16・悲愴と激情
「ただいま~」
ガルスが悲惨な目にあっているとも知らず、一方のジールは依頼を終えた後いつものように自宅へ帰っていた
・・・が
シーン
帰ってきた家には全く人気が感じられない
「あれ?いないのか?ただいまー!」
おかしいな、この時間帯なら二人ともいるはずだけどなと思いながら再び声を掛けるが相変わらず返事は無い
「・・・」
返事がないのを不思議に思い、そのまま家の中に入るジール
そしてふとテーブルの上に置いてある書置きを発見する
「お?何だ、どっかに出かけてるのか?どれどれ・・・」
その紙切れを手に取りそれに目を通し始めた
「え~っと・・・
『ジールへ もうあなたには付き合っていられません。リンを連れて実家に帰らせていただきます エリー』
・・・うっそぉぉぉおおおおおおおん!!?」
静寂に包まれていた自宅に絶叫が響き渡る
そしてそのままジールは
「うびえぇぇぇぇぇぇん!!」
大号泣するのであった
しかしよく書置きを見てみれば少し下のほうに
『なんてね~。リンと一緒に少しレイカーさんの所に行ってきます。夕方には帰ると思うのでゆっくりしててね エリー&リン』
と書いてあった
が、ジールがそれに気付くのは号泣してから約1時間後の事であった
「しくしくしくしく・・・」
「ほらぁジール!いい加減機嫌直してよ!」
「そうだよパパ!いつまでもメソメソみっともない!」
二人が帰ってきた後部屋の隅っこで体育座りして泣いているジールに対して辛辣な言葉を浴びせるエリーとリン
泣きすぎて顔がパンパンに張れているジールは想像以上に顔面が凄いことになっている
「だ、だって・・・ホントに出ていったのかと思ったんだもん」
「だもんって・・・パパ気持ち悪い!いい加減自分の歳を考えてよ!」
やれやれと頭に手を当てながら非常に残念な視線をジールに送るリン
その言葉を聞いたジールはフラフラと下を俯きながら立ち上がった
「なんなのパパ!?今日はもう仕事は終わったんでしょ!?いい歳したおっさんがいつまでもグジグジメソメソみっとも」「だぁれがおっさんじゃい!さっきから黙って聞いていたら言いたい放題言いやがって!」
自分の非情な扱いにとうとうジールの堪忍袋の緒が切れた
そのまま近くにあったフライパンを手に取りリンに向かって行く
「きゃぁあああ~!ママぁ!おっさんがキレたぁ」
「だぁれぁがぅぁぁおっさんじゃぁああああ!!」
「こらっ!二人とも静かにして頂戴!」
ドタドタと家の中を走り回る二人に対して手にしていた本を置き怒り出すエリー
「きゃぁああ~!」
「うがぁあああ!」
「ちょっと静かにしてってば!」
レイカーから預かった本を読みたいエリーはイライラが止まらない
そんなエリーの声など耳に入らず尚も家の中で走り回る二人
「へっへ~ん、ここまでおいで~っだ!」
「こんのデコッパチがぁ!」
「こらぁ!」
さらに走り続ける二人
「やーい、加齢臭おやじぃ!」
「何だとぉ!この小娘がぁ!」
・・・ブチッ
ズガンッ!ドゴンッ!
止まらない二人の頭上に天井を覆いつくすほどの大きな氷塊が現れ重力に逆らわず落下した
今度はエリーの堪忍袋がキレたみたいだ
「いったぁ!」
「ぐへぇ!」
「・・・」
ドガンッ!ズガンッドゴンッベキンッ!
「ちょっ!ママやめてっ!」
「げへぇ!ごはぁ!プチュポン!」
明らかにジールに落ちる氷塊の方が多い件については触れないでおこう
ドゴンッ!バカァンズガァングチャンプッスゥンズボォンガッシャァンヌルッポオン!!
「ご、ごめんなさぁい!!」
「がべっ!うげっ!ぐげっ!のふっ!ぺろっ!じゃがりこっ!がちゃぴぃーん!!」




