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TS転生悪役令嬢ですが、フラグを壊しすぎて別のフラグが立ってしまいました  作者: 於田縫紀
第5章 魔法大会と発情期

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第66話 勝負の見込み

「私には難し過ぎて諦めたあの手順込み魔法。それを更に発展させて新たな理論を作るとは思いもしませんでした。正直アンフィ―サ様にはどうやっても追いつけないような気がいたします。それでも追いつこうと足掻くのをやめる訳にはいきません。私は負けるわけにはいかないのですわ。そしてこの御前試合も。

 良い勝負にしようとは言いません。私達は全力で勝ちに行きます。リリア様達もそうであることを望みます。それでは今度は決勝戦で」


 マリアンネ様達はそう言い残して去って行った。


「何かこう、格好いい方ですわ」


 おい待てリリア、騙されるんじゃない。


「あの方の標的が自分になると大変なのですわ」


 それだけ言って誤魔化す。

 なお私の斜め前で、エンリコ殿下が私の台詞にうんうんと頷いている。

 殿下も標的にされた事があったからな。その辺の気持ちはわかるのだろう。

 しかし殿下とは思いを共有したくはない。だから無視する。


「それでは試合の準備をしましょうか」


 今日は開会式も無いし、試合も準決勝から。

 だから出番はすぐ来る。リリア達は第2試合と、最後の決勝戦だ。

 テーブルの上を片付け、リリア達の服装を整える等準備にとりかかった。


 ◇◇◇


 第1試合と第2試合、つまり準決勝はあっさり終わってしまった。

 今は決勝戦前、半時間(30分)休憩時間(インターバル)だ。


「魔力も体力も、ついでに筋肉や体調も魔法で整えたけれど違和感あるかな? 何かあったらすぐ言ってね」


 治療・回復魔法はリュネットの得意技だ。これがあるから迷宮(ダンジョン)でも思い切りよく魔法を飛ばせる。


「ありがとうございます。普段以上に調子がいい感じがしますわ」


「私もです」


 ステータスを見てもMP、HPともに最大値になっている。


「それでアンにひとつ聞きたいのですが、いいでしょうか?」


 何だろう。


「何でもどうぞ」


「今回は私が鉄壁(ナイトハルト)、ナタリアが福音(エウアンゲリオン)をそれぞれ試合開始直後、無詠唱で即時起動させるつもりです。今回に限り、華麗さや形式等は無視して全力で勝ちに行くつもりです。おそらくマリアンネ様達もそのつもりで来られるでしょう。そこまでは宜しいでしょうか」


「その通りだと思いますわ、リリア。マリアンネ様達も五番目の月(フィフス・ルナ)防護障壁魔法(バリア)を無詠唱即時起動させてくるでしょう」


 マリアンネ様は今まで五番目の月(フィフス・ルナ)を無詠唱で出していない。

 しかし当然出来ると私達は思っているし、そのつもりで準備もしている。


「アンに聞きたいのはその次です。もしそうなった場合、私とナタリアは勝つ事が出来るでしょうか。どれくらいの勝率で勝てるでしょうか。それをアンの口から聞きたいのですわ」


 なるほど。ならば答えてしんぜよう。


「まずリリアの鉄壁(ナイトハルト)とマリアンネ様の五番目の月(フィフス・ルナ)、これは勝負がつかない可能性が高いでしょう。

 リリアとマリアンネ様の魔力はほぼ互角。厳密に言うと小火球魔法(デミ・ファイアボール)1発分程度リリアの方が低いように感じます。

 ですがリリアの鉄壁(ナイトハルト)は、攻撃魔法を無力化する魔法としてはかなり魔力効率が高いものになっています。一方五番目の月(フィフス・ルナ)は本来広域殲滅型魔法、マリアンネ様でも演習場の一部に攻撃を限定するとかなり効率が落ちるでしょう。

 ですからリリアが鉄壁(ナイトハルト)に専念する限り、威力は拮抗した状態になると私は見ています。つまりそのままでは何も起こらないまま双方魔力切れになるでしょう。

 ですから勝負が決まるとすれば、ナタリアとアニー様の方です」


 そこで私は一度台詞を区切る。

 よしよしナタリアも聞いているな。なら続けよう。


「ナタリアとアニー様では、ナタリアの方が明らかに魔力が大きいです。本来ほとんど魔法を使えなかったアニー様が、今では学内の平均以上の魔力をお持ちになっている。どれだけの鍛錬を重ねられたのだろうと思いますが、それでも今のナタリアの方が魔力は上です。

