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TS転生悪役令嬢ですが、フラグを壊しすぎて別のフラグが立ってしまいました  作者: 於田縫紀
第4章 新学期の学校生活

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第46話 この国の貴族だから仕方ない

「ところでアンやリリア、ナージャは秋の競技会には出ないのかな?」


 一気に話題が変わった。

 確かに秋の競技会、以前は私も出る気だった。

 しかしそれは、エンリコ殿下の気を引くためだ。

 ここまで仲良くなってしまったのなら、もう必要は無い。


「あれは3人1組ですから。私達のパーティでは人数的に難しいですわ」


 そう言って誤魔化させてもらう。


「それではこのグループで、校内魔法大会に出てみる気はないか?」


 殿下が今度はそんな事を口にした。


「校内魔法大会とはどんなものなのにゃ?」


 この学校独自の行事だから、ナージャやリュネットが知らないのは仕方ない。


「この学校で学んだ成果を発表するお祭りですわ。研究成果や学習成果を講演と実演を交えて発表したり、御前試合で戦ってアピールしたりします」


 勿論私は出るつもりはない。そういったアピールは私には不要だ。

 むしろ逃げるのに邪魔になる。冒険者として役に立つ実戦的な魔法や技術が使えれば充分だ。

 それにこの魔法大会自体、私はほとんど評価していない。


「面白そうにゃ」


「実際はそうでもないですわ。研究発表は役に立たない形式的な内容ばかりですし。御前試合も実戦的なものより、魔法の華麗さや複雑さを競うものになりさがっていますから」


 これが私の率直な感想だ。

 エンリコ殿下が苦笑して口を開く。


「アンは厳しいな。でも父もそう言っていてさ。だからアン達と相談して今年の大会を引っかき回して欲しいとの事だ」


 おい待て陛下、なんだそのやんちゃなご意見! 少しは立場を考えろ!

 下々の者が言うと忌憚の無いご意見とか御冗談とかで済むものでも、陛下が言うと命令に準じてしまうんだぞ。少しは自覚しろ!

 なんて言えない下々の一人として、せいぜい抵抗を試みる。


「私は高等部に入学したての一介の生徒です。そんな上級生の方々を驚かせるような魔法の技術も知識も持ち合わせてはおりませんわ」


 つまり、『子供だからわかりませーん』作戦で誤魔化そうという案だ。


「父はそう思ってはいないようだな。マーレスタ領で見た料理や入浴施設から、魔法についても何か新しい考えや案を持っているだろうと言っていた。実際に迷宮(ダンジョン)で少しは見せて貰ったけれど。あの件は約束だから言っていないが」


 おい待て陛下。それは買いかぶりだ……

 ああマーレスタ領でやりたい放題やってしまった事が、今では悔やまれる。そう思ってももう遅い。


「既に魔法理論研究科のサクラエ教官に話を通してあるそうだ。本来生徒は入れない国立図書館の非公開書庫に入れるよう、手配をしてくれるらしい。更にやってくれたら騎士団専用に使っているクザルゲ迷宮(ダンジョン)の下層部分へ、自由に入れるよう取り計らってくれるそうだ」


