどんな価値があるか知ってるの!?初めて見る私でも知ってるよ!?」
投げ渡されたそれを落とさないように慌てて受け取ったリン
まさかそんな物とは思いも知らず、それをそのままシャルへと突き返す
童話のようなお伽噺でしか聞いたことない程、幻の価値がある神鱗
その素材はドラゴンと呼ばれる世界の最強の一角として数えられる存在のさらに最上位種、神龍である。その姿は普通の人間であれば見るだけで絶命してしまう程の神ごとき存在感
一息ブレスを放てば軽く一国は滅ぼす事が出来、さらにその七色に輝く美しい体から伸びる尾を少し薙げば大陸ごと消滅してしまうであろう
そしてシャルが首からぶら下げていた神鱗、それはその神龍から採取出来るただ一枚の鱗
神龍の体に無数有る鱗ですら一枚あれば何世代も遊んで暮らせるほど。それが神龍からたった一枚しか取れない神鱗となれば最早伝説と言っても過言ではないだろう
そしてそれをシャルが持っていたという事は・・・さらに肉は美味かったらしい