 更に言うとアニー様が第一試合で使われた防護障壁魔法(バリア)は、汎用の防護呪文です。攻撃魔法の対処に特化した鉄壁(ナイトハルト)より効率が落ちます。ですからナタリアの福音(エウアンゲリオン)で攻撃を続ければ、そのうち耐えられなくなるでしょう」

 

 ここまでが順当に戦った場合の予想だ。この通りのシナリオになった場合は、まず間違いなくこの結果になると思う。

 しかし私が言いたいのは、むしろこれからだ。


「ただし、試合が今の予測通りになるとは限りません。見る者が見れば互いの魔力の大きさ等簡単にわかるでしょう。鉄壁(ナイトハルト)福音(エウアンゲリオン)もまだ試合で出していません。でもマリアンネ様達も同様、出していない魔法を持っている可能性はあります」


 皆の顔を見てみる。

 うん、皆さんその可能性には気付いていたようだ。優秀優秀。なら続きを話そう。


「もし今話したのと違う展開になっても慌てないでください。私の計算では、リリアの鉄壁(ナイトハルト)は、殿下が今の3倍の魔力で真・神雷球破(デウスーラ)を放ってもある程度は持ちこたえる事が出来ます。また弓や投槍に対しても、鉄壁(ナイトハルト)で充分対処可能です。

 ですからリリアもナタリアも、互いの魔法を信頼して下さい。何があっても防御はリリアに任せる、何があっても攻撃はナタリアに任せる。今までの立場や役割とは逆かもしれません。それでもそうやって互いを信じれば、必ず勝つことが出来る。これが私の答えです」

 

「3倍魔力の真・神雷球破(デウスーラ)でも破れないのか」


 エンリコ殿下ががっくりしている。


「ええ。勿論いつまでも耐えるという事は出来ないでしょう。ですが鉄壁(ナイトハルト)の肝要は魔力による相殺です。ですからリリアの魔力が完全になくなるまでなら、どんな攻撃魔法でも耐える事が可能ですわ」


「あと質問なんだけれど、アンはいつの間に他人の魔力量をそんなに詳細に見る事が出来るようになったのかな。前から魔力探知は得意だったけれど」


 あっ! そう言えば、確かにそこまで魔力量、つまり最大MPがわかるというのもチートなのだ。

 私は自分に限らず、誰のステータスでも見る事が出来る。しかし普通はステータスシートなんて便利なものを見る方法なんてものは無い。


「いつの間にかですわ。おそらく迷宮(ダンジョン)の下層でレベルが上がったおかげだと思いますけれど」


「なら僕の魔力量は今、どれくらいだ。このパーティでかなり鍛えたつもりなのだが、自分ではよくわからない」


「私も知りたいにゃ」


「私もですわ」


 おいおい、そういう方向に話題が行ったか。

 しかしステータスシートの件を突っ込まれるよりは、はるかにましだ。

 今の最大MPは私が1002、リリアが528、殿下が498、リュネットが489、ナタリアが246、ナージャが185。ちなみにマリアンネ様が532、アニー様が103だ。


「この中で魔力が一番大きいのは、やっぱりリリアですわ。今の1年生の平均の6倍強か7倍弱というところでしょうか。殿下がそれより少し低くて6倍強、リュネットが殿下よりほんの少し低いくらい。ナタリアがリュネットの半分程度で、ナージャがナタリアの8割弱だけれど生徒の平均の2倍はあるという処でしょうか。

 ただ同じ魔法でも、個々の適性によって必要な魔力が違います。ですからあくまで目安という事で。例えばナージャは福音(エウアンゲリオン)猛獣追牙(バ・キ)をほぼ魔力を使わずに起動できますし、リュネットは聖属性魔法を他の方より遥かに低い魔力で起動できますから」


「ならアンの魔力はどれくらいにゃ?」


 おっとナージャに聞かれてしまった。


「1年生平均の8倍程度ですわ」


 低い方にサバを読ませてもらう。


「そうかな。もっと高く感じるが」


 おいエンリコ殿下、余計な事を言わないでくれ。


「そうですね。私から見るとちょうど殿下の倍くらいに見えますわ」


 おいリリア、何気にかなり正確な事を言わないでくれ。

 本当はリリアにもステータスが見えるのか、不安になってしまうではないか。

 私はとりあえず笑顔で誤魔化す事にした。

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