2・未亡人の〇っ〇゜〇タルト
薬草の採取場所からしばらく歩いた後、二人が住んでいる村に帰ってきた。周りの景色もさることながら、村と言うよりも辺境の集落の様な田舎っぷり。だが必要なものは全て揃っているような不思議な村でもあった
そしてその村の中をしばらく歩いた二人は一軒の家の前で立ち止まる
「レイカーさぁん!リンでぇす!タルトありますかぁ!?」
その家の扉の前に立つや否や大きな声で叫ぶリン
・・・いや薬草を届けに来たんだけど
そう思うジールをよそに元気に扉を叩くリンの姿はどこから見ても餌をたかりに来た猛獣にしか見えない。そしてそのリンを見るにそこにはレイカーと名乗る住人が住んでいるのは間違いないだろう
「おいリン、あんまりドアを叩くな。レイカーさんに迷惑だろ?」
ジールはあまりのリンの勢いに押されそうになってしまうが何とか必死に宥めようとする。だが目をギラつかせて今にも地面に届きそうなほどの涎を垂らしているリンにはその声は届きそうもない
「レイカーすわぁん!いないんですかぁ!?」
やはり、というか当然のごとく腹ペコリンちゃんにジールの言葉なんて届くはずもなかった
ダメだコリャ
先ほどまで仲良く繋いでいた手を擦りながら目の前の猛獣を傍観することに決め込むジール
と、そう思っていたら目の前の扉がようやく開いた
「はいはい、そんなに大きな声を出さなくても聞こえますよ」
そう言いながら扉を開け、優しく微笑む美しいマダム。スラっとした身体のライン、腰まで伸びた艶やかな深紅の長い髪。その妖艶な姿は年齢を感じさせないほど魅力的である
「あらリンちゃんいらっしゃい。ジールさんも・・・どうしたのそんなに離れて?薬草を届けに来てくださったんでしょ?」
目の前の猛獣の頭をヨシヨシと撫でながらジールに視線を送るレイカー
「あ、あぁ。そうだった」
リンの姿が色々と凄すぎて少し距離をとっていたジール
だがレイカーにそう呼びかけられ腰に下げていたポーチから依頼の薬草を取り出しながら近づいて行く
と、その前を遮るように長い涎がジールの顔に飛び掛かってきた
「レイカーすわぁん!」
「きゃっ!」
ジールが薬草を渡そうと手を伸ばしたが、とうとう待ちきれなくなった金色の猛獣リンが目の前の甘い良い香りのする二房の果実にダイブした
とそれと同時に二房の見事な果実がブルンブルンと大きく揺れ動く
たわわに実ったその果実はその勢いでレイカーの着ている際どい服から零れ落ちそうになる
「なっ!?なんいう破壊力!」
薬草を渡そうとした手を思わず引っ込め、思わず前かがみになるジール
自分の顔に飛び散っているリンの涎なんて全く気にする余裕がないみたいだ
「こ、こらリン!離れなさい!な、何て羨ま・・・いやレイカーさんに迷惑だろうが!」
自分の愛娘にそう叱責するジールだがその情けない格好には何とも説得力がない




