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TS転生悪役令嬢ですが、フラグを壊しすぎて別のフラグが立ってしまいました  作者: 於田縫紀
プロローグ 悪役令嬢転生

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第6話 実戦能力向上計画

 私はイメチェン&殿下攻略作戦をやりつつ、競技会に備え、冒険者的な実力をつける訓練をするつもりだ。

 ここで身につけた実力は、将来必ず役に立つ。


 私が国外逃亡して暮らして行くには、冒険者になるのが手っ取り早い。

 適当に悪者や魔物を倒して報奨金を稼いで、地域の人に喜ばれつつ旅を続ける。

 これに必要なのは、冒険者登録と己の実力だけ。


 だから冒険者登録をして、迷宮(ダンジョン)で訓練だ。

 リュネットも大分私に慣れてきた。それに私もある程度予定していた魔法が使えるようになってきた。

 だからそろそろ、迷宮(ダンジョン)で訓練する話をしてもいい頃合いだろう。

 昼食の時、まずはすぐ賛成してくれそうなナージャに話をしてみる。


「ナージャ、実は休日に冒険者をやってみたいのですけれど、付き合っていただけないでしょうか?」


「冒険者にゃ? アンの家は侯爵家と聞いたのにゃ? 冒険者をしてお金を稼ぐなんて必要はにゃいのではにゃいのか?」


 一般的にはその通りだ。そして競技会出場についてはまだ言わない方がいいだろう。

 だから別の理由を考えてある。


「学校で習った魔法や戦闘術を、実際に使えるものにしたいのです。それには現場で実践するのが一番だと思うのですわ」


「それって、魔物相手に戦うつもりなのきゃ?」


 ナージャが身を乗り出してきた。いい兆候だ。


「ええ。勿論最初はスライム程度からの挑戦になりますけれども」


 獣人は戦いが好きだと聞いている。

 競技会も『プリンセス・リュミエール』ではナージャが聞きつけ、リュネットに参加したいと言ってくるのだ。

 だからこう言えば、きっと……


「面白そうなのにゃ」


 予想通り、あっさりとのってくれた。では次の攻略だ。


「リュネットにも出来れば一緒に行って欲しいのですわ。私もある程度の攻撃魔法と補助魔法を使えます。ですけれど魔力はまだ充分とは言えません。確かリュネットなら通常の回復魔法の他に魔力回復の魔法も使えると聞きました。ですので一緒に行っていただければ安心できるのですわ。少しですがお小遣いも入りますし」


 リュネットの家は貴族とは言え、あまり裕福ではない。

 男爵家とは言えただの小規模領主、他に役付きという訳ではないので財政はかなり厳しいはずだ。

 ゲーム『プリンセス・リュミエール』では、小遣いも最低限クラスで、自分で稼ぐ必要があった。今の現実でも似たようなものだろう。


「でも危なくないかな」


 リュネットの口調も大分砕けてきた。

 私の方は生まれつきこの話し方なので、なかなか変えられない。2人にも訳を話してわかってもらっているけれど。


「あくまで学校で習った事の実践演習なので、安全第一でやりますわ。最初はクザルゲ迷宮(ダンジョン)第1層あたりで、スライム相手に試すつもりです。それでしたらそんなに危なくないと思いますわ。実力がついたら第2層、第3層と徐々に入る階層を増やす形で」


「でも私、授業で使うような程度の装備しか持っていないけれど」


「私も同じです。でもあれでもD級の一般的な冒険者と同じ程度のものと聞いています。私達は冒険者最下級のE級からはじめますし、そう心配しないでも大丈夫だと思いますわ」


「ナージャも一緒に行くから問題無いのにゃ。スライム程度は爪で一発なのにゃ」


 よしよしナージャ、誘ってくれてありがとう。

 実際スライムくらいは、ナージャ1人でもあっさり倒せる。少なくとも『プリンセス・リュミエール』ではそうだった筈だ。


 獣人、特に猫の獣人は接近戦にかなり強い。その代わりスタミナがまるで無い。

 その辺はこっそりステータスを見てみると良くわかる。


「なら私も行こうかな。正直攻撃魔法はあまり得意じゃないし、剣術もからきしだけれども」


「そうしていただけると安心ですわ」


 いつもの笑みで返しつつ、中のおっさんはよっしゃーとガッツポーズ。

 これでリュネットとナージャを鍛える事が出来る。勿論私自身もだ。


「それでは今日の放課後、冒険者ギルドに行って冒険者登録をしてきませんか。そうすれば今度の休息日に迷宮(ダンジョン)に入れますわ」


「そうだね」


「賛成にゃ」


 よしよし。これで計画がまた一段階進む。


「あれ、アンさん達、迷宮(ダンジョン)なんて言っているけれど、冒険者でもやるのか?」


 同じクラスの子爵家三男、ニキータにそんな事を聞かれる。

 私達の話が、隣のテーブルまで聞こえたようだ。


「ええ。習った魔法や剣術が実際に使えるか、実戦で試してみたいと思いまして」


 真面目に答えたのに、男子3人に笑われてしまった。


「アンさんなら実際に使う事はまず無いだろ」


「そうそう。大体そういう場所に行く際には、護衛が何人もいるだろうしさ。そんなの下々の連中に任せておけば」


 これだからこの国の貴族は、と思う。貴族であっても自分の身は自分で守れる程度にはしておかないと。

 まあこの国の階級制度は絶対だから、今はそれにあぐらをかいていられるけれど。


 それにニキータのような子爵家の三男は、当たり前だが家を継ぐ事は出来ない。

 だから騎士団なり官僚なり何かの職につく必要がある筈だ。

 その際に学問もいい加減、魔法も中途半端、実戦では戦えませんでは何も出来ない。

 そう思うのだが、本人は気づいていないようだ。


 仕方ない。問題なのはニキータ1人ではないから。

 この国の官僚や騎士団には貴族出身の管理職や士官が大勢いる。

 この中で実際に使える程度の能力があるのは3割程度。


 だから騎士団では、貴族の子弟の士官は近衛騎士団か第一騎士団に配備する。

 この辺の騎士団のお仕事は専ら街や王宮等の警備。つまりはまあ、ある程度出来る部下にちょっと命令すればあとはいるだけで出来てしまうからだ。

 それでは務まらない実戦担当は、庶民出身の第3騎士団から第8騎士団。

 国の腐っている部分が、こんな所にも現れている。


 私は出て行く予定だから関係ない。だから小言をここで言う必要性も義務も無い。

 ゲーム『プリンセス・リュミエール』の通りなら、私が学園にいる間は対外戦争も起こらない。

 私が出た後ならこの国がどうなろうとも知ったことじゃない。

 ただしリュネットやナージャの為にも、ここでこの位は言っておこう。


「学校の授業では試せない魔法も、迷宮(ダンジョン)なら試せますわ。勿論危ない真似はしないつもりですけれど。それにリュネットとナージャも一緒です」


「でもあまり無理はしない方がいいと思うよ。その辺は庶民の仕事だしさ」


「ご忠告ありがとうございます。充分に気をつけますわ」


 こういった会話も、いずれは殿下の耳に入るだろうか。

 そして少しでもこっちに興味を持って貰えるだろうか。


 そんな事も考えつつ、私はいつも通りにこやかに彼らにも笑顔を返す。

 別に彼らへのサービスでは無い。明日への投資なのだ。

 先程の発言も、この笑顔も。


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