「お父さんとハムマヨコーンと」(瞬発)
しいな ここみさんの【瞬発力企画!】に参加中です。みんなで盛り上がりましょう。
# パン屋から見た父の日のサプライズ
朝早くから小麦の香りが漂う店内で、私は今日も惣菜パンを作っていた。特に力を入れるのは午前10時頃に完成させる「ハムマヨコーン」。これは、12年間毎日のように買いに来てくれるお客様のためのものだ。
その方は、背広姿のサラリーマン。いつも「ハムマヨコーンとコーヒーをください」と言って、それだけを買って帰る。他のパンには目もくれず、レジで「いつもありがとう」と言って去っていく姿が私の日課の一部になっていた。
彼の奥さんが一度来店した時に教えてくれたのだが、彼は「お腹がふくれれば何でもいい」と言って、デスクで仕事をしながらいつもうちのパンをかじっているらしい。「もっとちゃんと食べなさい」と妻は言うけれど、彼は「無駄な時間を使いたくない」と質素な昼食を続けているとか。
今日は6月の第三日曜日、父の日。彼はいつも通り午前11時半に来店した。「いつもの」と言ったその方に、私は少し勇気を出して声をかけた。
「今日は父の日ですね。お父さんとして過ごされる予定は?」
彼は少し驚いた表情を見せた後、「あぁ、そうだったのか」と小さく呟いた。父の日だということを忘れていたようだ。
その日の夕方、店の閉店準備をしていると、一人の若い女性が入ってきた。よく見ると、朝のサラリーマンに少し面影が似ている。
「あの、うちの父がいつもお世話になっています。ハムマヨコーンをよく買うサラリーマンなのですが...」
彼女は父の日のサプライズを計画していると教えてくれた。父親が愛する惣菜パンの店として、私の店の名前を家族で話題にすることがあるらしい。
「父は『あそこのパン屋さんは、忙しい自分の味方だ』といつも言ってるんです」
その言葉を聞いて、私は胸が熱くなった。毎日同じパンを作り続けることに時々疲れを感じることもあったが、こうして誰かの日常を支えていると思うと嬉しくなる。
翌日、彼はいつもより少し表情が明るく来店した。「昨日は家族と食事に行ってきました。父の日のサプライズだったようです」と照れくさそうに話してくれた。
私はその日特別に焼いた小さな「父の日」と書いたクッキーを、彼のハムマヨコーンに添えた。彼は少し驚き、「いつもありがとう」と言って、いつもより深くお辞儀をした。
パン屋として12年間、同じパンを作り続けてきた私だが、こうして誰かの大切な日常を支えていることに、あらためて誇りを感じた日だった。
今回のプロンプト:
こんにちは。下記のテキストを、パン屋さんの視点で描いて下さい。その際は「お父さん」というキーワードを1つ以上入れて下さい。800字で宜しくお願いします。
ここから ~~
https://ncode.syosetu.com/n1237km/30/
とほぼ同じ