17・Shining Black
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「他に何か言うことは?」
「ごめんなさい。もうしません」
「・・・」
腕を組み仁王立ちになっているエリーの前で土下座しているリン
その横にはナニカか肉塊のようなものが転がっているが気にしないでおこう
「さて今日はもういい時間だから夕食でも作りましょうか。ほらリンは少し外で昨日教えた事の復習でもしてなさい」
「は~い・・・」
エリーにそう言われ少しビクビクしながら外へ出ていくリン
余程先程の事が身に堪えたのだろう
大きなタンコブを頭に作ったまま昨日エリーから教わった魔法の練習を始めていた
そして転がっている肉塊はというと・・・
「ほら、あなた。これをレイカーさんに届けてくれる?さっきお邪魔させてもらったお礼よ」
そう言うとエリーはガスっと肉塊に蹴りを入れる
「ぐはっ!わ、分かりました!今すぐに!」
否、肉塊はいつの間にかジールに戻っていた
そしてそのまま疾風のごとくエリーから渡された荷物を持って外に出ていった
それと共に先ほどまで喧騒に満ちていた室内は静寂に戻る
その中ボソッと嬉しそうな声が聞こえた
「ふふ・・・これで今日レイカーさんに教えてもらったレシピに集中できるわ。意外と香料とか種類が多くて難しそうなのよね」
そう呟くエリーはレイカーから預かったレシピが書いてある本を片手にキッチンに向かうのであった
鼻歌を歌いながら料理を始めるその後ろ姿は先程までの恐ろしい形相とは打って変わって、いつもの美しい笑顔に戻った天使の様であった
一方その頃のジールは
「はぁ・・・やっぱりエリーの魔法は質が違うな。リンもその内あぁなっちまうのかな・・・」
レイカーへ荷物を届け、再び帰路へついていたジールは溜息を付きながらエリーの先程の魔法を思い出していた
リンの覚えたての氷塊とは違い、質・密度・洗練さ、その全てにおいて上回っており一般的見ても常人のそれを遥かに超えていた
ジールとは違い、元々魔力量等に恵まれていなかったエリー、だがそれを補う為の計り知れない努力がそこには物語っていた
「まぁそん時は姿を消す魔法でも開発して何とか・・・」
「おや、ジールじゃないか。こんな時間にお出掛けかね?」
ブツブツと呟きながら歩いているジールにふと声がかかる
その声のする方へジールが目をやると、薄いシャツにフンドシ一丁の黒光りムキムキ爺が立っていた
「おまっ、相変わらず何て格好だよ・・・ダノン爺」
「ふぁっふぁっふぁっ!何を言うとる!これがワシの正装じゃないか」
ダノン爺と呼ばれたその男は少し肌寒いはずの時間帯ではあるがそれが気にならないのか、大きな声で笑いながら近寄ってきた
「いやこっちくんな。目が腐っちまう」
決して人の事を言えるはずがないジールだが爺の裸体は見たくないみたいだ
そんな言葉はお構いなし、つかつかとジールへ歩み寄ったダノンはお言葉だな、と肩を竦めて見せる
「ふぁっふぁっ!お主が言うなジールよ、それより何をしとるんじゃ?」
「ちっ、レイカーさんのとこに届け物だよ。お前こそ何してんだよ?」
目の前の黒光りムキムキ爺から目を反らす
やはり直視には耐えられないみたいだ




