15・幻の書物
その中、鍛冶師であるガルスの元に立ち寄った時ジールはこそっと懐から銀狼に貰った宝石を取り出した
「・・・おい、ガルスのオヤジ。少しこいつを加工してくれないか?」
周りに悟られないよう静かな声でガルスに話しかける。その宝石の価値を分かった上でのことだろう
そしてその宝石を見たガルスは驚きの声をあげる
「おいおい!?お前、これはブルーメタ」「しっ!静かにしろ!いいからこいつを加工してくれ!」
とっさにガルスの口を塞ぐジール
「あ、あぁ。すまねぇ・・・だがこいつを加工するには少し、いやかなり骨が折れるぜ?」
手渡された宝石を見ながらジールを探るような目で見る
「あぁ、分かってる。それ相応の対価は払うつもりだ。ほら・・・こいつでどうだ?」
しかしそのガルスの視線をフッと鼻で笑い、我に策有りとでも言うように再び自分の懐に手を入れ何やら怪しげな書物を取りだした
そしてそれをチラッと見たガルスは驚きのあまり目を見開いた
「おまっ!?こ、こいつは!?あの幻の作品とまで言われた・・・
『ドキッ!実録 王女様たちのイケない日々』じゃねぇか!しかも完全版!お前、どこでこんなレア物を・・・」
「ふっ、ガルスよ。愚問だな・・・俺が昔、何て呼ばれてたのか知らないのかい?それに、長い付き合いだ。お前の趣味ぐらい把握しているさ」
「っ友よ!!」
ガシッとお互いに手を固く握りしめ何か深い所で共感しあう二人
そしてその書物をジールから受け取ったガルスはチラッとその中身を見た後満足そうに頷いた
「さすがだなジールよ。これは間違いなく本物だ・・・さすが昔変態ジールと呼ばれていただ」「俺ぁハンターだ!」
「・・・」
「・・・」
「さすがだな変態ジ」「ハンターだ!」
「・・・」
「・・・」
「・・・さすがだな不死身のジールよ」
「ふっ、俺に不可能なことなんて無いんだよ」
何だかバツが悪そうな顔をするガルス。だが当のジールは空を見上げながらニヤニヤしていてとても気持ち悪い
(こいつぁやっぱり変態だな)
そう心に思うガルスだが大事に両手で抱えている書物が、お前も一緒だよと呟いているみたいだ
「じゃあ後は頼んだぜ。あ、分かってると思うけど加工するのは二つだからな」
ひとしきりニヤニヤした後、ふと我に返ったようにガルスにそう伝えるジール
それを分かってると、頷きながらガルスもそれに答える
「あぁ、エリーとリンちゃんの分だろ。ちゃんと加工しておくから心配すんな」
「さすがだな。じゃあ報酬分の働きを期待しているぜ」
ジールはそう言うと軽く手を挙げ立ち去った
「全く・・・素直じゃないし変態だが相変わらず家族思いな奴だ」
その後ろ姿を見ながらそう呟くガルス
と、その時ガチャっと後ろのドアが開いた
「そう思うならあんたも変なもの貰わずに少しは稼ぎを増やしな!ただ働きみたいなもんじゃないか!それは捨てておくからね!」
ベシン!!
「うひぃ!か、かぁちゃん!勘弁してくれよ!」
ドアの奥から現れた自分の奥さんにフライパンでおケツを叩かれ、ジールから幻の一品を取り上げられたガルス
やはりどの家庭も最強なのは奥様みたいだ




