19・伏線
「今更償うってつもりじゃねぇが俺は無駄な狩りは二度としねぇ。しかしだからと言って勇者どものやってる事を咎めるつもりもねぇ。ただ俺は自分の手の届く範囲の全てを守れればそれでいいんだよ」
そのまま顎髭を掴んでいた手を離し自分の両手を見つめるジール
その両手には少し顎髭の抜け毛が付いていた
そしてジールの剣幕に黙っていたダノンだがそれを聞いた途端愉快そうに笑いだした
「ふぁっふぁっふぁ!ジールよ、実にお主らしい言葉じゃな」
「何だようるせぇな、いきなり笑いだして気持ち悪いジジイだな」
いきなり笑い出しだダノンにハッと我に返ったジールは少しバツが悪そうにガシガシと頭を掻く。頭を掻く事でダノンの抜けた髭と自分の髪の毛が混じり合ってしまうがジールはそれに気付いていない
「ふぁっふぁ、そうじゃな、確かにお主らしい。ブルーメタルトパーズの加工もガルスに頼んだ事じゃしな」
「っ!?てめっ!何でそれを知ってんだよ!?」
「何じゃ?何を照れることがある?お主も意味があることを分かって加工を頼んだんじゃないのか?」
顔を真っ赤にして焦るジールに対し、禿げ頭をピカピカ光らしながらニヤニヤ笑うダノン
「うっせぇ!知るかよそんなもん!たまたまだ、たまたま!偶然にも手に入ったから加工を依頼しただけだ!」
「おや?そうなのか?ワシはてっきり意味があると分かって加工を頼んだものかとの・・・知らんのなら教えてやろうかね?ブルーメタルトパーズを加工したらの」「だぁー!うっせぇよ!分かった!分かったよ!また明日スポン草をたっぷり採って来てやるからもう今日は大人しく家に帰って寝てろ!」
ジールはダノンの言葉を必死で遮るとすぐに背中を向け立ち去っていった
その背中をニヤニヤと見送りながらダノンは呟く
「何じゃ、やっぱり知っておるんじゃないか。まぁの、中々お目にかかれない代物じゃからの。じゃがあともう少し素材があれば・・・まぁそれだけでも十分な効果があるのは間違いないからの」
う~むと唸りながら自分も家に帰ろうとその場を去ろうとしたダノンだが、ふと思い出したようにジールの去っていた方向を見上げた
「お、そう言えばジールに言うのを忘れておったわい・・・
『魔王』を名乗る者も現れているという事をの」
一方、その事実をまだ知らない当のジールはレイカーに荷物を届けた後、帰路についていたが・・・
「んだぁー!ちくそー!何だがあっちぃぜコノヤロー」
未だ赤面したままフンフンと鼻息を鳴らしていた