 うっ! 痛い処を突いて来やがった。

 確かにここオーツェルグにいる間、戦闘訓練が出来る場所はクザルゲ迷宮(ダンジョン)しか無い。

 しかし民間公開部分の敵では弱すぎて、レベルが上がりにくい状態だ。

 ここで下層に入れるようにして貰えれば、かなり嬉しいのは事実だったりする。


 国立図書館の非公開書庫に入れるというのも魅力的だ。

 ゲーム上ではエンリコ殿下の計らいで陛下とリュネットがここに入り、強力な魔法を発見して入手するシーンがある。

 こうやって得た魔法で最後、私を含む悪役一派を倒すのだ。ああ手に入れたい……


 仕方ない。

 それに国王陛下の発言だから、元々断るなんて事は貴族として出来ないのだ。

 だから仕方ない。決して誘惑に負けた訳じゃない。


「わかりましたわ。まだ何も案は思い浮かびませんが、皆で考えたいと思います」


 私の評価が上がってしまうのはこまる。だからここは皆を巻き込もう。

 特にリュネットの評価を上げなければいけない。無事殿下とくっつくように。

 私が国外脱走する為に、これは重要だ。


 さて、出来そうな事は何だろう。

 無詠唱魔法の披露なんてのは駄目だ。実戦には確かに有効だけれども。実際にはある程度の冒険者なら簡単な魔法は無詠唱で使用しているようだから。


 それに貴族の皆さんは、実戦的であるよりも優雅さと華麗さ、複雑さに価値を見いだす癖がある。

 どうせならその点でも度肝を抜いてやりたい。

 そうしないと正当な評価をされない可能性がある。


 もちろん美しければそれでいい、なんて訳じゃない。

 あ、美しければそれでいいってなにか覚えがある。昔の百合なアニメの主題歌だったっけか。でも空に紋章を描いて神に供えるなんて無理だよな……

 そこまで考えてふと思いついた。そうか、その手があったなと


 空に絵を描く。勿論飛行機械や飛行魔法で空に絵を描く訳ではない。

 花火だ。夜空を彩る光の芸術。

 これほど派手な魔法は私の知っている限り無い筈だ。これを研究発表として持ち込もう。


 勿論私も中のおっさんも、打ち上げ花火を作った事など無い。

 それに筒で花火を打ち上げるなんて、下手したら大砲に繋がるかもしれない技術を教える訳にはいかない。

 ここは魔法を使ってごまかそう。


 幸い空に物を浮かせることは風属性魔法で出来る。

 炸裂させるのもやはり風属性魔法を使わせて貰おう。

 円形に広げるとかは、術式や魔法陣を描いた紙を仕込めば出来る筈だ。


 光を放つのはおっさんの知識が使えるだろう。炎色反応だ。ストロンチウムが赤で銅が緑、ナトリウムは黄色だっけかな。

 そういった物質の粉末を、ある程度の時間燃えるものと混ぜ込んでやればいい。


 希少金属でも探せば学園内の資料室にあるだろう。何せ混合物や化合物を魔法で単体に分離できる世界だ。

 そしてここは国内最高峰の王立学園。物が揃っている事についてはイワルミア随一だ。


 発表者はリュネットがいいだろう。

 リュネットは聖属性魔法に強いけれど、攻撃魔法にならない程度の光属性魔法も使える。

 空に上がった花火を、光属性魔法の増幅でおもいきり輝かして貰おう。


 私はこれについては舞台裏担当だ。

 風魔法は得意だけれど、私の評価は上げる必要は無いから。


 さて、研究発表用の派手なのはとりあえず方針を考えた。

 あとは御前試合についても考えよう。


 御前試合は本来は魔法戦闘の腕を競い、強い方が勝つという当たり前のものだったらしい。

 しかし今は、いかに華麗な技を出すか、複雑な魔法を出すかに重点がおかれ実戦的な強さは無視されている。

 この辺が陛下が『引っかき回せ』と言った理由でもあるだろう。


 しかし相手が長い呪文を唱えているところをあっさり単純な呪文で倒したら、今までの風潮に慣れている皆さんから大ブーイングを食らう事必須だ。

 ここは貴族的に考慮する必要がある。


 あと御前試合は2人組で出場だ。

 ここはリリアとナタリアにやってもらおう。リリアにもいいところを見せてもらいたいからな。


 しかし残念な事に、すぐに使えそうな魔法を思いつかない。

 洒落にならない魔砲少女ユニットのヒトマル発砲なんてのはあるけれど、これは公にするつもりはない。

 だいたいあんなの撃ったら、相手が間違いなくお亡くなりになる。審判や審判補助の先生・教官が止められる威力というのが前提だ。


 国立図書館の非公開書庫に、参考になる魔法があるかもしれない。

 ならちょいと本気になって書庫に潜ってみるのもいいだろう。どうせ強力な魔法を探す為に潜ることになるのだし。

昔の百合なアニメとは、『シムーン』のことです。古くてすみません。

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